NFTと仮想通貨の違いとは?始め方から3つのリスク・税金まで初心者向けに解説
宇宙のどこか、重力さえもが優しい、ふわふわな惑星。それが「ふわふわ星」。
ここの通貨は「ニンジン」。うさぎ達はニンジンを育て、ニンジンで買い物をし、ニンジンを巡ってたまに喧嘩もする、そんな平和な星。
ふわふわ城のテラスでは、若き王「てち王」が、お気に入りの経済紙『キャロット・ウォール・ジャーナル』を片手に、深煎りのニンジンコーヒーを嗜んでいた。そこに、何やら興奮した様子の妹「ちろ姫」が、一枚のタブレットを抱えて駆け込んでくる。どうやら、今日の午後は退屈せずに済みそうだ。
ちろ姫、デジタル干し草に夢を見る
ちろ姫: 「にいちゃま、にいちゃま! 大事件でちゅ! あの、有名なアーティスト『バンクシーならぬ、ラビクシー』の新作アートが、なんとニンジン100万本で売れたそうでちゅ!」
てち王: 「ほう。またか。今度はどんな作品だ? 『シュレッダーにかけられたニンジン』のデジタル版でも作ったのか?」
(てち王は新聞から目を離さずに、やれやれといった口調で答えた。)
ちろ姫: 「違いまちゅ! 今回は『ただの干し草のJPEG画像』でちゅ! ただの干し草の画像が、お城が建つほどのニンジンになったんでちゅよ! ってことは…あたちが昨日食べ残した干し草も、写真に撮れば億万長者でちゅか!?」
(ちろ姫は目をドルマークならぬニンジンマークにして、自分の食べかけの干し草をキラキラした瞳で見つめている。)
てち王: 「ちろ姫よ、落ち着け。お前の食べ残しは、朕が後で美味しくいただくから、そこに置いときなさい。そもそも、ただのデジタル画像がなぜそんな法外な値段になるか、その仕組みを理解しているのか? それが『NFT』という代物だということくらいは、さすがに知っておるな?」
ちろ姫: 「えぬえふてぃー? もちろんでちゅ! 『なんかよくわからないけど、すごい儲かるデジタルなやつ』でちょ?」
てち王: 「……。その認識だと、十年後には『必ず儲かる』という甘い言葉で、怪しげな壺ではなく、怪しげなUSBメモリを買わされているぞ。未来の王女が、情報商材うさぎにカモられてどうする。少しビターな現実を教えよう。」
(てち王は深いため息をつき、ニンジンコーヒーを一口すすると、ゆっくりと語り始めた。)
胡散臭いデジタルデータに「お墨付き」を

ちろ姫: 「あーん、にいちゃまのいじわるー! でも聞くでちゅ! あたちの干し草をニンジンに変えるためでちゅ!」
てち王: 「動機が不純だが、まあいい。まず、ちろ姫の言う『干し草の画像』だが、これはただのデジタルデータだ。今まで、デジタルデータというものは、右クリック一つで無限にコピーできた。つまり、希少価値などゼロに等しかった。」
ちろ姫: 「うんうん、あたちでもコピー&ペーストはできまちゅ。」
てち王: 「だが、NFT…『非代替性トークン』は、その状況を変えた。ものすごく雑に、そして少し皮肉を込めて言うならば、『ただのデジタルゴミに、これは本物かつ一点モノである、という王様のお墨付きを与える技術』だと思うとよい。」
ちろ姫: 「ゴミにお墨付き…?」
てち王: 「そうだ。例えば、ちろ姫の食べ残しの干し草の画像に、朕が『これは、ちろ姫が最初に残した由緒正しき干し草の画像である』というデジタルな印鑑を押してやったとしよう。この印鑑は『ブロックチェーン』という、全宇宙のうさぎが監視している絶対に改ざんできない台帳に刻まれる。すると、ただの画像データが、『ちろ姫公認・世界に一つの干し草アート』という、なんだか凄そうなものに化ける。これがNFTの正体だ。」
ちろ姫: 「へぇー! あたちの食べ残しが、由緒正しきアートに!?」
てち王: 「そして、その『お墨付き付きアート』を売買する時に使われるのが、『仮想通貨』だ。我々が使うニンジン通貨は、ふわふわ星政府が価値を保証している。だが、仮想通貨は特定の国や組織が管理しているわけではない、いわば無国籍なデジタルマネーだ。なぜそんなものが使われるか? 国境を越えて大量のニンジンを輸送するのは関税もかかるし大変だが、デジタルデータなら一瞬で送れるからな。実にグローバルで、実に胡散臭い。」
