ステーブルコインとは?仕組み・種類・リスクを初心者にわかりやすく解説

プロローグ
ここは宇宙のどこかにある、何もかもがふわふわした惑星「ふわふわ星」。この星の通貨は、みんなが大好きな「ニンジン」です。しかし、今年のニンジンは日照り続きで不作のようで…。
ちろ姫: うー!もうやだー!この前まで、おやつのリンゴはニンジン1本で買えたのに、今日は2本も必要なんだって!これじゃあ、あたちのリンゴが半分になっちゃう!ぴょんぴょん!
(ちろ姫は怒って地面をぴょんぴょんと跳ねています。その振動で、近くにあったニンジン畑の土が少しだけ盛り上がりました。)
てち王: こら、ちろ姫。落ち着きなさい。そんなに跳ねては、自慢の毛並みが土で汚れてしまうぞ。プリンセスにあるまじき行為だ。
ちろ姫: だって、てち王お兄様!ニンジンの価値が毎日変わるなんて、おかしいよ!あたちは毎日同じ量のリンゴが食べたいの!
てち王: うむ、お前の言うことも一理ある。通貨の価値が安定しないと、計画が立てづらいからな。良い機会だ、ちろ姫。今日は朕が、お前のような者のために生まれた「価値が安定したお金」について教えてやろう。
ちろ姫: 価値が安定したお金?そんな夢みたいなものがあるの?
てち王: あるのだ。それは「ステーブルコイン」という。地球の言葉でな。
ステーブルコインって、いったい何者?
ちろ姫: すてーぶるこいん? なんだか強そうな名前!
てち王: ふむ。ステーブルとは「安定した」という意味だ。ビットコインのような他の暗号資産は、お前のように気分でぴょんぴょん跳ね回る。ある日は天まで届くほど高くジャンプし、次の日には地面の穴に落ち込むほど価値が下がることもある。これを『ボラティリティが高い』と言うのだ。
ちろ姫: あたちみたいに!?きゃはは!じゃあ、そのビットコインって落ち着きがないんだね!
てち王: その通りだ。だが、ステーブルコインは違う。朕のように、常にどっしりと構えていて、価値がほとんど動かん。例えば「1コイン=1ドル(地球の通貨単位だ)」と決められているものが多く、その価値を保ち続けるのだ。
ちろ姫: へぇー!どうしてそんなことができるの?魔法?
てち王: 魔法ではない、仕組み(システム)だ。価値を安定させるためには「裏付け資産」というものが重要になる。いわば、価値の重しのようなものだな。

価格が安定する「裏付け」の秘密
てち王: 例えば、朕が「ふわふわ星ステーブルニンジン(FSCN)」というコインを作るとしよう。そして「1FSCNコインは、いつでもニンジン1本と交換できます」と約束する。その約束を守るために、朕は銀行ならぬ“ニンジン蔵”に、発行したコインと同じ数のニンジンを厳重に保管しておくのだ。
ちろ姫: なるほど!コインの裏に、本物のニンジンが隠してあるんだね!それなら安心!
てち王: その通りだ、ちろ姫。このように、米ドルなどの法定通貨を担保にしているものを「法定通貨担保型」と呼び、最も主流なステーブルコインの形なのだ。他にも、ビットコインなどを担保にする「暗号資産担保型」という少し複雑なものもある。
ちろ姫: ふーん。じゃあ、全部なにか裏付けがあるんだね!
てち王: …と、言いたいところだが、実はそうでもないのだ。中には、その「裏付け」を持たない変わり者もいる。それが「無担保型(アルゴリズム型)」だ。
ちろ姫: え!?裏に何にもないの?それって、ただの空っぽコインじゃない!怖すぎるよ!
てち王: うむ。これは非常に高度なプログラム(アルゴリズム)を使って、需要と供給を調整し、無理やり価値を安定させようとする試みだ。例えるなら、ニンジンが無くても「朕が王だから、このコインには価値があるのだ!」と言い張るようなものだな。
便利だけど…潜んでいる大きなリスク
ちろ姫: 裏付けがあるコインなら、すごく便利そう!どんな良いことがあるの?
