【知らないと損】生前贈与の「7年ルール」とは?うさぎでもわかる相続税・贈与税の新常識
- 2025.10.12
- うさぎで学ぶシリーズ お金の基礎知識 ライフステージ別マネープラン
- 税金, 節税, 経済ニュース, 老後資金, 資産形成

ここは宇宙のどこかにある、何もかもがふわふわな惑星「ふわふわ星」。 王様である「てち王」が大切に育てている、見渡す限りのニンジン畑で、妹の「ちろ姫」が目を輝かせていました。
ちろ姫「わーい! さすがはお兄様のニンジン畑! 甘くて立派なニンジンがいっぱい! この畑がぜーんぶ、あたちのものになったらいいのになぁ!」
ぴょんぴょんと無邪気に跳ねるちろ姫を見て、てち王は優しくも、少しだけ厳しい声で言いました。
てち王「こら、ちろ。王家の財産は、お主一人のものではない。それに、朕が元気なうちに、このニンジン畑をお主に譲るには、ふわふわ星の絶対的なルール…『税』というものを考えねばならんのじゃ」
ちろ姫「『ぜー』? なにそれ、新しいおやつの名前?」
てち王「まったくお主は…。いいか、これは国に納めるニンジンのことじゃ。そして、この『税』のルールが新しくなっておる。これを知らぬと、せっかくのニンジン畑から、トラック何台分ものニンジンを国に持っていかれることになるやもしれんぞ。王女になるなら、必ず学ぶのじゃ」
ニンジン畑の引き継ぎ方が変わった!
こうして、てち王による、ちろ姫のための「新しい税」の講義が始まりました。
てち王「よいか、ちろよ。まず、朕がいつかお星さまになった後、お主がこの畑を受け継ぐ時に国へ納めるのが『相続税』。そして、朕がこうして元気なうちに『この一区画をお主にやろう』と分け与える時に納めるのが『贈与税』じゃ。この二つは兄弟のようなものじゃ」
ちろ姫「ふむふむ。じゃあさ、お兄様! 毎日こっそりニンジンを1本ずつもらっていけば、国にバレないんじゃない?」
てち王「ずる賢いことを考えるでない。お主のような考えの者のために、ちゃんとルールがある。今までは、毎年110万ニンジン(円)までなら、税を納めずに分け与えることができた。これを『暦年贈与』という。多くの者がこの方法で、相続税を軽くしてきたのじゃ。だがな、ちろよ。その常識が、根底から変わったのじゃ」
ちろ姫「えぇっ!? どう変わったの?」
新ルール①:「チェック期間」が3年から7年に延びた!
てち王「今までは、朕がお星さまになる前『3年間』に、お主に分け与えたニンジンだけが、相続の時にまとめてチェックされていた。それが、これからはなんと『7年間』にまで延びたのじゃ!」
ちろ姫「な、7年!? じゃあ、8年前に『あげる』って言われたニンジンはセーフなの?」
てち王「いかにも。そういうことじゃ。だから、今まで以上に、早め早めに計画して分け与える必要が出てきた。この、亡くなる前の贈与を相続財産に加算する仕組みを『持ち戻し』という。この言葉、覚えておくのじゃぞ」
ちろ姫「むむむ…国もなかなかやるわね…。じゃあ、もうコツコツ贈与する意味はないの?」
てち王「いや、そういうわけでもない。少し複雑だが、延長された4年間(亡くなる前3年超~7年以内)の贈与については、合計100万ニンジンまでは『持ち戻し』を免除してくれるという、ささやかなオマケもある。だが、もっと大きな変更点がもう一つあるのじゃ」
新ルール②:もう一つの大ワザ「相続時精算課税」が超パワーアップ!
ちろ姫「まだあるの!? 頭がふわふわしてきた…」
てち王「ここが一番重要じゃ! 聞け! 『暦年贈与』とは別の、もう一つの財産引き継ぎの大ワザ『相続時精算課税制度』が、驚くほど使いやすくなった!」
ちろ姫「せいさん…かぜー? なんだか強そうな名前ね!」
てち王「うむ。今までは少し使いにくいワザでのう。だが、新しいルールでは、このワザに『毎年110万ニンジンの特別おこづかい枠』が新設されたのじゃ! そして何よりすごいのは、この枠でもらったニンジンは、先ほどの7年ルールのチェック対象外! 持ち戻しされんのじゃ!」
ちろ姫「えーっ!? 特別なニンジン枠!? しかもチェックされないなら、絶対そっちのほうがいいじゃない! あたち、その大ワザがいい!」
ぴょんぴょん跳ねて喜ぶ ちろ姫を、てち王は「まあ待て」と制します。
てち王「落ち着け、ちろ。世の中、そう甘くはない。この『相続時精算課税』は、一度使うと決めたら、もう二度と、毎年コツコツもらう『暦年贈与』には戻れないという、重大な制約がある。どちらの道を選ぶかは、その者の資産の状況や年齢によって、よーく考えねばならんのじゃよ」
【まとめ】 ちろ姫、新しいルールを理解する

ちろ姫「うーん…なんだか頭がクラクラするわ…。でも、大事なことはわかった! 今までみたいに、亡くなる直前に慌ててニンジンを分けても、7年間分はしっかりチェックされちゃうってことね!」
てち王「うむ、それで100点満点じゃ、ちろ。それでよい」
てち王は、満足そうに頷きました。
てち王「今日の講義の結論はこうじゃ。新しいルールによって、『亡くなる直前の駆け込み贈与での節税は、ほぼ不可能になった』ということ。そして、『どの制度を使って財産を引き継ぐか、今まで以上に早くから、長期的な計画を立てる必要がある』ということじゃ。これは、我がふわふわ星の民、そしてこの記事を読んでおる地球の者たちにも、朕が伝えたい最も重要なことなのじゃ」
複雑に見える税金のルール変更。それは、私たちに「もっと早くから、家族と資産について話し合ってみてはどうか」と、優しく問いかけているのかもしれません。
【用語解説】
- 相続税: 亡くなった方の財産(遺産)を受け継いだ時に、その財産の価額に応じてかかる税金のこと。
- 贈与税: 個人から財産をもらった時に、もらった側にかかる税金のこと。相続税を補完する役割があります。
- 暦年課税(暦年贈与): 贈与税の課税方式の一つ。1人の人が1月1日~12月31日までの1年間にもらった財産の合計額が110万円以下であれば、贈与税がかからない制度。
- 持ち戻し: 亡くなる前一定期間内に行われた贈与を、相続財産に加算して相続税を計算すること。この期間が、2024年1月1日以降の贈与から、3年から7年に延長されました。
- 相続時精算課税制度: 贈与税の課税方式の一つ。原則60歳以上の父母や祖父母から18歳以上の子や孫へ贈与する際に選択できる制度。最大2,500万円の特別控除があり、それを超えた分は一律20%の税率で贈与税を納めます。そして、贈与した人が亡くなった時に、その贈与財産を相続財産に加算して相続税を計算し、納付済みの贈与税額を精算します。2024年からは、この制度に年110万円の基礎控除が新設され、この枠内であれば贈与税も将来の相続税もかからなくなりました。
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