ちろ姫: 「かそうつうか…。じゃあ、その『ぶろっくちぇーん』っていう台帳は、誰が見てるんでちゅか?」
てち王: 「いい質問だ。それは、この取引に参加している不特定多数のうさぎ全員だ。いわば、『宇宙中のうさぎが、お互いのニンジン取引をリアルタイムで覗き見している、究極の相互監視システム』だな。誰かがズルをして『100ニンジンもらった』と嘘の記録を書き込もうとしても、他の全員が『いや、お前がもらったのは1ニンジンだろ』と多数決で否定する。だから、記録は改ざんされない。ある意味、中央集権的な王の支配よりも民主的で、ある意味、常に誰かに見られているようで息苦しいシステムだ。」
ちろ姫: 「なんだか…すごい仕組みなのはわかったでちゅ。つまり、えぬえふてぃーは『これは本物!』っていう証明書で、かそうつうかはそれを買うためのお金ってことで合ってまちゅか?」
てち王: 「うむ。ようやく結論にたどり着いたな。そういうことだ。誰かに説明する時は、それで十分だろう。」
甘いニンジンには毒がある
(ちろ姫は、自分の干し草ビジネスの成功を確信したかのように、胸を張った。)
ちろ姫: 「わかったでちゅ! じゃあ、さっそく『プリンセスちろ姫の食べ残しコレクション』をNFTにして、一攫千金を目指しまちゅ! まずは第1弾、『ちょっと湿気った干し草』から!」
てち王: 「待て待て待て、早まるな。ちろ姫よ、世の中そんなに甘くないぞ。その話には、語られていない続きがある。光が強ければ、影もまた濃くなるのがこの世の常だ。」
ちろ姫: 「影…? 暗いお部屋は嫌でちゅ…。」
てち王: 「いいか、よく聞け。王として、民と家族の資産を守る義務が朕にはある。これから話すのは、甘いニンジンに隠された毒の話だ。」
てち王: 「第一に、価値のジェットコースターだ。仮想通貨もNFTも、価格が安定しない。我々のニンジンが、ある日突然キャベツの葉っぱ一枚の価値になったり、逆に黄金と同じ価値になったりしたら、経済は大混乱だろう? あの世界では、それが日常茶飯事だ。昨日100万ニンジンの価値があったお前の干し草アートが、明日には本当にただのデジタルゴミ、いや、サーバー代を食うだけのマイナス資産になることすらある。」
ちろ姫: 「ひぇっ…! それは困りまちゅ!」
てち王: 「第二に、デジタル世界の詐欺師と怪盗だ。お前が『絶対に儲かるNFT』というDMをもらったとしよう。リンクをクリックしたら、ちろ姫のデジタルニンジン財布(ウォレット)から、全財産が抜き取られていた…なんて話はザラだ。甘い言葉で近づいてくるうさぎは、大抵ちろ姫のニンジンが目当てだと思え。自己防衛の知識がなければ、丸裸にされるぞ。」
ちろ姫: 「うぅ…怖い世界でちゅ…。」
てち王: 「そして第三に、最も見落とされがちなのが税金だ。もし、ちろ姫の干し草が奇跡的に10万ニンジンで売れたとしよう。すると、ふわふわ星の税務署うさぎが、血走った目で計算機を片手にちろ姫のおうちにやってくる。『ちろ姫様、利益が出ておりますな。さあ、税金を納めていただきましょう』とな。利益が出たら、申告して税金を払うのは国民の義務だ。これを怠ると、後でもっと恐ろしいことになる。」
ちろ姫: 「ぜいきん…。美味しいニンジンが減っちゃうんでちゅね…。」
てち王: 「そうだ。だが、もちろん影だけではない。この技術自体は、ふわふわ星の統治にも応用できる可能性がある。例えば、土地の権利書をNFTで発行すれば、悪徳な地上げ屋うさぎによる不正を防げるかもしれん。あらゆる『価値』をデジタルで、安全に、透明性をもってやり取りできる未来が来る可能性も秘めているのだ。…だからこそ、厄介なのだがな。」
王女が学ぶべき、次の一歩
(てち王の現実的な話を聞いて、ちろ姫のニンジンマークだった目は、すっかり元の丸い瞳に戻っていた。)
ちろ姫: 「なんだか…億万長者への道は、けっこう面倒くさくて危ないでちゅね…。あたち、やっぱりこの干し草は、普通に夜食として食べることにしまちゅ…もぐもぐ。」
