【超初心者向け】テクニカル分析とは?物語でわかるチャートの読み方|移動平均線やRSIの基礎を解説

【超初心者向け】テクニカル分析とは?物語でわかるチャートの読み方|移動平均線やRSIの基礎を解説

宇宙のどこかにある、何もかもがふわふわな惑星「ふわふわ星」。この星を治めるのは、白と茶色の毛並みがまぶしい若き王、「てち王」です。その傍らには、いつも元気いっぱいの妹「ちろ姫」がいます。歳の離れた二匹は、とっても仲良しな兄妹。

ある晴れた日の午後、てち王は自室の大きな水晶玉のようなディスプレイで、何やら難しい顔をしていました。

ちろ姫:「てち兄様ー!何を見てるのー? あたちとお外でぴょんぴょんしない?」

元気よく部屋に飛び込んできたちろ姫。その右手だけが白い、茶色い毛並みの小さなプリンセスです。彼女の目には、一点を見つめる兄の姿が不思議に映りました。

てち王:「おお、ちろ姫か。少し待っておれ。今、地球という星の『GAFAM株』の動きを見ておったのじゃ」

ちろ姫:「がふぁむ? それ、おいしいの? りんごの仲間?」

てち王:ちろ姫の無邪気な問いに、てち王はふっと笑みをこぼします。

てち王:「がふぁむは食べ物ではないぞ。じゃが、ちろ姫、良い機会じゃ。将来、このふわふわ星を支える王女となるお前には、この世の経済の流れを読む力も必要になる。今日はその第一歩として、『テクニカル分析』というものを教えてやろう」

ちろ姫:「てくにかる…ぶんせき…? あたちが毎日食べる干し草の量より難しい?」

てち王:「ふふ、大丈夫じゃ。朕がそばについておる。それに、これがわかれば、どのタイミングでリンゴを買えば一番お得かもわかるようになるやもしれんぞ?」

ちろ姫:「ほんと!? あたち、お勉強する!」

リンゴという言葉に、ちろ姫の耳がぴょこんと立ちました。こうして、ふわふわ星の王室で、小さなプリンセスのための特別な経済学講座が始まったのです。

チャートは未来を映す鏡?〜ローソク足のキホン〜

てち王:「さて、ちろ姫。これを見てみよ」

てち王が水晶玉に映し出したのは、赤と緑の棒がギザギザと並んだ不思議なグラフでした。これは地球でとても有名な、あるIT企業の株価チャートです。

ちろ姫:「わー! 赤い棒と緑の棒がいっぱい! まるでニンジンの芽が、土からたくさん出たり引っ込んだりしてるみたい!」

てち王:「ほう、ちろ姫。良いところに目をつけたな。その通り、これは市場に参加している人々の気持ちが育ったり、しぼんだりした結果なのじゃ。この一本一本の棒を『ローソク足』と呼ぶ」

ちろ姫:「ろうそくあし? 火をつけたら明るくなるの?」

てち王:「火はつかぬが、市場の未来を明るく照らすヒントにはなるやもしれん。まず、この緑色のローソク。『陽線(ようせん)』と呼ぶ。これはな、一日の始まりの値段よりも、終わりの値段の方が高かった日を示しておる」

ちろ姫:「お値段が高くなった日!」

てち王:「うむ。みんなが『この会社の株はもっと価値が上がるぞ!』と元気いっぱいになって、買い注文がたくさん入った日じゃな。うさぎで例えるなら、ニンジンが大豊作で、みんなが喜び勇んでぴょんぴょん飛び跳ねているような状態じゃ」

ちろ姫:「わーい! 大豊作! ニンジンパーティだ!」

てち王:「ふふ。では逆に、この赤いローソク。『陰線(いんせん)』と呼ぶ。これは陽線の逆で、始まりの値段よりも終わりの値段の方が安くなってしまった日じゃ」

ちろ姫:「しょんぼりな日なのね…」

てち王:「そうじゃな。みんなが『あれ、この会社の株は少し元気がないかも…』と心配になって、売り注文が多くなった日じゃ。ニンジン畑にモグラが出てきて、みんなが『大事なニンジンが食べられちゃうかも』と心配して、耳を伏せているような状態かのう」

