【初心者向け解説】保険と投資の違いとは?

ここは宇宙のどこかにある、何もかもがふわふわな惑星「ふわふわ星」。 この星を治めるのは、白と茶色の毛並みがたいそう立派な「てち王」。そして、その妹で、右手だけが自慢の真っ白な毛で覆われている、元気いっぱいのプリンセス「ちろ姫」。
歳の離れた兄妹ですが、今日もふわふわのお城の一室で、未来の王女に向けたお勉強が始まるようです。
(…ぴょんぴょん! ぴょんぴょん!)
将来のための「何か」がしたいちろ姫
ちろ姫: 「お兄たまー! あたち、将来のために何かを始めたいの!」
てち王: 「ほう、ちろ姫。いつも干し草をねだるか、ぴょんぴょん跳ねているだけかと思っておったが、感心な心がけであるな。して、何を始めたいのだ?」
ちろ姫: 「えっとね、『ほけん』と『とうし』! どっちも大事だって、お城のじいやが言ってた! でも、どっちがより多くのリンゴをもらえるようになるの?」
てち王: 「(ふむ…やはり食い気か)ちろ姫よ、それはリンゴの数を単純に比べるものではないのだ。よい機会だ、この朕が直々に教えてやろう。将来、立派な王女になるためには、我ら王族の資産…すなわち、この星で最も価値のある『ニンジン』をどう扱うか、知っておかねばならんからな」
ちろ姫: 「ニンジン! ニンジンのお話なら聞くー!」
てち王: 「よろしい。ではまず、『保険』と『投資』は、目的が全く違うということを理解するのじゃ」
守りの鎧と、育てる畑
てち王: 「よいか、ちろ姫。『保険』というのは、いわば『ニンジンでできた無敵の鎧』のようなものだ」
ちろ姫: 「よろい? カッコいい! でも、食べられないの?」
てち王: 「うむ。普段は食べられん。だがな、もしお前が転んで怪我をしたり、病気になって自慢のニンジンを食べられなくなったりした時に、その鎧がピカッと光って、新しいニンジンをくれるのだ。万が一の『大変なこと』が起きた時に、お前を助けてくれる『守り』の道具。それが保険じゃ」
ちろ姫: 「へぇー! 転んだ時にもらえるニンジン! それは嬉しいかも!」
てち王: 「そうじゃ。その代わり、鎧を常にピカピカに保っておくために、毎月少しずつニンジンを捧げねばならん。そして、何も起こらなければ、捧げたニンジンは基本的には戻ってこない。安心を買うための『お守り代』というわけだな」
ちろ姫: 「ふむふむ。じゃあ、『とうし』は?」
てち王: 「うむ。『投資』はな、『ニンジンがもっとたくさん採れる魔法の畑』を手に入れるようなものだ」
ちろ姫: 「魔法の畑!? 毎日ニンジン食べ放題!?」
てち王: 「その通り! 手持ちのニンジンをその畑に植える(お金を投じる)と、畑が頑張ってくれて、将来もっとたくさんのニンジンを実らせてくれる可能性がある。お前の資産を『攻め』の姿勢で増やしていくための道具、それが投資なのじゃ」
ちろ姫: 「すごーい! あたち、絶対『とうし』がいい! 鎧より畑だよ!」
てち王: 「まあ待て、落ち着かぬか。ぴょんぴょん跳ねると毛が乱れるぞ。その魔法の畑には、一つ大事な注意点がある。時には天気が悪くて、植えたニンジンが少し小さくなってしまったり、元気がなくなってしまうこともある(元本割れのリスク)。鎧のように『必ず助けてくれる』保証はないのだ」
ちろ姫: 「えー! 植えたニンジンが減っちゃうこともあるの…? それは困る…」
てち王: 「そう。だからこそ、両者の違いを理解するのが重要なのだ。 保険は『失うリスク』に備える守りの一手。 投資は『増やすチャンス』を狙う攻めの一手。 どちらか一つが偉いわけではなく、役割が違う。車で言うなら、ブレーキとアクセルのようなものだな」
じゃあ、どっちもできるすごいやつは?
