【知らないと損】配当控除とは?確定申告で配当金の税金を取り戻す方法を初心者向けにわかりやすく解説

【知らないと損】配当控除とは?確定申告で配当金の税金を取り戻す方法を初心者向けにわかりやすく解説

宇宙のどこかにある、何もかもが“ふわふわ”な惑星、その名も「ふわふわ星」。この星では、王様やプリンセスも、もちろんうさぎです。そして、この星の通貨は、なんと「ニンジン」。今日も、なにやら楽しそうな声が聞こえてきますよ。

初めての配当ニンジン!…あれ、数が足りない?

ちろ姫 「わーい!わーい!ニンジン、ニンジン!あたちへのプレゼントでちか!? やったー!」

ぴょんぴょん、ぴょんぴょん! 元気いっぱいに跳ねているのは、ふわふわ星のプリンセス「ちろ姫」。茶色い体に右手だけが真っ白なのがチャームポイントです。そんなちろ姫の前には、小さなカゴに入った、つやつやのニンジンが10本ほど置かれていました。

ちろ姫 「んー!おいちい!やっぱり、あたちが育てた『ふわふわニンジン株式会社』のニンジンは最高でち!」

もぐもぐとニンジンを頬張るちろ姫。 実はこのニンジン、ちろ姫が一生懸命お世話をしてきた「ふわふわニンジン株式会社」という会社から届いた、初めての「配当金」ならぬ「配当ニンジン」なのです。

ちろ姫 「でも…あれ? お手紙には『配当ニンジンは12本』って書いてあったのに、カゴには10本しか入ってない…。誰かがあたちのニンジンを盗み食いしたでちか!? 許せないー!」

ぷんすか怒りながら、またぴょんぴょんと跳ね始めるちろ姫。その時、背後から威厳のある、それでいて少し呆れたような声が響きました。

消えたニンジンの行方と「配当控除」という魔法

てち王 「ちろ姫、落ち着きなさい。お前がぴょんぴょん跳ねると、星全体が揺れるからのう。それに、お前のニンジンを盗み食いする者など、この星にはおらん」

ゆったりと現れたのは、白と茶色の毛が混じった、威風堂々たるうさぎ。ふわふわ星の王として君臨する、ちろ姫の兄「てち王」です。その知識はどんな専門家よりも深く、星のことは何でも知っています。

ちろ姫 「お兄ちゃま! 大変でち! あたちのニンジンが2本も消えたでち! きっと悪い宇宙人が…」

てち王 「ふむ。姫よ、それは『税金』として、ふわふわ星に納められたのじゃ」

ちろ姫 「ぜいきん…? なんでちか、それ? おいしいんでちか?」

てち王 「はぁ…。姫よ、お前もいずれこの星を担う王女となる身。そんなことではいかんぞ。よいか、『配当金』というのは、会社が得た利益の一部を、その会社の持ち主である『株主』に分配するものじゃ。ちろ姫は『ふわふわニンジン株式会社』の株主じゃから、会社がニンジンをたくさん収穫できたお礼として、おすそ分けをもらったというわけじゃ」

ちろ姫 「おすそ分け!大好きでち!」

てち王 「うむ。じゃが、この星では、そういった『儲け』には税金を納めるというルールがある。国を運営していくためには、どうしても必要なお金(ニンジン)なのじゃ。会社がちろ姫に配当ニンジンを渡す前に、あらかじめ姫の代わりに国へ税金を納めてくれておる。だから、手元に届いたニンジンの数が減っておったのじゃよ」

ちろ姫 「えー! あたちがもらうはずのニンジンなのに! 税金なんて嫌いでちー!」

ぷいっとそっぽを向いて、耳をぺたんと伏せてしまうちろ姫。そんな妹の姿を見て、てち王はニヤリと口角を上げました。

てち王 「ほっほっほ。まあ、そう言うでない。その納めすぎた税金、少しだけ取り戻せるかもしれんぞ?

