為替レートとは?円安・円高の違いを世界一わかりやすく解説

為替レートとは?円安・円高の違いを世界一わかりやすく解説

プロローグ

宇宙のどこかにある、何もかもが“ふわふわ”な惑星、その名も「ふわふわ星」。この星では、お金の代わりにピカピカの「ニンジン」が使われています。そんなふわふわ星の玉座で、一人のうさぎが悩ましげにため息をついていました。

ちろ姫:「あーん、あたち、地球の『ぴかぴかりんごジュース』が飲みたいでちゅ〜!」

てち王:「こら、ちろ姫。玉座の上でぴょんぴょん跳ねるでない。それに、地球のものを欲しがるのはよいが、今は時期が悪いのだぞ」

ちろ姫:「なんでなんでちゅか! てち王兄しゃまは、ふわふわ星の王様なのでちょ? ニンジンをいーっぱい持ってるはずでちゅ!」

元気いっぱいのプリンセス「ちろ姫」。彼女の兄であり、この星のすべてを知る賢王「てち王」は、フワフワのヒゲを揺らしながら妹に語りかけます。

てち王:「ふむ…ちろ姫。お前もいずれこの星を背負う王女となる身。よい機会だ、世界の仕組み、すなわち『為替レート』について教えてやろう。これを知れば、なぜ今『ぴかぴかりんごジュース』が飲みにくいのか、その理由がわかるはずだ」

ちろ姫:「かわせ…れーと? それは干草より美味しいのでちゅか?」

てち王:「はっはっは。食べるものではないぞ。だが、これを知れば、もっと賢く美味しいものが食べられるようになるかもしれんな。さあ、朕の耳にしっかり意識を傾けるのだ」


為替レートは「通貨の交換屋さん」

ちろ姫:「兄しゃま、あたち、難しいのは眠くなっちゃうでちゅ…」

てち王:「大丈夫だ、ちろ姫。お前の大好きな『りんご』で例えてやろう。よいか、我々ふわふわ星では『ニンジン』がお金だ。しかし、地球では『円』や『ドル』というお金が使われておる。この違うお金を交換するときの比率、それが『為替レート』なのだ」

ちろ姫:「こーかんひりつ?」

てち王:「うむ。例えば、以前は『ニンジン1本』で地球の『りんご1個』と交換できたとしよう。これが基準だ」

ちろ姫:「ニンジン1本でりんご1個! 等価交換でちゅね!」

てち王:「そうだ。だがな、この交換比率は毎日変わるのだ。ある日、『ニンジン2本』を出さないと『りんご1個』と交換できなくなったとする。これは、我々のニンジンの価値が下がってしまったということ。これを地球の言葉で『円安』のような状態と言うのだ」

ちろ姫:「えー! ニンジンがたくさん必要になっちゃうのは嫌でちゅ! りんごジュースが遠のくでちゅ…」

てち王:「その通り。逆に、『ニンジン半分』で『りんご1個』と交換できるようになったらどうだ?」

ちろ姫:「え! 半分でいいのでちゅか!? そしたら、残りの半分で干草も買えるでちゅ! あたち、それがいい!」

てち王:「うむ。それがニンジンの価値が上がった状態、地球で言うところの『円高』だ。海外のものが安く手に入るようになるから、ちろ姫のように輸入品を欲しがる者にとっては嬉しい状況だな」

ちろ姫は、ニンジンがたくさん必要になるのは嫌、少ない方が嬉しい、と体で覚えたようです。地球のニュースで「1ドル110円から150円への円安」と聞くと、数字が増えて嬉しいと感じるかもしれませんが、これは「1ドル(りんご)を手に入れるために、110円(ニンジン)で済んだものが150円(ニンジン)も必要になった」ということ。つまり、円(ニンジン)の価値が下がっている状態なのです。


なぜレートはぴょんぴょん動くのか?

ちろ姫:「でも兄しゃま、なんでそんなにコロコロ変わるのでちゅか? 誰かがイジワルしてるでちょ!」

てち王:「イジワルではないのだ、ちろ姫。それは、その国の通貨が『人気』かどうかで決まるのだよ」

ちろ姫:「人気? アイドルみたいなものでちゅか?」

てち王:「ふふ、少し違うが似たようなものだ。例えば、ふわふわ星で、ものすごく甘くて美味しい『奇跡のニンジン』が採れたとする。宇宙中の誰もが『そのニンジンが欲しい!』と思ったらどうなる?」

ちろ姫:「みんなが欲しがったら、ニンジンの価値は上がりまちゅ! だって、あたちも欲しいもん!」

てち王:「その通り! 通貨も同じでな、その国の人気が高まると、通貨の価値も上がるのだ。人気が出る理由はいくつかある」

人気の理由①:金利が高い

てち王:「銀行にお金を預けると、お礼(利息)がもらえるだろう? このお礼の割合を『金利』という。金利が高い国は、みんな『この国にお金を預ければ、たくさんお礼がもらえるぞ!』と考える。だから、その国の通貨が買われて人気が出るのだ」

人気の理由②:国が元気(経済が強い)

