【投資初心者向け】新興国株とは?リスクとメリットをやさしく解説

【投資初心者向け】新興国株とは?リスクとメリットをやさしく解説

宇宙のどこか、なにもかもがフワフワな惑星「ふわふわ星」。この星の王様である「てち王」は、今日もお気に入りの玉座で、ニンジンでできたカップに入ったイチゴ・ティーを片手に、宇宙経済新聞を読んでいました。フワッフワな毛並みを揺らしながら、静かで知的な時間を過ごしています。

ザッザッザッ!ピョーーーン!

その静寂を破って、一匹の小さくて元気なうさぎが駆け込んできました。将来、王女になるべく勉強中のプリンセス「ちろ姫」です。右手だけが真っ白な茶色い体のちろ姫は、なにやらキラキラ光るボールを夢中で追いかけています。

ちろ姫:「あはは!まてまてー!ぴょんぴょんボール!」

そのボールは、予測不能な動きで部屋中を跳ね回り、ついに新聞を読んでいたてち王の顔に「ぽすん」と当たってしまいました。

てち王:「おっと…。ちろ姫よ、もう少し落ち着いて遊べぬか。朕の自慢のヒゲが乱れてしまう」

ちろ姫:「あ!てち兄様、ごめんなさい!でもね、このボール、どこに飛んでくか全然わからなくて、すっごく面白いんだ!」

ちろ姫が拾い上げた新聞には、こんな見出しが大きく書かれていました。

『未来のニンジン畑はここにあり!? 急成長マーケット“新興国”のポテンシャル』

ちろ姫:「シンコウコク…? てち兄様、これって、あたちのぴょんぴょんボールみたいに、元気でぴょんぴょんしてる国のこと?」

てち王: (ふむ…)ちろ姫よ、良いところに目をつけたな。その無邪気な問い、今日の朕の講義のテーマにぴったりじゃ。よし、今日はその「シンコウコク」について、この兄が直々に教えてやろう。おやつの干し草は、そのあとじゃ。

ちろ姫:「わーい!お勉強!はやく終わらせて干し草たべる!」

ナレーター: こうして、ふわふわ星の玉座で、未来の王女に向けたやさしい経済学の授業が始まったのでした。


そもそも「国」ってなあに?~うさぎの集落で考えてみよう~

てち王: さて、ちろ姫。まず「国」というものを、我々うさぎが暮らす「集落」に例えて考えてみよう。世の中には、いろんな集落があるからの。

ちろ姫:「しゅうらく!ニンジン畑がいっぱいあるところ?」

てち王: うむ。まず、我々が住むこのふわふわ星のような集落がある。ここは、長老のうさぎ達が多く、長年の知恵でニンジン畑は安定し、毎日決まった量の美味しいニンジンが穫れる。新しい技術が生まれることは少ないが、とても平和で安心できる暮らしじゃ。これを「先進国(せんしんこく)」と言う。落ち着いていて、信頼できる大人の集落じゃな。

ちろ姫:「ふむふむ。いつもの干し草みたいに、安心できる場所ってことね!」

てち王: その通りじゃ。では、一方で「新興国」とは何か。それは、生まれたばかりの子うさぎたちがたくさんいて、「これからボクたちが一番大きなニンジン畑を作るぞ!」と、活気に満ち溢れている新しい集落のことじゃ。

ちろ姫:「子うさぎがいっぱい!じゃあ、毎日運動会みたいで楽しそう!」

てち王: まさにそうじゃ。そこでは、毎日新しい穴掘りの技術が開発されたり、これまで見つからなかった場所に巨大なニンジン畑が発見されたりする。ものすごいスピードで集落が大きくなっていく。人口も増え、経済もどんどん成長していくのじゃ。だから、もし朕たちがその集落に、我々のニンジン(お金)を分けてあげて応援(投資)したら、集落が大きくなった暁には、もっとたくさんのニンジンになって返ってくるかもしれない。これが新興国投資の魅力、「ハイリターン(大きな利益)」の可能性というわけじゃ。

