【今からでも遅くない】40代・50代から始める積立投資〜新NISAの最適解と注意点〜

【今からでも遅くない】40代・50代から始める積立投資〜新NISAの最適解と注意点〜

宇宙のどこか、マシュマロよりも柔らかく、綿菓子よりも甘い雲に浮かぶ惑星、その名も「ふわふわ星」。この星では、王族も民も、みんなフワフワのうさぎ。通貨はキラキラと輝く「ニンジン」です。

この星を治めるのは、賢くて優しい「てち王」。そのフワフワの毛並みは、宇宙一の知性の証。経済や金融のことなら、どんな専門家もうならせるほどの知識を持っています。

そんなてち王には、歳の離れた妹がいました。元気いっぱいだけど、まだ生まれたばかりの「ちろ姫」。将来、立派な王女になるべく、日々お勉強に励んで…いるかと思いきや、すぐにぴょんぴょん跳ねて、おやつの干草をねだる、好奇心旺盛なお姫様です。

今日も、ふわふわ城のお庭で、何やら真剣な(?)話し合いが始まったようです…。


消えていくニンジン?インフレの足音

ちろ姫: 「てち王お兄様〜!大変!あたちの大事なニンジンが…ニンジンが…!」

ぴょんぴょんと長い耳を揺らしながら、目に涙をいっぱいためて駆け寄ってくる妹のちろ姫を見て、てち王は読んでいた本から優しく顔を上げた。

てち王: 「どうしたのじゃ、ちろ姫。そんなに慌てて。朕のニンジンケーキをこっそりつまみ食いしたのがバレたか?」

ちろ姫: 「ち、違うもん!それもしたけど、そうじゃなくて!あたちが将来のために、樫の木の根元に貯めておいたニンジンさんの価値が、なんだか減ってる気がするの!」

てち王: 「ほう?詳しく話してみよ」

ちろ姫: 「あのね、去年はこのニンジン1本で、市場のりんご飴が買えたのに、今年は『ニンジン1本と干草をひとつかみ』ないと売ってくれないの!あたちのニンジンは何も変わってないのに、買えるものが減ってるの!これって、泥棒うさぎの仕業なの!?」

プンスカと怒るちろ姫を見て、てち王は優しく微笑んだ。

てち王: 「それは泥棒の仕業ではない。…それはな、『インフレ』という、目に見えないお化けの仕業なのじゃ」

ちろ姫: 「いんふれ…?お化け?」

てち王: 「うむ。世の中に出回るニンジンの量が増えたり、みんなが欲しがるりんごの数が減ったりすると、モノの価値が上がって、相対的にニンジンの価値が下がってしまう。それをインフレと呼ぶ。ちろ姫が大事に土の中に埋めているニンジンも、放っておくと、その購買力…つまり『買える力』が少しずつ失われていくのじゃ」

てち王の言葉に、ちろ姫はショックを受けた。ただ貯めているだけではダメだなんて、考えたこともなかったからだ。

てち王: 「特に、『中年』と呼ばれる世代…人生の後半戦に差し掛かった者たちにとって、これは非常に重要な問題じゃ。人生100年時代と言われる昨今、退職してから先の長い人生を支えるニンジンを、ただ貯めておくだけでは、このインフレお化けに少しずつ食べられてしまうやもしれん」

ちろ姫: 「そ、そんなの嫌!あたちは将来、お城みたいなプリンを毎日食べたいのに!」

てち王: 「はっはっは。大丈夫じゃ、ちろ姫。今からでも決して遅くはない。むしろ、中年期には若い頃にはない『強み』もある。今日は特別に、朕が『ニンジンを働かせる魔法』…すなわち、中年からの本気の積立投資術を授けてやろう」

ニンジンを働かせる魔法「積立投資」

ちろ姫: 「ニンジンを働かせるってどういうこと?ニンジンさんに、畑仕事でもさせるの?」

てち王: 「うむ、それに近いかもしれぬな。我々が寝ている間にも、ニンジン自身が仲間を増やしてくれる仕組みを作ること。それが『投資』じゃ。そして、その最も基本的で強力な魔法が『積立投資』なのじゃ」