てち王:「毎年恒例の『ぴょんぴょん力測定』で、ふわふわ星のうさぎ達が過去最高のジャンプ力を記録したとしよう。それは、我が国が元気で、素晴らしいニンジンをたくさん作れる証拠だ。そういう元気な国の通貨は信頼されて、人気が出るのだ」

人気の理由③:たくさん輸出している

てち王:「我が国自慢の『ふわふわマフラー』を地球にたくさん輸出したとしよう。そうすると、代金として地球の『円』や『ドル』をたくさん受け取ることになる。そして、それを我々の『ニンジン』に交換するから、ニンジンを買いたい人が増えて、ニンジンの価値が上がるのだ」

ちろ姫:「なるほどー! 国が元気だと、通貨も元気になるでちゅね!」

てち王:「そういうことだ。逆に、国の中で争いが起きたり、元気がなくなったりすると、通貨の人気は下がり、価値も下がってしまう。これらの理由が複雑に絡み合って、為替レートは毎日ぴょんぴょんと動いているのだ」


為替レートと私たちの賢い付き合い方

ちろ姫:「ふぁ〜…なんだかお腹が空いてきたでちゅ。兄しゃま、難しい話はもうおしまいでちょ?」

てち王:「こらこら、もう少しだ。ここからが肝心なのだぞ。為替レートは我々の生活や、お前がこれから学ぶ資産運用に大きく関わってくるのだからな」

ちろ姫:「ししゃんうんよー?」

てち王:「うむ。例えば、我々が地球の会社の株を買ったとしよう。その会社の業績が良くても、もし『ニンジンの価値が上がる(円高)』局面だったらどうなる? 地球のお金からニンジンに交換するとき、もらえるニンジンの数が減ってしまうだろう?」

ちろ姫:「あ! 損した気分でちゅ!」

てち王:「そうだ。逆に、『ニンジンの価値が下がる(円安)』の時なら、もらえるニンジンの数は増える。このように、海外の資産を持つときは、為替レートの動きも考えねばならんのだ」

ちろ姫:「む、むずかしいでちゅ…。じゃあ、これからニンジンが上がるか下がるか、兄しゃまが予言してくだちゃい!」

てち王:「はっはっは、ちろ姫よ。それができれば、朕は星の王ではなく、宇宙の神になっておるわ。よいか、為替レートの未来を完璧に予測することは、この朕でさえも不可能なのだ。世界中の専門家が、毎日血眼になって分析しても外れることがある」

ちろ姫:「えー! じゃあどうすればいいでちゅか!」

てち王:「だからこそ、日々のニュースを見て、今世界で何が起きているのか、ニンジンの価値は上がりそうか、下がりそうか、その大きな流れを知っておくことが重要なのだ。そして、一喜一憂せずに、長い目で世界を見ていく。それが、賢い王女になるための第一歩であるぞ」

ちろ姫:「ふむふむ…! とりあえず、今はニンジンがたくさん必要な『円安』みたいな時期だから、地球のりんごジュースは我慢して、ふわふわ星の美味しい干草をもしゃもしゃ食べることにするでちゅ! そして、ニンジンが少ない数でりんごが買えるようになったら、たらふく飲むでちゅ!」

てち王:「おお、ちろ姫! 見事な判断だ! お前はもう、立派なプリンセスへの道を一歩踏み出したな。よし、褒美に特上のニンジンをやろう!」

こうして、ちろ姫は為替レートの基本を学び、また一つ賢くなったのでした。私たちの生活も、輸入品の価格やガソリン代、海外旅行の費用など、為替レートと深く結びついています。ふわふわ星のうさぎ達のように、少しだけ為替レートを意識してみると、日々のニュースがもっと面白くなるかもしれませんね。


用語解説コーナー

今回の物語に出てきた重要な言葉を、少しだけおさらいしましょう。

  • 為替レート(外国為替相場) 日本円と米ドル、ユーロなど、異なる国の通貨を交換するときの比率のこと。「1ドル=150円」のように表されます。
  • 円安 他の通貨に対して、円の価値が下がること。1ドル100円だったのが150円になると円安です。同じ1ドルを手に入れるのに、より多くの円が必要になった状態。輸出企業には有利ですが、輸入品は値上がりします。
  • 円高 他の通貨に対して、円の価値が上がること。1ドル150円だったのが100円になると円高です。少ない円で1ドルが手に入るようになった状態。輸入企業や海外へ行く人には有利ですが、輸出企業には不利になります。
  • 金利 お金の貸し借りをする際のレンタル料のようなもの。一般的に、政策金利が高い国の通貨は、利息を求めて世界中からお金が集まりやすくなるため、通貨価値が上がる(通貨高になる)傾向があります。
  • 経済指標 国の経済状態を示す成績表のようなもの。GDP(国内総生産)や失業率、物価指数などがあり、これらの結果が良いと、その国の通貨は信頼されて買われやすくなります。
  • 通貨ペア 取引する2つの国の通貨の組み合わせのこと。「米ドル/円(USD/JPY)」や「ユーロ/米ドル(EUR/USD)」のように表記され、左側が主軸通貨、右側が決済通貨となります。