ドル指数(DXY)とは?円安との関係を世界一わかりやすく解説【投資初心者向け】

ドル指数(DXY)とは?円安との関係を世界一わかりやすく解説【投資初心者向け】

ここは宇宙のどこかにある「ふわふわ星」。何もかもがフワフワしているこの星では、ニンジンが通貨として使われています。広大なニンジン畑が見渡せるお城のテラスで、今日もフワフワな兄妹うさぎがお茶会を開いているようです。

てち王:「やれやれ、ちろ姫。干草を食べながらお勉強の本を読むのは感心だが、お前のことだ、どうせ挿絵しか見ておらんのじゃろ」

ちろ姫:「見てるもん! ちゃんと読んでるもん! この地球のニュースに書いてある『ドル指数』って、あたち知ってるよ! アメリカのドルをいっぱい持ってる人が、どれだけ偉いかを示す数字なんでしょ!」

てち王:「……ふむ。ちろ姫よ、その自信満々な顔には悪いが、100点満点中3点といったところじゃな。惜しいが、全く違う」

ちろ姫:「ええーっ!? ちがうの!? でも『指数』ってそういうものだって…!」

てち王:「やれやれ、また早合点しておるな。良い機会だ。将来、立派な王女になるお前のために、朕が直々に『ドル指数』とは何かを教えてやろう。いいか、その知ったかぶりの知識は一旦忘れて、よーく聞くのじゃぞ」

ドル指数は「ドルの通信簿」

ちろ姫:「むー…じゃあドル指数って、一体なんなのさ。ドルのテストの点数とか?」

てち王:「うむ、その方が近いな。ドル指数とは、ひと言で言えば『ドルの総合的な強さを示す通信簿』のようなものじゃ。ドルの価値は、他の国の通貨と比べて常に上がったり下がったりしておる」

ちろ姫:「あ、それは分かる! ふわふわ星でも、あたちのりんご1個と、兄様のニンジン1本が交換できるけど、りんごが不作の年はニンジン2本じゃないと交換してくれなくなったりするもんね!」

てち王:「その通りじゃ。ドルも同じで、日本の『円』やヨーロッパの『ユーロ』など、色々な通貨との交換レートが常に動いておる。そのたくさんの通貨に対するドルの価値を、まとめて分かりやすく一つの数字で表したのがドル指数(DXY)なのじゃ」

ちろ姫:「へぇー! いろんな通貨との合わせ技なんだ! じゃあ、どの通貨と比べてるの? 地球にはいっぱい国があるんでしょ?」

てち王:「鋭いのぅ。ドル指数は、特に取引量の多い6つの主要通貨を相手に計算されておる。ヨーロッパのユーロ、日本の、イギリスのポンド、カナダのカナダドル、スウェーデンのクローナ、スイスのフランじゃ。特にユーロの影響が一番大きいことも覚えておくとよいぞ」

指数が上がると、何が起きる?

てち王:「そして、このドル指数は『100』という数字が基準になっておる。100より大きければ『ドル高(ドルが強い)』、小さければ『ドル安(ドルが弱い)』と判断する」

ちろ姫:「ドルが高くなる…ってことは、アメリカがいちばん強くなるってことだよね! アメリカのうさぎさんは、なんでもやりたい放題になっちゃうんだ!」

てち王:「ふふ、そう単純な話ではないのじゃ。確かに、ドル高になるとアメリカのうさぎは外国のものを安く買えるようになる。今まで1ドルでニンジン1本だったのが、1.2本買えるようになるからのぅ。海外旅行もお得になるじゃろうな」

ちろ姫:「わーい! ニンジンがいっぱい! 旅行し放題!」

てち王:「だが、ちろ姫。逆の立場から見るとどうじゃ? アメリカが自分のニンジンを外国に売ろうとすると、外国のうさぎにとっては値段が上がってしまい、買いにくくなる。つまり、輸出企業は儲けが減ってしまうのじゃ。何事にも良い面と悪い面があるということじゃな」