てち王は、庭の片隅にある小さな畑を指さした。

てち王: 「例えば、ここにニンジンの種を蒔くとしよう。『積立投資』とは、毎月1日ニンジン1本分の種を蒔く、というように、『決まった時』『決まった金額』で買い続ける方法のことじゃ。これを『ドルコスト平均法』とも呼ぶ」

ちろ姫: 「ふーん。でも、お天気がすごく良くて、種がよく育ちそうな日(株価が安い日)に、持ってる種をぜーんぶ蒔いちゃった方が、たくさん収穫できてお得じゃないの?」

ちろ姫の素朴だが的を射た質問に、てち王は満足そうに頷いた。

てち王: 「良い質問じゃ、ちろ姫。確かに、一番安い時にまとめて買えれば、それが最強じゃ。しかし、未来のお天気がどうなるか、誰にも完璧には予測できぬ。もし、ちろ姫が『今日が最高のお天気だ!』と思って全部の種を蒔いた日が、実はこれから1ヶ月続く干ばつの初日(株価の最高値)だったらどうなる?」

ちろ姫: 「うっ…種が全部ダメになっちゃうかも…」

てち王: 「その通り。しかし、毎月コツコツ種を蒔いていればどうかな?お天気が悪い日(価格が高い時)は少ししか種を買えぬが、逆にお天気が良い日(価格が安い時)には、同じニンジン1本分でたくさんの種を買うことができる。長い目で見れば、種1つあたりの平均購入単価を平準化させることができるのじゃ。これが、時間を見方につける『時間分散』の効果。特に、相場の天気を読むのが難しい我々にとって、非常に有効なリスク管理術なのじゃよ」

ちろ姫: 「なるほどー!それなら、あたちみたいに落ち着きがなくてもできそう!」

てち王: 「うむ。そして、中年からの投資では、この考え方がさらに重要になる。若い頃より投資に使える時間が短い分、一度に大きな失敗はできぬからの。退職金などでまとまったニンジンを手にした時も、慌てて一度に投資するのではなく、何回かに分けて投資することで、高値掴みのリスクを減らすことができるのじゃ」

魔法の畑「新NISA」を使いこなせ!

ちろ姫: 「わかったわ!あたち、早速ニンジンを働かせる!でも、ニンジンがたくさん増えたら、お城の税務官うさぎがやってきて、『税金として半分よこせ!』って言ってくるんでしょ?知ってるんだから!」

得意げに胸を張るちろ姫に、てち王は秘術を授けるように声を潜めた。

てち王: 「ふふふ…ちろ姫よ。実は、国が用意してくれた特別な『魔法の畑』があることを知っておるか?その畑で育ったニンジンは、どれだけ増えようとも、1本たりとも税金を取られることのない、夢のような畑…それが『新NISA』制度じゃ」

ちろ姫: 「ええー!そんなズルい畑があるの!?」

てち王: 「うむ。この魔法の畑には2つのエリアがある。『つみたて投資枠』と『成長投資枠』じゃ」

  • つみたて投資枠: 「こちらは、国が『これは比較的、堅実で育てやすいですよ』と選んでくれた、優良なニンジンの種(投資信託など)をコツコツ育てるためのエリアじゃ。年間120万ニンジンまで種を蒔ける」
  • 成長投資枠: 「こちらは、もう少し自由度の高いエリア。つみたて投資枠で買える種はもちろん、少し変わった品種のニンジン(個別株やアクティブファンドなど)も育てることができる。年間240万ニンジンまで蒔けるぞ」

てち王: 「そして、この2つの畑で生涯に蒔ける種の上限は、合計で1800万ニンジン。この枠の中で得た利益は、すべて非課税となる。これを使わない手はないのじゃ」

ちろ姫: 「すごい!じゃあ、中年代のうさぎさんたちは、この畑をどう使えばいいの?」

てち王: 「良い点に気づいたな。残された時間が若い世代よりは短い場合、いかに効率よく、この1800万ニンジンの畑を埋めるかが鍵となる。例えば、年間投資上限である360万ニンジン(つみたて120万+成長240万)を毎年投資し続ければ、最短5年でこの魔法の畑をすべて耕し終えることができる」

