TOB(株式公開買付け)とは?仕組み・種類・株主の対応を初心者にも分かりやすく解説

ここは、宇宙のどこかに浮かぶ「ふわふわ星」。この星のお城には、立派な図書室があります。知の探求を何よりも好む王様「てち王」が、今日も分厚い経済新聞に目を通していると、元気な足音が聞こえてきました。
謎の言葉「TOB」
ちろ姫: てち王〜! 大変、大変! あたち、すごい文字を見つけちゃった!
てち王: (新聞から顔を上げながら)どうした、ちろ姫。そんなに慌てて。ニンジン畑にモグラでも出たか?
ちろ姫: ううん、これ! この新聞に書いてある「てぃー・おー・びー」ってやつ! なんだか強そうな呪文みたい! これを唱えると、リンゴがたくさん出てくるの?
てち王:(ふっと笑い)ははは、リンゴは出てこんが、知っておくと経済の動きが手に取るように分かる、面白い呪文ではあるな。それは「ティーオービー」と読む。
ちろ姫: てぃーおーびー? なになに、なあに? 教えて、てち王!
てち王: よかろう。将来、立派な王女になるちろ姫にとって、知っておいて損はない知識だ。朕が直々に教えてやろう。紅茶とイチゴの準備は良いか?

TOBの基本とニンジン畑の例え話
ナちろ姫がお気に入りのリンゴジュースを準備すると、てち王の金融レッスンが始まりました。
てち王: まず、TOBとは Takeover Bid(テイクオーバー・ビッド)の略で、日本語では「株式公開買付け」と言う。
ちろ姫: かぶしき…こうかい…かいつけ? なんだか難しい名前…。
てち王: うむ。簡単に言えば、「ある会社の株を、この値段で、この期間内に、これだけ買い取りますよ!」と宣言して、株主から広く株を買い集めることじゃ。
ちろ姫: ふむふむ。でも、株って市場(しじょう)っていう場所で、いつでも買えるんじゃないの?
てち王: 良い質問じゃ、ちろ姫。鋭いな。もし朕が、A社の経営権を握りたいと思って、市場でA社の株を片っ端から買い始めたらどうなると思う?
ちろ姫: えっと…みんな「てち王が買ってる!」って気づいて、真似して買い始めて、株の値段がどんどん上がっちゃう!
てち王: その通り! 買い占めたいのに、値段がどんどん上がっては高くついて仕方がない。だから「1株1000円で買い取りますよ」と宣言して、市場の外で取引するのじゃ。これをTOBと言う。
ちろ姫: なるほどー! 賢いやり方なんだね!
てち王: そしてTOBには、大きく分けて2種類ある。「友好的TOB」と「敵対的TOB」じゃ。
ちろ姫: ゆうこうてき? てきたいてき? ケンカするの?
てち王: そんなところだ。例えば、朕が隣のニンジン畑の主に「あなたの畑と朕のイチゴ畑を合体させて、もっと大きな農園にしませんか?」と相談して、相手も「ぜひ!」と賛成してくれた上で畑の権利を買い取るのが「友好的TOB」じゃ。お互いの強みを活かして、もっと美味しい野菜が作れるようになるかもしれん。
ちろ姫: わーい! あたち、ニンジンもイチゴも大好き!
てち王: だが、朕が「そのニンジン畑、朕がいただく!」と宣言し、畑の主が「絶対に嫌だ!」と反対しているのに、畑の権利書を持っている他の人たちから強引に権利を買い集めようとするのが「敵対的TOB」じゃ。
ちろ姫: えぇー! それはなんだか意地悪だね…。
てち王: 経済の世界は、時として熾烈な戦いの場でもあるのだ。敵対的TOBは、まさに会社と会社の乗っ取り合戦。経済ニュースがドラマのように面白くなる瞬間でもある。