ちろ姫: 「むむむ…あたちの右手みたいに、いいとこ取りはできないの? 守ってくれて、ニンジンも増やしてくれる、白くて茶色い最強のやつ!」
てち王: 「(自分の毛並みのことか…)鋭い質問だ、ちろ姫。世の中には『貯蓄型保険』といって、鎧の機能と畑の機能が少し混ざったようなものも存在する。だがな、それは少し上級者向けだ」
ちろ姫: 「なんでなんで?」
てち王: 「どっちつかずになりがちだからだ。鎧としての性能(保障)は少し控えめになったり、畑としての成長力(リターン)もそこそこだったりすることがある。それに、最近は『インフレ』といって、ニンジンの価値そのものが少しずつ下がってしまう現象も起きておる」
ちろ姫: 「ニンジン1本で、きのうはリンゴ1個と交換できたのに、きょうは半分しかくれない、みたいなこと?」
てち王: 「その通りだ! 理解が早くて朕は嬉しいぞ。だから、ただニンジンを貯めておくだけの保険だと、将来価値が目減りしてしまうやもしれん。そこで、初心者はまず『守り』と『攻め』を分けて考えるのが一番じゃ」
ちろ姫: 「分ける…」
てち王: 「うむ。まずは自分に万が一のことがあった時の『鎧(保険)』が十分かを確認する。そして、余裕のあるニンジンで『畑(投資)』を耕し始めるのだ。特に、今の時代、国が『この畑でニンジンを育てるなら、実った分には税金をかけませんよ』という、特別な応援をしてくれている制度がある」
ちろ姫: 「え! ずるい!じゃない、お得ってこと!?」
てち王: 「その通り。それが『NISA』という名の特別な畑だ。毎月少しずつのニンジンで、コツコツと世界中の元気な会社の畑に水をやることができる。そうすれば、お前がぴょんぴょん遊んでいる間にも、ニンジンたちが少しずつ育っていくかもしれん」
ちろ姫の新たな決意

ちろ姫: 「なるほどー! まずは鎧をチェックして、そのあと、NISAっていう特別な畑で、あたちもニンジンを育ててみる! それで増えたニンジンで、干し草とりんごをいーっぱい買うんだ!」
てち王: 「うむ、その意気やよし。だが、畑を育てるには時間も必要だ。焦らず、長い目で自分の資産を育てていくが良い。それが、立派な王女になるための第一歩だ」
ちろ姫: 「うん! お兄たま、ありがとう! あたち、がんばる!」
てち王: 「よろしい。…さて、朕は難しい話をして頭を使ったからな。褒美にニンジンとイチゴを持ってまいれ」
ちろ姫: 「えー! 結局お兄たまが食べるんかい!」
こうして、ちろ姫の経済のお勉強は、また一つステップアップしたのでした。 「守り」と「攻め」。この二つの違いを理解することは、将来のお金の不安を減らし、夢を叶えるための大切な知識です。あなたも、まずは自分のお金の「鎧」と「畑」について、考えてみてはいかがでしょうか?
【用語解説】
- 保険 病気や事故、死亡といった「万が一の出来事」による経済的な損失に備えるためのもの。毎月保険料を支払うことで、いざという時に保険金や給付金を受け取れる「守り」の金融商品です。
- 投資 株式や投資信託などを購入し、将来的な利益(値上がり益や配当金)を期待するもの。お金に働いてもらってお金を増やすことを目指す「攻め」の手段です。ただし、元本が保証されておらず、購入時より価値が下がる(元本割れ)リスクがあります。
- NISA(ニーサ) 「少額投資非課税制度」のこと。通常、投資で得た利益には約20%の税金がかかりますが、NISA口座内での投資で得た利益には税金がかからなくなる、国が作ったお得な制度です。2024年から新NISAが始まり、より使いやすくなりました。
- インフレ モノやサービスの値段が全体的に上がっていくこと。「物価上昇」とも言います。例えば、去年100円で買えたものが、今年120円出さないと買えなくなる状態で、相対的にお金の価値が下がっていることを意味します。
- 元本割れ 投資した金額(元本)よりも、その時点での資産の価値が下回ってしまうことです。投資における代表的なリスクの一つです。
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