債券って何?初心者向けにやさしく解説

ちろ姫、そのニンジンを国に貸すのじゃ!うさぎと学ぶ債券投資入門
ここは宇宙のどこかにある、綿菓子のように甘くて柔らかい星、「ふわふわ星」。この星を治めるのは、威厳あふれる白と茶色の毛並みを持つ「てち王」。そして、その妹で、ぴょんぴょん跳ねることが仕事というくらい元気なプリンセス「ちろ姫」。歳の離れた兄妹の、平和な昼下がりの一コマです。
ちろ姫: 「てちお兄様〜!あたち、もっとりんごが食べたいでちゅ!おっきくて、シャリシャリのやつ!」
てち王: 「(やれやれ…)ちろ姫よ。おやつはさっき食べたばかりであろう。そんなに欲しければ、自分で手に入れてみる努力も必要なのではなイカ?」
ちろ姫: 「むぅ…でも、あたち、今持ってるのはこの干草と、とっておきのニンジンさんだけでちゅ…。これでりんごは買えないもん!」
てち王: 「ふむ。…ちろ姫よ、ならばその『とっておきのニンジン』を朕にではなく、このふわふわ星の『国』に貸してみるというのはどうだ?」
ちろ姫: 「ニンジンを国に貸す?なんででちゅか?食べられちゃう!」
てち王: 「はっはっは!そうではない。それこそが、今日ちろ姫に教える『債券(さいけん)』という仕組みなのだ。国や会社にお金を貸して、そのお礼をもらう。ちろ姫の場合は、ニンジンを貸すと思えばよい」
ちろ姫: 「サイケン…?新しいおやつの名前でちゅか?」
てち王: 「違うわ!まったく食いしん坊な姫だな。よいか、よく聞くのじゃ。『債券』とは、国や会社が『お金を貸してくれてありがとう!約束の日にちゃんと返します。お礼もしますね』と発行する『約束の証文』のようなもの。つまり、ちろ姫が国にニンジンを1本貸したら、国は『ニンジン、確かにお借りしました』という証文をくれる。これが債券のイメージであるぞ」
ちろ姫: 「ふーん…でも、ただ貸すだけじゃ、ニンジンがなくなっちゃうだけでちゅ。つまんないの!」
てち王: 「まあ待て。ここからが美味しい話なのだ。ニンジンを貸している間、国は毎年お礼として、ちろ姫の好きな『小さなイチゴ』をくれる。これを『利子(りし)』と言う。そして、最初に約束した日、例えば3年後になったら、貸したニンジンがそのままの形で、まるっと手元に返ってくるのだ。これを『満期(まんき)』と言う。どうだ?ニンジンは減らずに、イチゴだけもらえるのだぞ?」
ちろ姫: 「えぇ!?ニンジンが返ってきて、毎年イチゴがもらえるんでちゅか!それ最高なの!」
てち王: 「うむ。これが債券投資の最大のメリットよ。銀行に預けておくよりもらえるお礼(利子)が多くなる可能性があり、満期まで持てば貸したニンジン(元本)がしっかり返ってくるという安心感があるのだ」
ちろ姫: 「それって、前に教えてくれた『カブ』とは違うんでちゅか?」
てち王: 「おお、よく覚えておったな。株式投資のことか。あれとは全く違うぞ。例えるなら、株式投資は『ニンジンの畑の共同オーナーになる』こと。畑が豊作ならたくさんニンジンがもらえるが、不作ならゼロ、最悪畑がなくなってしまうリスクもある。一方、債券投資は『農家さんにニンジンを貸してあげる』こと。畑が豊作でも不作でも関係なく、毎年決まったお礼(イチゴ)がもらえ、最後にニンジンが返ってくる。ドキドキハラハラは少ないが、堅実なのだ」
ちろ姫: 「なるほどー!貸す相手は国だけなんでちゅか?」
てち王: 「良い質問だ。国が発行するものを『国債(こくさい)』と言って、国がなくなることはまずないから、最も安全性が高いと言われておる。一方、例えば『ニンジンジュース株式会社』のような会社が発行するものを『社債(しゃさい)』と言う。会社の方が少しだけリスクがある分、お礼のイチゴ(利子)が大きいこともあるのだ」
ちろ姫: 「じゃあ、あたちのニンジンは絶対安全なんでちゅね!やったー!」
てち王: 「こら、落ち着きのない姫め。ぴょんぴょん跳ねるな。残念ながら、投資に『絶対』はない。債券にも注意点があるのだ」