ちろ姫 「えっ!? ほんとでちか!?」

ぱあっと顔を輝かせ、ぴょこんと耳を立てるちろ姫。てち王は満足そうに頷き、話を続けました。

てち王直伝!二重課税と配当控除の仕組み

てち王 「そのためには、まず『なぜ税金が引かれるのか』をもう少し深く理解する必要がある。姫よ、朕の特別講義、心して聞くのじゃぞ」

ちろ姫 「は、はい! あ、でもその前に、りんご食べてもいいでちか?」

てち王 「……。まあ、よい。食べながら聞きなさい」

シャク、シャク、とちろ姫がりんごをかじる音をBGMに、てち王の金融経済教室が始まりました。

なぜ配当金は「二重課税」なのか?

てち王 「よいか、姫。まず大前提として、『ふわふわニンジン株式会社』は、たくさんのニンジンを収穫して利益が出た時点で、一度、国に税金を納めておる。これを『法人税』という」

ちろ姫 「ふむふむ。会社も税金を払ってるでちね」

てち王 「その通り。そして、その税金を払った“残り”の利益の中から、ちろ姫たち株主に配当ニンジンが支払われるわけじゃ。問題はここからじゃ」

ちろ姫 「ごくり…」

てち王 「ちろ姫は、その配当ニンジンを受け取った時に、今度は個人として『所得税』という税金を払うことになる。さっき消えた2本のニンジンがそれじゃ」

てち王 「おかしいと思わんか? もともと会社の利益だったニンジンに、①会社が法人税を払い、②個人が所得税を払う…。同じ利益に対して、二回も税金がかかっておるのじゃ。これを『二重課税』という。専門家ぶった連中がよく使う言葉じゃな」

ちろ姫 「にじゅーかぜー…。なんだか、すごく損してる気分でち…!」

てち王 「うむ。さすがにそれは少し可哀想じゃろう、ということで、この二重の負担を調整してあげましょう、という制度がある。それこそが、今日教える『配当控除(はいとうこうじょ)』という魔法の正体なのじゃ!」

「配当控除」でニンジンを取り戻す方法

ちろ姫 「魔法! どうすれば使えるでちか!?」

てち王 「うむ。それには年に一度の『確定申告』という儀式が必要になる。そして、その儀式の中で、『総合課税(そうごうかぜい)』という方法を選ぶのじゃ」

ちろ姫 「かく…ていしんこく…? そうごうかぜい…? なんだか眠くなってきたでち…」

こくり、こくりと舟を漕ぎ始めるちろ姫。てち王は、やれやれと首を振って続けます。

てち王 「こら、起きんか! よいか、ちろ姫。普段、配当ニンジンをもらう時は、自動的に税金が引かれておるじゃろう? あの方法は、他の所得とは切り離して、配当金だけで税金計算を完結させる『申告分離課税』という仕組みが適用されておる(※実際には所得税・復興特別所得税15.315%、住民税5%)。これはこれで楽で良いのじゃが、配当控除は使えん」

てち王 「そこで『総合課税』の出番じゃ。これは、配当ニンジンの儲けを、ちろ姫が日頃のお手伝いでもらっているニンジン(お給料)など、他の所得とぜーんぶ合算して、全体の所得に対して税金を計算し直す方法じゃ。こうすることで、初めて『配当控除』が適用され、税金が安くなる可能性があるのじゃよ」

具体的にどれくらいお得になるの?

てち王 「では、具体的に計算してみようかの。ふわふわ星の所得税率を例に考えてみるぞ」


【ふわふわ星の所得税率(シンプル版)】

  • 年間の合計所得が 1,950本 までのうさぎ:税率 5%
  • 年間の合計所得が 1,951本 ~ 3,300本 のうさぎ:税率 10%

てち王 「仮に、ちろ姫の年間のお手伝い所得が988本だったとしよう。税率は5%じゃな。そして、今回もらった配当ニンジンが12本。ここからすでに税金(仮に20%とする)が引かれて、手元には10本が届いた」

ちろ姫 「うん!」

てち王 「ここで確定申告をして『総合課税』を選ぶとどうなるか。まず、お手伝い所得と配当所得を合算する」

988ニンジン(お手伝い)+12ニンジン(配当)=1,000ニンジン

てち王 「合計所得は1,000本じゃから、適用される税率は変わらず5%じゃ。そして、ここからが魔法じゃ。総合課税を選ぶと、配当所得に対して『配当控除』が適用される。この控除率は、所得によって変わるが、ここでは仮に10%としよう」