指数はなぜぴょんぴょん動くのか

ちろ姫:「じゃあ、その通信簿の点数は、誰が決めてるの? 神様?」

てち王:「神様ではないな(笑)。ドル指数を動かす最大の要因は、アメリカの中央銀行、FRBが決める『金融政策』じゃ。特に『利上げ』は大きな影響を与える」

ちろ姫:「利上げ! 知ってる! ニンジンを高く高く積み上げることだよね! あたち得意だよ!」

てち王:「……それはニンジンタワーじゃな。惜しいが違う。ここで言う『利上げ』とは、お金を預けた時にもらえるお礼(利息)の割合を上げることじゃ。アメリカが利上げをすると、世界中の投資家が『ドルで預金した方がお得だ!』と考え、こぞってドルを買い求める。すると、人気が集中してドルの価値が上がり、ドル指数も上昇する、という仕組みじゃ」

ちろ姫:「なるほどー! 限定品のニンジンジュースにみんなが殺到するのと同じだね!」

てち王:「うむ、その例えは分かりやすい。他にも、世界のどこかで争いが起きたりして経済が不安定になると、『一番安心なドルを持っておこう』という心理が働き、ドルが買われる(有事のドル買い)こともある。これも指数が上がる要因じゃな」

ドル指数と私たちのニンジン

ちろ姫:「ふーん、なんだか難しいけど、地球の向こう側の話でしょ? あたちのりんごには関係ないよね?」

てち王:「甘いのぅ、ちろ姫。経済は全て繋がっておる。例えば、日本に住むうさぎたちは、多くの食料やエネルギーを輸入に頼っておる。ドル指数が上がって『ドル高・円安』になると、今まで100ニンジンで買えていたものが120ニンジン出さないと買えなくなってしまう。つまり、輸入品が値上がりするのじゃ」

ちろ姫:「ええっ!? あたちの食べてる干草も、もし輸入だったら値上がりしちゃうの!? それは大変!」

てち王:「そういうことじゃ。だから、地球のニュースを見るときは、このドル指数という『経済の体温計』に注目することが大切なのじゃ。この体温計が高熱を出しているのか、それとも低体温なのかを知ることで、これから世界で何が起ころうとしているのか、少しだけ未来が予測できるようになるからのぅ」

ちろ姫:「そっかぁ…。知ったかぶりしてたけど、全然知らなかったや。ドル指数って、あたちの干草にも関係してるんだね。兄様、教えてくれてありがとう!」

てち王:「うむ、分かればよろしい。さあ、難しい話はここまでじゃ。褒美に朕の特製イチゴをくれてやろう」

ちろ姫:「わーい! 兄様大好き! もぐもぐ…あまーい! これでまた明日からお勉強がんばれるよ!」

こうして、少しおっちょこちょいなお姫様は、知ったかぶりを卒業し、また一つ賢くなったのでした。ドルの強さを知ることは、世界経済の大きな流れを知ること。あなたの資産を守り、育てるための、確かな一歩になるのかもしれませんね。


本日の用語解説

てち王、ちろ姫、お疲れ様でした。最後に、今日の重要用語を少しだけ補足解説します。

  • ドル指数(DXY / USDX): インターコンチネンタル取引所(ICE)が算出・公表している、複数の主要通貨に対する米ドルの総合的な価値を示す指標です。1973年3月の変動相場制移行期を100として計算されており、現在のドルの価値が当時と比べてどうなっているかを示します。
  • 構成通貨と比率: ドル指数の計算に使われる通貨と、その影響度の大きさ(比率)は以下の通りです。
    • ユーロ (EUR): 57.6%
    • 日本円 (JPY): 13.6%
    • 英ポンド (GBP): 11.9%
    • カナダドル (CAD): 9.1%
    • スウェーデンクローナ (SEK): 4.2%
    • スイスフラン (CHF): 3.6% ユーロの比率が非常に高いため、ドル指数は特に「ユーロ/ドル」の通貨ペアの動きに大きな影響を受けます。
  • 金融政策と利上げ: 各国の中央銀行(アメリカではFRB)が行う、経済を安定させるための金融面の調整のこと。景気が過熱している時は、金利を引き上げてお金の流れを少し引き締め(利上げ)、景気が悪い時は金利を引き下げてお金の流れを活発にしようとします(利下げ)。
  • 有事のドル買い: 世界的な経済危機や地政学的リスクが高まった際に、投資家がリスクを避けるために、比較的安全とされる資産に資金を移す動き(リスクオフ)が起こります。その際、世界の基軸通貨である米ドルは「安全資産」と見なされ、買われやすくなる傾向があります。

ドル指数を理解することで、為替ニュースの背景がより深く分かり、株式や金(ゴールド)といった他の資産の値動きを予測する上でも役立ちます。