【初心者〜中級者向け】債券投資の次に学ぶこと | 金利と価格のシーソー関係と「格付け」の読み方を解説

【初心者〜中級者向け】債券投資の次に学ぶこと | 金利と価格のシーソー関係と「格付け」の読み方を解説

ここは、宇宙に浮かぶ「ふわふわ星」。今宵は美しい夜。地平線の彼方まで広がるニンジン畑を、銀色の月光が優しく照らし出しています。そんな幻想的な風景を一望できる、小高い丘の上。二匹のうさぎが、満点の星空を見上げていました。

ふわふわ星の若き王「てち王」と、その妹「ちろ姫」。優しい兄と、元気いっぱいの妹は、寄り添うようにして夜空に散りばめられた宝石のような星々を眺めています。

ちろ姫: 「わー、てち兄様!お星様がキラキラしてて、とってもきれい!まるで巨大なニンジンの粒みたいだね!」

てち王: 「はっはっは。ちろ姫には何でもニンジンに見えるのじゃな。だが、本当に美しい夜空じゃ。こうして静かに星を眺めていると、心が落ち着く」

ちろ姫: 「うん!あたち、この前のてち兄様の話を思い出してたの。サイケンっていうのは、『満期』までしっかり持っていれば、約束通りニンジンとイチゴが返ってくる、とっても安心なものなんでしょ?もう完璧に覚えたよ!だから、こうやってのんびり星を眺めて待ってればいいんだよね!」

得意げに胸を張るちろ姫を見て、てち王は慈愛に満ちた笑みを浮かべました。その通り、と褒めてあげたい気持ちをぐっとこらえ、彼は夜空のさらに深い部分を指し示すように、話を切り出しました。

てち王: 「うむ、その通りじゃ。ちろ姫は本当に物覚えが良くて朕は嬉しいぞ。じゃがな、ちろ姫。その『待っている間』にも、この世界…ふわふわ星の経済は、この星空のように常に静かに動き続けておる。今日は、その『世界の動き』と債券の、もう少しだけ大人向けの面白い関係について話してやろう。ほれ、あそこにちょうど良いものがある」

てち王が指さした先には、丘の頂上にぽつんと置かれた、うさぎの子供たちが遊ぶための小さなシーソーがありました。

金利が上がると債券価格は下がる?不思議なシーソーゲーム

ちろ姫: 「シーソーだ!あたち、乗りたい!」

てち王: 「まあ、待て待て。落ち着きのないプリンセスじゃな。今から、このシーソーを使って、とても大事な経済の仕組みを説明する。よく聞くのじゃぞ。…ちろ姫が持っている債券は、以前朕が話した通り『100ニンジンを貸してくれたら、1年ごとに利子としてイチゴを5個ずつあげて、10年後に100ニンジンを返す』という約束手形だったとしよう」

ちろ姫: 「うん!毎年イチゴが5個もらえるやつだね!」

てち王: 「うむ。では、ちろ姫がその債券を持って1年が経った頃、ふわふわ星の景気がとても良くなって、星じゅうのニンジンが溢れかえったとしよう。そうなると、星の銀行…『ふわふわ銀行』はこう考える。『ニンジンがたくさんあるから、預けてくれたお礼のイチゴを増やそう』と。そして、『今、ニンジンを預けてくれたら、1年でイチゴを7個あげますよ!』という新しいキャンペーンを始めた」

ちろ姫: 「えーっ!7個も!?そっちの方がお得じゃん!」

てち王: 「そうじゃろう。この『世の中全体のお金の流れやすさや、お礼のイチゴ(利子)の相場』のことを『金利』と呼ぶ。この場合、『世の中の金利が上がった』ということになるのじゃ。…さて、ここで問題じゃ。ちろ姫が急にお金が必要になって、持っている『イチゴ5個の債券』を満期前に誰かに売りたくなったとする。買い手は、今なら銀行に行けばイチゴが7個もらえるのに、わざわざちろ姫の債券を買いたいと思うかの?」

ちろ姫: 「うーん…思わないかも。だって、5個しかもらえないんだもん」

てち王: 「その通り!買い手はこう言うじゃろう。『それなら、少し値段を安くしてくれないか?例えば、98ニンジンで売ってくれるなら、元々の値段より安く買える分、最終的にもらえる利益が、新しい金利(イチゴ7個)と大体同じくらいになるから、買ってもいいよ』と」