12ニンジン(配当)×10%(配当控除率)=1.2ニンジン

てち王 「この1.2ニンジン分、納めるべき税金から直接差し引くことができるのじゃ! つまり、先に天引きされていた2本の税金のうち、1.2本分が『払い過ぎ』だったということになり、それが手元に戻ってくる、というわけじゃな」

ちろ姫 「おおー! 1.2本も戻ってくるでちか! これで新しいリボンが買えるでち!」

ただし、注意も必要!

ぴょんぴょん喜ぶちろ姫を見て、てち王は咳払いをして話を続けます。

てち王 「しかし、姫よ。この魔法は万能ではない。場合によっては、逆に損をすることもあるから注意が必要じゃ」

ちろ姫 「そ、そんでちか!?」

てち王 「うむ。ポイントは、先ほど説明した『合計所得』『税率』じゃ。例えば、ちろ姫がものすごく優秀で、年間の合計所得がとても多い場合を考えてみよう。仮に、配当と合算した結果、適用される税率が20%や30%の高い区分に上がってしまったとする」

てち王 「その場合、配当控除で安くなる税額よりも、所得全体にかかる税率が上がって増える税額の方が大きくなってしまい、結果的に確定申告をしない方が手取りが多かった、なんてことにもなりかねんのじゃ」

ちろ姫 「む、むずかしいでち…。つまり、いっぱい稼いでるうさぎさんは、気をつけないといけないってことでちね?」

てち王 「ほっほっほ。そういうことじゃ。自分の所得がどのくらいで、適用される税率が何%なのか。それをしっかり把握した上で、配当控除を使うべきか判断するのが、賢い王女への第一歩というわけじゃな」

賢い王女への第一歩

ちろ姫 「なるほどー! 配当金は、会社と個人の二回税金が引かれちゃう『二重課税』になってるから、それを調整してくれるのが『配当控除』…。そのためには『確定申告』で『総合課税』を選ぶ必要があって…でも、自分の所得によっては損することもあるから注意、でちね!」

てち王の難しい話を、ちろ姫は自分なりに一生懸命に反芻しました。そして、きらきらした目でお兄ちゃんを見上げます。

ちろ姫 「お兄ちゃま、ありがとうでち! あたち、ニンジンいっぱいの立派な王女になるために、確定申告やってみる!」

てち王 「ほっほっほ。まだまだおやつを食べておる姫には早いわ。まずはそのぴょんぴょん跳ねるのをやめるのが先じゃな。…だが、よく頑張った」

そう言うと、てち王はそっとちろ姫の頭を撫でるのでした。妹の小さな成長が、少しだけ嬉しかったのかもしれません。


【まとめ解説】

さて、今回のてち王とちろ姫のお話はいかがでしたか?最後に、重要なポイントをおさらいしておきましょう。

  • 配当金とは?
    • 企業が得た利益の一部を、株主に分配するお金のことです。
  • 二重課税の問題
    • 配当金の元となる企業の利益には「法人税」が課せられ、さらに私たちが受け取る際に「所得税・住民税」が課せられます。この二重の課税状態を二重課税といいます。
  • 配当控除とは?
    • この二重課税を調整するため、確定申告で「総合課税」を選択した場合に、所得税額から一定額を差し引くことができる制度です。これにより、払いすぎた税金が戻ってくる可能性があります。
  • 配当控除を受けるには?
    • 確定申告が必要です。その際、配当所得の申告方法として「総合課税」を選択します。
  • 注意点
    • 配当控除は、課税される合計所得金額が少ない人ほど恩恵が大きくなります。一般的に、課税総所得金額が695万円以下の場合にメリットがあると言われていますが、他の所得控除などの状況によっても変わります。所得が多い人が総合課税を選択すると、かえって税負担が増えるケースもあるため、自分の所得状況を確認することが非常に重要です。

せっかくもらった大切な配当金。少しの手間で手取りが増えるなら、挑戦してみる価値はありそうですね!