ちろ姫: 「えぇー!?」
てち王: 「もし、お金を貸した『ニンジンジュース株式会社』が倒産してしまったらどうなる?」
ちろ姫: 「はっ…!あたちのニンジンが…ジュースにされて、もう返ってこないでちゅか…!?」
てち王: 「その通り。貸した相手が約束を守れなくなる可能性を『信用リスク』と言う。だからこそ、国債のように信頼できる相手を選ぶことが重要なのだ。もう一つ、もし満期の3年後を待たずに、『やっぱり今すぐニンジンを返して!』とわがままを言った場合。他のうさぎにその『証文』を買い取ってもらうことになるのだが、世の中でニンジンの人気がなければ、貸した時より安い値段でしか買い取ってもらえないかもしれん。これを『価格変動リスク』と言う」
ちろ姫: 「うぅ…サイケン、ちょっと怖くなってきたでちゅ…」
てち王: 「まだあるぞ。世の中の『金利(きんり)』との関係も重要だ。ちろ姫よ、シーソーに乗ってみよ。朕が反対側に座る」
(てち王がドスンと座ると、ちろ姫は勢いよく宙に浮く)
ちろ姫: 「きゃー!お兄様のいじわるー!」
てち王: 「これが金利との関係だ。今ちろ姫が持っている債券(古い債券)がシーソーの片方。そして、世の中の金利(新しい債券)がもう片方じゃ。もし、あとから『もっとたくさんのイチゴをあげますよ!』という、もっと魅力的な新しい債券(高い金利)が出てきたら、皆そちらが欲しくなる。すると、ちろ姫が持っている古い債券の人気は下がり、価値も下がってしまう。このように金利が上がると債券の価格は下がる。シーソーのように反対に動くのじゃ」
ちろ姫: 「む、むずかしいけど…なんとなくわかったでちゅ。ドキドキするのは嫌だけど、イチゴは欲しい…あたちはどうすればいいんでちゅか?」
てち王: 「うむ。結論、債券投資は、ちろ姫のようにぴょんぴょん跳ね回って大きなリターンを狙うのではなく、朕のようにどっしりと構え、資産を『守りながら』着実に増やしたい者に向いておる。資産というお城の周りに、深く広いお堀をめぐらせるようなものなのだ」
ちろ姫: 「お城のお堀!かっこいいでちゅ!」
てち王: 「であろう。債券の魅力は、約束されたイチゴ(利子)が定期的にもらえることで、将来の計画が立てやすい点にある。まずは、このふわふわ星の国が発行している『個人向け国債』というものから調べてみるとよい。これは1万円という小さな単位から始められ、最低もらえるイチゴの量が保証されているなど、ちろ姫のような初心者にも優しい仕組みになっておるぞ。さあ、勉強はここまでだ。褒美にりんごをやろう」
ちろ姫: 「わーい!お兄様だいすき!サイケン、ちょっとだけ賢くなったでちゅ!」
ナレーション: こうして、ちろ姫は新しいりんごを手に入れ、ちょっぴり金融の知識も身につけたのでした。あなたの資産を守るお城の壁、「債券」。まずはその第一歩として、「個人向け国債」について調べてみてはいかがでしょうか。

ナレーターによる用語解説
- 債券: 国や企業などが、投資家からお金を借りるために発行する「借用証書」のようなもの。
- 利子(クーポン): 債券を持っている間、発行体からお礼として定期的に支払われるお金のこと。
- 満期(償還): 債券の借入期間が終了し、額面金額(元本)が投資家に返還されること。
- 国債: 国が発行する債券のこと。信頼性が非常に高いとされる。
- 社債: 民間の企業が発行する債券のこと。
- 信用リスク: お金を貸した国や企業が財政難や倒産などにより、利子や元本を約束通り支払えなくなる可能性のこと。
- 価格変動リスク: 債券を満期まで持たずに途中で売却する場合、市場の金利の動きなどによって価格が変動し、購入時より高く売れたり、安くしか売れなかったりする可能性のこと。
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