ちろ姫: 「ご、5年!?」

てち王: 「うむ。もちろん、無理は禁物じゃがな。そして、もう一つ大事なのが『何の種を蒔くか』と『畑全体のバランス』じゃ。これを『ポートフォリオ』と呼ぶ」

てち王は、2種類のニンジンの種袋を取り出した。

てち王: 「まず、投資先の基本となるのが、特定の天才うさぎが育てるニンジン畑(アクティブファンド)に賭けるのではなく、世界中のうさぎ達が耕すニンジン畑全体(インデックスファンド)に広く投資する方法じゃ。その代表格がこの2つ」

  • S&P500に連動するファンド: 「これは、アメリカという世界一パワフルで巨大なニンジン畑を耕す、トップ500の農家うさぎたちにまとめて投資する方法じゃ。成長力は凄まじいが、もしこの畑全体が不作に見舞われると、影響をモロに受ける」
  • 全世界株式(オール・カントリー、通称オルカン): 「これは、アメリカだけでなく、ヨーロッパ、日本、新興国など、世界中のありとあらゆるニンジン畑に、少しずつ種を蒔く方法じゃ。アメリカが不作でも、他の地域の畑が豊作ならカバーしてくれる。より安定感があるのが魅力じゃな」

ちろ姫: 「あたちはキラキラしてて勢いのある、アメリカのニンジンがいいな!」

てち王: 「それも一つの立派な考え方じゃ。しかし、王女たるもの、世界情勢を広く見渡す視点も大切。どちらが良いというわけではなく、自分の考え方やリスクの許容度で選ぶのが肝心じゃ。そして、中年からのポートフォリオで重要なのは、来るべき『収穫期(老後)』に備え、少し守りを固めるという視点じゃ」

てち王: 「我々うさぎも、冬が近づけば、万が一のために、すぐ食べられる干草や、栄養価の高い木の実など、種類の違う食料をバランスよく蓄えるじゃろ?投資も同じ。40代、50代と年齢が上がるにつれ、ニンジン畑(株式)だけでなく、少し値動きの穏やかな『債券』という畑もポートフォリオに加えることを検討するのじゃ。NISAの成長投資枠を使えば、そういった債券の種(債券ETFなど)も蒔くことができる。攻め(株式)と守り(債券)のバランスを取ることで、より安定した資産形成が望めるのじゃよ」

慌てないのが王家の流儀

てち王の熱のこもった説明に、ちろ姫の目はキラキラと輝いていた。

ちろ姫: 「わーい!わかった!あたち、明日、お城の宝物庫にあるニンジンをぜーんぶ、アメリカのキラキラニンジン畑に投資するわ!」

ぴょん!と高く飛び跳ねるちろ姫。その姿を見て、てち王は「こほん」と一つ咳払いをした。

てち王: 「待つのじゃ、ちろ姫!それこそが、最もやってはならぬこと!朕が伝えたい、一番大事なことをまだ話しておらん」

ちろ姫: 「え?」

てち王: 「投資には、必ず『リスク』が伴う、ということじゃ。ニンジンが、天候不順や害虫被害で育たない…つまり『元本割れ』する可能性は常にある。このことを決して忘れてはならぬ」