てち王: 「ふっ、それが賢明な判断というものだ。だがな、ちろ姫。怖いから、面倒だからといって、完全に目を背けていい問題でもない。これからの時代、知らぬ存ぜぬでは、自分自身や民を守ることはできん。王族たるもの、新しい技術の光と闇、その両方を正しく理解しておく責務があるのだ。」
ちろ姫: 「むぐむぐ…わかったでちゅ。ちゃんと、お勉強はちゅづけまちゅ。」
てち王: 「うむ。よろしい。」
(てち王は、満足げに頷くと、最後に読者の方へ視線を向けた。)
てち王: 「…さて、この記事を読んでいるお主らの中にも、ちろ姫のように一攫千金を夢見た者がいるやもしれんな。その野心は否定しない。だが、行動する前に、まずは知ることだ。もし、本気でこの世界に足を踏み入れたいと考えるなら、以下のステップから始めてみることをお勧めするぞ。朕からの、王としてのアドバイスだ。」
- まずは『見るだけ』から。: NFTが売買されている『OpenSea』などのマーケットプレイスを、ただ覗いてみるがいい。どんなものが、いくらで売られているのか。その世界の空気を感じるのだ。
- 安全な入り口を選ぶ。: もし仮想通貨を買うなら、必ず日本の金融庁に登録されている暗号資産交換業者を選ぶことだ。無登録の海外業者などは、リスクが高すぎる。
- 『失ってもいいニンジン』で。: 投資の鉄則だが、絶対に生活費や将来のための貯金を突っ込んではならない。最悪の場合、すべて失っても笑っていられる金額から始めることだ。
- 税金の勉強は必須。: 利益が出た場合の税金の計算方法は、非常に複雑だ。事前に国税庁のウェブサイトを熟読するか、専門家に相談できる準備をしておけ。甘く見ていると、本当に痛い目を見るぞ。
「知識は、お主の資産を守る最強の盾になるのだぞ。」

用語解説
今回の少しビターなお話はいかがでしたか?最後に、物語に出てきた言葉を、大人向けに補足しつつ解説します。
- NFT (Non-Fungible Token / 非代替性トークン): ブロックチェーン技術を活用し、デジタルデータに唯一無二の価値(所有証明、来歴など)を付与する技術。アートやゲームだけでなく、会員権、不動産登記、学位証明など、様々な分野への応用が期待されています。ただし、NFT自体の価値は、その対象となるコンテンツの需要に大きく依存します。
- 仮想通貨(暗号資産): ブロックチェーンを基盤とするデジタル通貨。国や銀行を介さずに価値の移転が可能です。NFTの売買には、イーサリアム(ETH)が使われることが多いです。価格変動(ボラティリティ)が非常に激しいため、投資対象としてはハイリスク・ハイリターンな資産とされています。
- ブロックチェーン: 取引データを暗号化してブロックに格納し、それらをチェーン状に連結して分散管理する技術。「分散型台帳技術」とも呼ばれます。データの改ざんが極めて困難で透明性が高いのが特徴ですが、処理速度やスケーラビリティ(拡張性)に課題がある場合もあります。
- ウォレット: 仮想通貨やNFTを保管・管理するためのデジタルな財布。取引所に置いたままにする「取引所ウォレット」と、自分で秘密鍵を管理する「個人ウォレット(MetaMaskなど)」があります。後者はセキュリティが高い反面、自己管理の責任が重大になります。
- 情報商材: 「誰でも簡単に儲かる」といった謳い文句で、ノウハウと称する情報を高額で販売する商品。NFTや仮想通貨のブームに乗り、詐欺的なものが増えているため、注意が必要です。甘い話には必ず裏があると心得ましょう。
- 暗号資産の税金: 日本において、暗号資産の売買などで得た利益は、原則として「雑所得」に分類されます。雑所得は給与所得など他の所得と合算して税額を計算する「総合課税」の対象となり、税率は最大で55%(所得税+住民税)に達することがあります。
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