IPO株って何?初心者でもわかる新規公開株の仕組みと投資のコツ

IPO株って何?初心者でもわかる新規公開株の仕組みと投資のコツ

始まりはプリンセスの勘違い

ここは宇宙のどこかにある、すべてがふわふわな惑星「ふわふわ星」。この星の玉座では、威厳あふれる白と茶色のうさぎの王様「T」が、巨大なニンジンのクッションにもたれていました。そこへ、元気いっぱいの茶色いプリンセス「C」が、ぴょんぴょんと駆け寄ってきます。

C:「ねーねー、T!あたち、聞いたんだよ!世の中には『あいぴーおー』っていう、すっごいものがあるんでしょ!」

T:「ほう、Cよ。おやつと昼寝以外に興味を示すとは珍しいのう。して、その『IPO』が何かわかっておるのか?」

C:「もちろんだよ!きっと、『Immensely Powerful Oyatsu(ものすごくパワフルなおやつ)』のことに違いない!食べたら一日中ぴょんぴょん飛び跳ねていられる魔法のおやつ!」

T:「……はぁ。朕の頭も飛び跳ねそうじゃ。よいか、Cよ。お主のプリンセス教育の一環として、今日は朕が直々に経済というものを教えてやろう。IPOとは、投資の世界で時折起こる、一大イベントのことじゃ」

C:「とうし?それって、ニンジンを畑に植えること?」

T:「うむ、まあ、遠からずじゃな。お金を働かせて、もっと大きなお金(=たくさんのニンジンやリンゴ)を実らせることじゃ。そしてIPOは、その中でも特大のニンジンを収穫できるかもしれぬ、ビッグチャンスなのじゃよ」

IPOは企業のお披露目パーティー!?

C:「ビッグチャンス!あたちの干し草が、山盛りになる!?」

T:「落ち着け、落ち着け。まずIPOとは『Initial Public Offering』の略。日本語では『新規公開株』と言う。これまで一部の人しか株を持てなかった会社が、『これからは誰でも私たちの株を買っていいですよー!』と証券取引所にデビューすることじゃ」

C:「しょうけんとりひきじょ?難しい言葉!」

T:「うむ。まあ、会社の株をみんなが自由に売ったり買ったりできる、大きな市場みたいなものじゃ。企業はなぜIPOをするかというと、たくさんの人からお金を集めて、新しい工場を建てたり、すごい商品を開発したりするためじゃな。いわば、会社を大きくするための盛大なお披露目パーティーのようなものじゃ」

C:「お披露目パーティー!じゃあ、その株を買ったら、その会社のお菓子が毎日もらえるの?」

T:「それは『株主優待』という別の仕組みじゃな。惜しいが、少し違う。IPO株の魅力は、パーティーの招待状(=株)を事前に安く手に入れて、パーティー当日(=上場日)に、欲しがっている別の人に高く売れる可能性がある、という点にある」

C:「ふむふむ。それで『お祭り』とか『宝くじ』って言われるんだね!」

T:「その通りじゃ!例えば、招待状が1枚10万円だったのに、パーティー当日には『どうしてもそのパーティーに行きたい!』という人が殺到して、30万円で売れたりする。差額の20万円が利益になる、というわけじゃ」

C:「にじゅうまんえん!りんごが何個買えるの!?あたち、その招待状、100枚ほしい!」

T:「待て待て。だから落ち着けと言っておる。その『宝くじ』と言われる所以は、まさにここからじゃ。人気のパーティーの招待状は、欲しがる人が多すぎて『抽選』になるのじゃよ」

宝くじを当てる「こっそり術」

C:「ちゅーせん…。どうせ当たらないんでしょー!あたち、くじ運ないもん。ガラガラ福引はいつも白い玉だもん…」
(ぷいっとそっぽを向いて、干し草をもしゃもしゃ食べ始めるC)

T:「こら、諦めるでない。確かに、最近話題になった『メルカリ』や、ロボットが家を売ってくれる『SREホールディングス』のような人気のIPOは、倍率が数百倍になることもあり、当てるのは至難の業じゃ。しかし、闇雲に申し込んでも当たらぬが、少しでも当選確率を上げるコツは存在する」