てち王: 良い質問だ。ステーブルコインは、世界中の誰にでも、銀行を介さずに、速く、そして安く送ることができる。例えば、朕が遠い星にいる友人にニンジンの仕送りをするとき、宇宙船で運ぶより、ステーブルコインで送ったほうが瞬時に届き、手数料もかからん。
ちろ姫: わーい!じゃあ、あたちも遠くのお友達に干草を送れるんだ!
てち王: しかし、ちろ姫。いいことばかりではないのが世の常だ。特に、先ほど話した「無担保型」には大きな落とし穴があった。
ちろ姫: 落とし穴…?
てち王: うむ。昔、地球に「テラ(Terra)」という無担保型のステーブルコインがあった。それは、ニンジンを無限に作り出せる魔法の畑を発明したと豪語するようなものだった。最初は皆がそれを信じたが、ある日突然、魔法が解けて畑が消え、コインの価値はほぼゼロになったのだ。多くの者が資産を失い、大混乱が起きた。
ちろ姫: ひぇぇ…!怖い!じゃあ、ちゃんとドルの裏付けがあるコインなら絶対安全なの?
てち王: それも100%とは言い切れない。「本当にニンジン蔵に約束通りのニンジンが入っているのか?」と疑う者も出てくるからな。発行している会社が嘘をついて、ニンジンをこっそり食べてしまっているかもしれん。だから、その会社が本当に信頼できるか、定期的に専門家がニンジン蔵の中身をチェックしているか(これを監査と言う)を確認することが、我々利用者にとって非常に重要なのだ。
ちろ姫: そっかぁ…。ちゃんと自分の目で「ニンジン、あるかな?」って確認しないとダメなんだね。
てち王: その通りだ、ちろ姫。最近では、日本でも法律が整備され、安心して使える日本円のステーブルコインを作ろうという動きが活発になっている。だが、どんなものでも仕組みを理解し、リスクを知った上で使うことが、王女になるための第一歩であるぞ。
ちろ姫: うん、お兄様!あたち、また一つ賢くなっちゃった!ステーブルコインは便利だけど、使う前にしっかりニンジン蔵の中身を確認する!…あ、お話してたらお腹すいたな。リンゴ食べよーっと!
てち王: やれやれ…。まあ、今日のところは良しとしよう。褒美に朕のイチゴを一つやろう。
ちろ姫: わーい!てち王お兄様、だーいすき!
ナレーター: こうして、ちろ姫はまた一つ、新しい金融の知識を身につけたのでした。便利な道具には、必ず知っておくべき使い方とリスクがある。それは、ふわふわ星でも地球でも、変わらない真理なのかもしれませんね。
本日の用語解説
- ステーブルコイン (Stablecoin): 価格が安定するように設計された暗号資産の一種。米ドルなどの法定通貨に価値が連動(ペッグ)しているものが多く、決済や送金、DeFi(分散型金融)などで利用されます。
- ボラティリティ (Volatility): 価格変動の度合いのこと。「ボラティリティが高い」とは、価格が激しく上下することを意味します。ビットコインなどの暗号資産は、一般的にボラティリティが高いとされています。
- 裏付け資産 (Reserve Asset): ステーブルコインの価値を担保するために保有されている資産のこと。米ドルや国債などの「法定通貨担保型」、他の暗号資産を担保とする「暗号資産担保型」、そして特定の裏付け資産を持たない「無担保型(アルゴリズム型)」などがあります。
- デペッグ (Depeg): ステーブルコインが、連動対象である資産(例: 1ドル)と同じ価値を維持できなくなる状態を指します。裏付け資産への不安や、システムの欠陥などが原因で発生する可能性があります。
- DeFi (Decentralized Finance): ブロックチェーン技術を利用した「分散型金融」のこと。銀行や証券会社といった仲介者なしに、個人間で金融取引(貸し借り、交換など)ができるサービスの総称です。ステーブルコインは、このDeFiの世界で基軸通貨のように広く利用されています。
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