てち王はそう言うと、シーソーの片方の板に「金利」、もう片方の板に「債券価格」と書いた葉っぱを置きました。

てち王: 「いいか、ちろ姫。世の中の金利が上がると(てち王は「金利」の葉っぱをグッと押し下げる)、みんな新しい、もっと条件の良い商品に目が向く。その結果、元々出回っていた古い債券の魅力は相対的に下がり、価格は下がる(「債券価格」の葉っぱがフワッと上がる)。ほれ、シーソーのように、片方が上がれば、もう片方が下がるのじゃ」

ちろ姫: 「ほんとだ!シーソーみたい!」

てち王: 「逆に、ふわふわ星の景気が少し悪くなって、ふわふわ銀行が『イチゴを3個しかあげられません』と言い出したらどうじゃろうか(「金利」の葉っぱが上がり、価格が下がる)?今度は、ちろ姫が持っている『毎年イチゴが5個もらえる債券』は、とても魅力的に見える。だから、『ぜひその債券を売ってください!102ニンジン出します!』という買い手が現れるかもしれん。つまり、金利が下がれば、債券価格は上がるのじゃ」

ちろ姫: 「なるほどー!金利と債券価格は、反対に動くんだね!面白い!」

てち王: 「だが、ちろ姫。ここで絶対に忘れてはならないことがある。これは、あくまで満期前に売買する場合の話じゃ。ちろ姫が、周りの動きに惑わされず、最初の約束通り10年後の満期までしっかりとその債券を持っていれば、途中の価格がどうなろうと、きっちり100ニンジンと毎年のイチゴ5個は受け取れる。この『満期まで持てば約束は守られる』という大原則こそが、債券投資の安心感の源泉なのじゃからな」

約束を守る力を見極めるモノサシ「格付け」

シーソーの仕組みを理解したちろ姫は、感心しきりです。しかし、同時に新たな疑問が湧いてきました。

ちろ姫: 「そっかぁ。でも、それって、ちゃんとお金を返してくれる相手じゃないと意味ないよね?約束手形を持ってても、貸した相手がいなくなっちゃったら、ただの紙切れだもん」

てち王: 「なんと鋭い指摘じゃ!ちろ姫、王女としての素質がキラリと光ったぞ。その通り!債券投資において最も重要なのは、『誰にお金を貸すか』、つまり『発行体の信用力』を見極めることなのじゃ。そこで登場するのが、あの夜空に輝く星々のような…『格付け』というモノサシじゃ」

てち王は、夜空でひときわ強く、それでいて穏やかな光を放つ星を指さしました。

てち王: 「ごらん、ちろ姫。あの、最も明るく威厳のある星。あれが『AAA(トリプル・エー)』と評価される星じゃ。これは、朕が治めるこの『ふわふわ星政府』が発行する国債のようなもの。『債務を履行する能力が極めて高い』、つまり、約束を破る可能性が限りなく低いという、最高の信頼の証じゃ」

ちろ姫: 「わー!一番星だね!てち兄様の星なんだ!」

てち王: 「そして、あの隣で力強く輝いておるのは『AA(ダブル・エー)』の星。星で一番大きな『ふわふわニンジンジュース株式会社』といったところかのう。こちらも極めて信頼度が高い。さらに、少し離れたところで健気に光るあれは『BBB(トリプル・ビー)』の星。最近できたばかりの『ぴょんぴょん干草クッキー会社』かもしれんな。将来性は豊かじゃが、まだ事業が安定しておらず、少しだけ嵐が吹いたらどうなるか…という心配もある」

ちろ姫: 「星の明るさで、信用できるかどうかが分かるんだね!」

てち王: 「その通りじゃ。格付け会社という専門の機関が、国や会社の財務状況などを厳しくチェックして、アルファベットで評価を下す。Aが多いほど信用度が高く、約束を破るリスク(信用リスク)が低い。逆に、BやCがつく格付けの債券は、そのリスクが高まる」

ちろ姫: 「じゃあ、みんなAAAの債券だけを買えば、絶対安心ってことだね!」

てち王: 「それも一つの賢い考え方じゃ。しかし、物事はそう単純ではないのが経済の面白いところ。考えてもみよ。誰もが『絶対に安心だ』と思う相手にお金を貸す場合、貸し手は強気になれるかな?それとも弱気になるかな?」