てち王は、真剣な眼差しで続けた。

てち王: 「だからこそ、3つの心得を胸に刻むのじゃ」

  1. 決して生活のすべてを懸けないこと: 「まずは『生活防衛資金』…つまり、病気やケガなど、万が一のことがあっても、半年〜2年くらいは安心して暮らせるだけのニンジンを、投資とは別に必ず確保しておくこと。すべてのニンジンを畑に蒔いてしまっては、急な嵐が来た時に食べるものがなくなってしまう」
  2. 短期的な天気に一喜一憂しないこと: 「畑の作柄は、日々の天気で変わる。雨が降ったり、カンカン照りが続いたり(価格が変動したり)するのは当たり前。大切なのは、少なくとも10年、15年という長い目で、どっしりと構えることじゃ。我々うさぎの長い耳は、遠くの音を聞くためにある。投資も同じく、長期の視点を持つことが肝要なのじゃ」
  3. 自分を信じ、続けること: 「嵐が来て周りのうさぎ達が『もうダメだ!』と種を引っこ抜き始めても(狼狽売り)、最初に決めたルール通り、コツコツと種を蒔き続ける勇気が必要じゃ。歴史を振り返れば、世界中のニンジン畑は、数々の嵐を乗り越え、長い目で見れば豊作を実らせてきたからの」

てち王の言葉は、ちろ姫の心に深く染み渡った。

ちろ姫: 「…うん、お兄様。あたち、わかったわ。目先のニンジンに飛びつくんじゃなくて、将来、本当に大きくて甘いニンジンを収穫するために、賢く、じっくり、コツコツ育てる。それが、プリンセスにふさわしい投資術なのね!」

てち王: 「うむ。よくぞ理解したな、ちろ姫。それでこそ、ふわふわ星の王女じゃ」

満面の笑みを浮かべるちろ姫を見て、てち王は優しくその頭を撫でた。

こうして、ちろ姫はまた一つ、立派な王女になるための賢い知識を身につけました。 「もう若くないから」と諦めるのは、まだ早いのかもしれません。中年期だからこその知恵と資金力を活かし、未来の自分のために、今日から小さな種を蒔いてみる。 ふわふわ星の未来は、今日もきっと明るいことでしょう。あなたのニンジン畑も、今日から耕し始めてみては、いかがでしょうか。


用語解説

  • 積立投資: 毎月1万円、など「決まったタイミング」で「決まった金額」の金融商品を継続して買い付けていく投資手法。
  • ドルコスト平均法: 積立投資の買い方の一種。価格が高い時には少なく、安い時には多く買うことになるため、平均購入単価を平準化させる効果が期待できます。高値掴みのリスクを低減する効果があります。
  • インデックスファンド: 日経平均株価や米国のS&P500といった、特定の市場全体の動きを示す指数(インデックス)に連動する運用成果を目指す投資信託。市場全体に広く分散投資するのと同じような効果が得られ、コストが低いのが特徴です。
  • S&P500: 米国を代表する約500社の株価を基に算出される株価指数。米国の経済力、ひいては世界の経済を牽引する企業の集合体であり、力強い成長が期待される指数として人気があります。
  • 全世界株式(オルカン): その名の通り、日本を含む先進国や新興国など、全世界の株式市場にまるごと投資するのと同じ効果が得られるインデックスファンドの通称。究極の分散投資とも言われます。
  • 新NISA: 2024年から始まった新しい少額投資非課税制度。年間投資上限額が拡大され、制度も恒久化されました。「つみたて投資枠(年間120万円)」と「成長投資枠(年間240万円)」があり、生涯にわたって1800万円までの投資で得た利益が非課税になります。
  • ポートフォリオ: 投資家が保有する金融資産の組み合わせやその比率のこと。株式、債券、不動産などをどういう割合で持つかを考え、自分のリスク許容度に合ったポートフォリオを組むことが、資産運用のキモとなります。
  • リスク許容度: 投資家が、資産の価格変動(リスク)に対して、精神的・経済的にどの程度まで耐えられるかを示す度合い。一般的に、年齢が若く、投資期間を長く取れるほどリスク許容度は高いとされます。
  • 生活防衛資金: 会社の倒産、病気やケガなど、予期せぬ事態で収入が途絶えた場合でも、当面の生活を維持するためのお金。投資を始める前に、まず確保すべき最優先の資金です。一般的に生活費の半年〜2年分が目安とされます。
  • 出口戦略(4%ルール): 投資で増やした資産を、老後などにどのように取り崩していくかという戦略。有名なものに「4%ルール」があり、これは年間、資産の4%ずつを取り崩していけば、資産を枯渇させることなく長期間にわたって使い続けられる可能性が高い、という研究に基づいた考え方です。