ちろ姫:「わー!すごい!ニンジンがニンジンを産むのね!あたちのりんごも、応援してあげたら、りんごの木になるかも!」

てち王: (うむ、素直でよろしい)その意気や良し。じゃが、ちろ姫よ。話はここで終わりではないのじゃ。

目をキラキラさせるちろ姫に対し、てち王は優しくも、諭すような眼差しを向けました。どうやら、話はそう単純ではないようです。


元気いっぱいには「ワケ」がある~ぴょんぴょんボールの危険性~

ちろ姫:「てち兄様、どうしたの?あたち、おやつの干し草とりんご、全部その元気な集落に応援してあげる!」

てち王: まあ待て、早まるでない、ちろ姫。その元気な集落には、少し注意も必要での。…ほれ、お主が遊んでいたその「ぴょんぴょんボール」をよく見てみるのじゃ。

ちろ姫は、自分の手の中にあるキラキラしたボールを見つめます。

てち王: そのボールは、確かに元気よく跳ねる。じゃが、次にどこへ跳ねるか、お主にも分からぬであろう?高く跳ねたかと思えば、急に地面を転がったり、思わぬ方向に飛んで行ったりする。新興国も、それと少し似ているのじゃ。

ちろ姫:「え…?」

てち王: 子うさぎたちは元気すぎて、今日は東の森で遊んでいたかと思えば、次の日には西の川で水遊びを始めるかもしれぬ。つまり、集落のルールが急に変わったり、リーダーのうさぎが交代して方針がガラッと変わったりすることがある。そうすると、ニンジン畑の価値も、一日で大きく上がったり、逆にガクンと下がったりする(価格変動リスク)

ちろ姫:「あっち行ったりこっち行ったり…落ち着きがないのは、あたちと一緒だ…」

てち王: うむ…。それに、時には子うさぎ同士で「こっちのニンジンの方が大きい!」なんて、ニンジン畑の取り合いっこが始まってしまうこともある(政治・経済リスク)。そうなると、集落全体が混乱して、応援した我々のニンジンもどうなるか分からなくなってしまう。

ちろ姫:「けんかはダメって、いつもてち兄様に言われてるのに…」

てち王: そうじゃな。それに、もっと難しい話をすると、彼らが使っている「赤いニンジン」と、我々が使う「白いニンジン」の交換レートが、急に変わってしまうこともある(為替リスク)。たくさんの赤いニンジンをもらっても、いざ白いニンジンに交換しようとしたら、ほんの少しにしかならなかった、なんてことも起こりうるのじゃ。

ちろ姫:「えぇー!そんなの、ずるい!なんだか、元気すぎてちょっとこわいかも…」

さっきまで目を輝かせていたちろ姫は、少しだけ不安そうな顔でしゅんとしてしまいました。ハイリターンの裏には、同じくらい大きなリスクが隠れていることを知ったのです。そんな妹の姿を見て、優しい兄であるてち王は、そっとちろ姫の頭を撫でました。


最高の献立を作ろう!~分散投資という名の愛情~

てち王: 心配せずとも良い、ちろ姫。だからこそ、我々には「知恵」というものがある。そして、投資において最も大切な知恵の一つが「分散(ぶんさん)」という考え方なのじゃ。

ちろ姫:「ぶんさん…?」

てち王: ちろ姫の毎日の食事を考えてみよ。もし、毎日りんごだけを食べていたらどうなる?

ちろ姫:「えーっと、最初は嬉しいけど、だんだん飽きちゃう!それに、もしもりんごが病気になったら、あたち、お腹ぺこぺこになっちゃう…」

てち王: その通り!じゃから、ちろ姫は毎日、主食である栄養満点の「干し草」を食べ、デザートに甘い「りんご」を食べ、時にはご褒美で朕の「イチゴ」を少し分けてもらう。お水もしっかり飲む。色々なものをバランス良く食べるからこそ、毎日元気にぴょんぴょん跳ねていられるのじゃろう?