ちろ姫: 「うーん…『別にあなたに貸してもらわなくても、貸してくれる人は他にたくさんいますよ』って、強気になれそう!」

てち王: 「その通り!だから、AAAのような格付けが高い発行体は、お礼のイチゴ(利子)をたくさん払わなくても、お金を貸してくれる人が大勢集まる。結果として、格付けが高い債券ほど、金利(利回り)は低くなる傾向があるのじゃ。逆に、『BBB』の干草クッキー会社は、『うちにお金を貸してくれたら、リスクが高い分、お礼のイチゴをたくさんつけますよ!』と言って、高い金利を提示してくる。どちらを選ぶかは、投資家自身がどれだけのリスクを受け入れられるか次第なのじゃ」

経済を知れば、夜空の地図が読めるようになる

ちろ姫は、もう一度、満点の星空を見上げました。先ほどまでただ綺麗だとしか思っていなかった星の輝きが、今や一つ一つ意味を持つ、壮大な経済の地図のように見えていました。

ちろ姫: 「てち兄様…。なんだか、すごいね。サイケンって、ただ待ってるだけじゃなくて、世の中の金利がどうなってるかとか、貸す相手がどれくらい信じられるお星様なのかとか、色々考えることがあって、すっごく奥が深いんだね…!」

てち王: 「うむ。その通りじゃ。経済や金融の知識を身につけるということは、これまでとは違う解像度で世界を見るための『新しい目』を手に入れるようなもの。夜空の星々の語る言葉が、少しだけ分かるようになるのじゃ。焦る必要はない。こうして一つずつ、朕と一緒に学んでいけば良い」

ちろ姫: 「うん!あたち、もっと勉強する!そして、いつかてち兄様みたいに、この星空の地図を全部読めるようになりたいな!」

決意を新たにしたちろ姫の小さな手を、てち王は優しく握りました。ひんやりとした夜風が、二匹のうさぎのふわふわな毛を心地よく揺らしていきます。学びの喜びを知ったプリンセスの瞳は、夜空のどの星よりも強く、希望に満ちて輝いていました。二匹は、温かいニンジンポタージュが待つお城へ向かって、ゆっくりと丘を下りていくのでした。


まとめ&用語解説

てち王とちろ姫の星空教室、いかがでしたでしょうか。今回は債券投資の少し応用的なテーマに踏み込んでみましたが、シーソーや星空の例えで、より立体的にご理解いただけたのではないでしょうか。最後に、重要な用語を復習しておきましょう。

  • 金利(きんり)
    お金の貸し借りにおけるレンタル料のようなもの。世の中全体のお金の需給バランスによって変動します。景気が良いとお金を借りたい人が増えるため金利は上昇し、景気が悪いと金利は下落する傾向があります。
  • 債券価格(さいけんかかく)
    債券が市場で売買されるときの値段のこと。主に金利の変動によって変わります。金利が上昇すると債券価格は下落し、金利が下落すると債券価格は上昇するという、シーソーのような関係にあります。ただし、これは満期前に売買する場合の話です。
  • 利回り(りまわり)
    投資した金額に対して、1年間でどれくらいの利益(利子など)が得られるかを示す割合(%)のこと。債券の価格が下がると、最終的な利回りは上昇します。
  • 格付け(かくづけ)
    債券を発行する国や企業の、元本や利子の支払い能力(信用力)を評価し、記号でランク付けしたものです。S&Pやムーディーズといった格付け会社が付与します。「AAA(トリプル・エー)」が最高位で、ランクが下がるにつれて信用リスクは高まります。
  • 信用リスク(しんようリスク)
    国や企業の財政状況が悪化するなどして、約束通りに元本や利子が支払われなくなる可能性のこと。一般的に、格付けが低い債券ほど信用リスクは高くなります。
  • 債務不履行(さいむふりこう) / デフォルト
    発行体が財政難などにより、元本や利子の支払いを停止してしまうこと。債券投資における最大のリスクです。

これらの知識は、債券だけでなく、あらゆる投資判断においてあなたの身を守る盾となります。ご自身のリスク許容度に合わせて、様々な「星(格付け)」に分散投資することを検討してみてください。