もし自分の株がTOBされたら?
ちろ姫は少し難しい顔をしながらも、てち王の説明に熱心に耳を傾けています。
ちろ姫: じゃあさ、もし、あたちが持ってる会社の株がTOBの対象になったら、どうなるの? その会社の株、ぴょんぴょん上がったりする?
てち王: その通り! TOBが発表されると、株価は上がることが多い。なぜなら、買い手は「市場で買うより少し高い値段(プレミアム)で買い取りますよ」と提案するのが一般的だからな。
ちろ姫: ぷれみあむ?
てち王: そうじゃ。市場で1個100円で売っているリンゴを、朕が「ちろ姫よ、朕にだけ120円で売っておくれ」と言ったら、売りたくなるだろう? それと同じことじゃ。
ちろ姫: うん! 売る売る! 120円で売って、新しいリボンを買う!
てち王: ははは。その時、株主であるお前には、大きく分けて3つの選択肢がある。
- TOBに応募する:宣言された高い価格で買い取ってもらう。
- 市場で売る:TOB価格に近づいて値上がりした株を、市場で売却する。
- そのまま持ち続ける:TOBに応募も売却もせず、株主であり続ける。
ちろ姫: へぇー、選べるんだね!
てち王: ただし、TOBが必ず成功するとは限らん。買い集めたい株数に届かず、「不成立」に終わることもある。それに、敵対的TOBを仕掛けられた会社も、黙って乗っ取られるわけではない。
ちろ姫: どうするの?
てち王: 例えば、「ポイズンピル(毒薬条項)」という、まさに”毒ニンジン”のような作戦がある。これは、乗っ取り屋以外の株主が新株を安く買えるようにして、乗っ取り屋の持株比率を下げてしまう防御策じゃ。他にも、助っ人として別の会社に買収してもらう「ホワイトナイト(白馬の騎士)」なんていう手もあるぞ。
ちろ姫: 毒ニンジンに、白馬のうさぎ様! なんだかおとぎ話みたい!
てち王: そうだろう? ちなみに、会社の経営陣が「自分たちでこの会社を経営していきたい」と考えて、株を買い集めることをMBO(マネジメント・バイアウト)と言う。これも似ているが、目的が少し違うな。最近も、日本では様々な会社がTOBの対象になっている。経済ニュースを見る時は、ぜひ注目してみると良い。
経済ニュースがもっと面白くなる!
ちろ姫: てち王、ありがとう! TOBって、ただのアルファベットの集まりだと思ってたけど、会社の未来をかけたドラマなんだね! これから経済新聞を読むのが楽しくなりそう!
てち王: うむ、その意気じゃ。世の中の仕組みを知ることは、王女としての務めの一つ。よく学び、よく食べ、よく跳ねることだ。
ちろ姫: はーい! じゃあ早速、ご褒美のリンゴを食べながら復習する!
てち王: (やれやれという顔で微笑みながら)良かろう。今日は特別に、朕のイチゴも一つ分けてやろう。
こうして、ちろ姫の知識はまた一つ増えました。ふわふわ星のお城の図書室では、これからも兄妹の楽しい金融レッスンが続いていくことでしょう。

【本日の用語解説】
- TOB(株式公開買付け)
- 会社の経営権取得などを目的に、期間や価格、株数を宣言して、市場の外で株主から株式を買い集めること。英語の “Takeover Bid” の略。
- プレミアム
- TOBを行う際に、現在の市場株価に上乗せされる金額のこと。株主に応募してもらうための魅力となる。
- 友好的TOB
- 買収される側の企業の経営陣から、同意を得て行われるTOB。
- 敵対的TOB
- 買収される側の企業の経営陣が反対しているにもかかわらず、強行されるTOB。
- MBO(マネジメント・バイアウト)
- 企業の経営陣が、株主から自社の株式を買い取り、経営権を取得すること。
- 買収防衛策
- 敵対的TOBを仕掛けられた企業が、買収を防ぐために行う対抗策。「ポイズンピル」や「ホワイトナイト」など様々な手法がある。
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