ちろ姫:「うん!バランスが大事なのね!」

てち王: 投資も全く同じじゃ。 安定した「先進国」という“主食の干し草”をしっかり食べつつ、これからの成長が期待できる「新興国」という“デザートのりんご”を少し加える。そうすれば、たとえ新興国というりんごが不作の年でも、主食の干し草があるからお腹を空かすことはない。逆に、りんごがビックリするほど大豊作の年には、いつもよりずっと豪華な食事になる。

ちろ姫:「そっか!どっちか一つだけじゃなくて、両方とも大事なんだ!」

てち王: うむ。このように、特徴の違うものをいくつか組み合わせて、大きな失敗を避けながら、全体として利益を狙っていく。これが「分散投資」という考え方じゃ。そして、この“食事の献立”そのものを「ポートフォリオ」と呼ぶ。王女たるもの、自分自身の資産の献立は、自分で考えられるようにならねばならぬぞ。

ちろ姫: わかった!ぴょんぴょんボール(新興国)だけで遊ぶのはハラハラするけど、いつも遊んでる安心な積み木(先進国)と一緒に遊べば、もっともっと楽しくなるってことね!安定とワクワク、どっちも大切にする!

てち王: うむ、見事じゃ、ちろ姫。それでこそふわふわ星のプリンセスじゃ。その調子で学んでいけば、きっと民に愛される立派な王女になれるであろう。さあ、今日の講義はここまで。約束通り、おやつの時間としようか。

ちろ姫:「やったー!干し草とりんごー!」

てち王に褒められ、ちろ姫は嬉しそうにぴょんぴょんと厨房へ駆けていきました。その小さな背中を見送りながら、てち王は満足そうに微笑むのでした。

新興国株は、その高い成長性から非常に魅力的な投資先です。しかし、その一方で予測不能なリスクも伴います。大切なのは、その特性をよく理解し、自分の資産全体(ポートフォリオ)の中の、あくまで一つのパーツとして捉えること。安定的な先進国株などと組み合わせる「分散投資」を心がけることで、リスクを抑えながら未来の成長の果実を狙うことができるのです。

あなたの資産という“献立”にも、刺激的で美味しい“デザート”として、新興国株を少し加えてみてはいかがでしょうか?


【本日の用語解説】

  • 新興国(エマージング・マーケット)
    • 経済が急成長している、発展途上の国々のこと。高い経済成長率や人口増加を背景に、株価の大きな上昇(ハイリターン)が期待される一方、政治や経済が不安定で、株価の変動が激しくなる傾向(ハイリスク)があります。代表的な国として、中国、インド、ブラジル、台湾、韓国などが挙げられます。
  • 先進国
    • 経済が成熟し、安定している国々のこと。アメリカ、日本、ドイツ、イギリスなどが含まれます。新興国ほどの急成長は期待しにくいですが、政治や経済が安定しているため、比較的リスクが低いとされています。
  • 分散投資
    • 投資対象を一つに絞らず、複数の異なる資産(例えば、先進国株と新興国株、株式と債券など)に分けて投資する手法。一つの資産が値下がりしても、他の資産でカバーできるため、全体のリスクを低減させる効果が期待できます。
  • ポートフォリオ
    • 投資家が保有している金融資産の組み合わせや、その詳細な内容のこと。株式、債券、不動産、預金など、具体的にどの資産をどれくらいの割合で保有しているかを示した一覧表のようなものです。「食事の献立」に例えられることが多いです。
  • リスク
    • 投資の世界で「リスク」とは、一般的に「リターンの振れ幅(不確実性)」を指します。「リスクが高い」とは、「儲かる可能性も大きいが、損する可能性も大きい」という意味で使われます。必ずしも「危険」という意味だけではありません。