C:「な、なんですと!?」

T:「うむ。まず一つ、『主幹事(しゅかんじ)証券』から申し込むことじゃ」

C:「しゅかんじ?」

T:「IPOというお披露目パーティーを取り仕切る、メインの証券会社のことじゃ。パーティーの招待状は、この主幹事が9割近くを持っている。脇役の幹事証券から申し込むより、元締めである主幹事から申し込む方が、当たる確率が高いのは当然じゃろう?」

C:「なるほどー!一番たくさん招待状を持っているところを狙うんだね!」

T:「二つ目は、『複数の証券会社から申し込むこと』じゃ。一つの証券会社からしか申し込まないと、その抽選に外れたら終わり。だが、SBI証券、楽天証券、マネックス証券など、色々な証券会社の口座から申し込めば、単純に抽選機会が増えるというわけじゃ」

C:「そっか!たくさん応募すれば、一個くらい当たるかも!」

T:「そういうことじゃ。もし、めでたく当選したら、多くの人は上場して最初につく株価、これを『初値(はつね)』と言うが、その値段で売ってしまう。『初値売り』は、リスクを抑えつつ利益を確定させやすい、王道の戦術じゃな」

C:-「じゃあ、初値で売らないで、ずーっと持ってたら億万長者になれる!?」

T:「うーむ、それは難しいところじゃな。上場した後に株を売買することを『セカンダリー投資』と言うが、上場直後は株価の動きがジェットコースターのように激しくなる。初値がピークで、その後下がってしまうことも多々ある。初心者が手を出すには、少し火傷のリスクが高いかもしれんのう」

プリンセスの新たな決意

C:「うーん、なんだか難しくなってきた…。それに、そもそもあたち、そんな大金持ってないよ。10万円なんて、ニンジン何本分かも分からないもん」

T:「ふむ。そこが最後のポイントじゃ。IPO投資は、必ずしも大金が必要なわけではない。申し込むだけなら無料じゃし、当選した場合でも、安いものなら10万円以下で買える株もある。まずは10万円から30万円ほど用意できれば、参加できるIPOはたくさんあるぞ」

C:「え、そうなの!?それなら、あたちのおやつ代をちょっとだけ我慢すれば…!」

T:「そうじゃ。Cよ、今日の話で少しは経済に興味が湧いたか?立派な王女になるには、国のお金の流れも知らねばならん。IPOはその第一歩じゃ」

C:「うん!あたち、決めた!プリンセスになるために、もっともっとお勉強する!そしていつかIPOに当選して、お城をりんごでいっぱいにするんだ!」

T:「うむ、その意気じゃ。ではまず、第一歩としてお主名義の証券口座を開設するところからじゃな。朕がやり方を教えてやろう」

こうして、プリンセスCの新たな挑戦が始まったのでした。果たしてCは、IPO株という宝くじを当てることができるのでしょうか。それはまた、別のお話。


用語解説まとめ

  • IPO (Initial Public Offering)
    • 日本語では「新規公開株」や「新規上場株式」と呼びます。未上場の会社が、証券取引所に上場し、誰でも株を取引できるようにすることです。
  • 上場
    • 企業が発行する株式を、証券取引所で売買できるように資格を得ること。企業の信頼性が高まり、資金調達がしやすくなります。
  • 公募価格(こうぼかかく)
    • IPOの際に、投資家が抽選で株を購入するときの「最初の値段」です。
  • 初値(はつね)
    • 上場日に、証券取引所で初めてついた株価のこと。この初値が公募価格を上回ると、利益が出ます。
  • 主幹事証券(しゅかんじしょうけん)
    • 企業のIPO準備を全面的にサポートし、株の販売を最も多く引き受ける証券会社。IPO株は主幹事証券から申し込むのが当選への近道とされています。
  • セカンダリー投資
    • IPOで新規上場した後の銘柄を、証券取引所で売買すること。値動きが激しくなる傾向があり、ハイリスク・ハイリターンな投資とされます。