ちろ姫:「モグラはだめ! あたちのニンジンはあげないんだから!」

てち王:「大丈夫、これはあくまで例えじゃ。そしてもう一つ。このローソクの本体から、上下に細い線が伸びておるじゃろう? ちろ姫の長い耳のようにな」

ちろ姫:「ほんとだ! ぴょこんって出てる!」

てち王:「これを『ヒゲ』と呼ぶ。上のヒゲは、その日に一番高く跳ねた値段。下のヒゲは、一番低くしゃがんだ値段を示しておる。このヒゲが長いほど、その日は非常に活発な値動きがあった、ということじゃ。うさぎ達が一日中、高くジャンプしたり、深く穴を掘ったりしたようなものじゃな」

ちろ姫:「なるほどー! じゃあ、緑色で、胴体が長くて、上のヒゲも長ーいローソクが出たら、みんなが超ハッピーな日ってことね!」

てち王:「その通りじゃ! さすがは朕の妹、理解が早い。だがな、ちろ姫。その日一日の気分だけで判断するのはまだ早い。森全体を見ずして、一本の木だけを見てはいかんのじゃ。もっと大きな流れを掴むための、次の魔法を教えてやろう」

流れに乗るための魔法の線〜移動平均線〜

てち王:「では、このチャートに魔法の線を加えてみよう。えいっ」

てち王が水晶玉に触れると、ローソク足の上をなぞるように、三色の滑らかな曲線が現れました。

ちろ姫:「わぁっ! きれい! チャートの上に虹がかかったみたい!」

てち王:「うむ、美しいじゃろう。これは『移動平均線(いどうへいきんせん)』といって、ある決められた期間の価格の平均値を計算し、それを線で結んだものじゃ。いわば、『みんなの気持ちの平均点』のようなものじゃな」

ちろ姫:「へいきんてん? 難しい言葉…」

てち王:「大丈夫じゃ。例えば、短い線は『最近5日間の平均点』、中くらいの線は『最近25日間の平均点』、長い線は『最近75日間の平均点』といった具合じゃ。短期的な気分の浮き沈みではなく、市場全体の大きな流れ、つまり『トレンド』を読むのに非常に役立つのじゃよ」

そう言って、てち王はチャートのある一点を指さしました。そこでは、短い線が長い線を、下から上へと追い抜いていました。

てち王:「ちろ姫、ここを見るのじゃ。元気な若うさぎのような短い線(短期線)が、のんびり屋の長老うさぎのような長い線(長期線)を、下から上にぴょーんと追い抜いておるじゃろう?」

ちろ姫:「ほんとだ! 追い抜いてる!」

てち王:「これを『ゴールデンクロス』と呼ぶ。これは、市場が元気を取り戻し、『これから価格が上昇トレンドに入るかもしれない』という、とても縁起の良い収穫祭の合図なのじゃ」

ちろ姫:「しゅうかくさい! ゴールデンクロスが出たら、ニンジンをいっぱい買えばいいのね!」

てち王:「有力な『買い』のサインの一つじゃな。では、逆にこちらを見てみよ」

てち王が次に指した場所では、先ほどとは逆に、短い線が長い線を上から下へと突き抜けていました。

てち王:「これは『デッドクロス』と呼ぶ。ゴールデンクロスの逆で、『これから価格が下降トレンドに入るかもしれない』という、雨が続きそうなサインじゃ。こういう時は、一旦取引を控えて、自分の巣穴で様子を見た方が賢明やもしれんな」

ちろ姫:「ゴールデンクロスは『買い』の合図で、デッドクロスは『待って』の合図…わかったわ! これでもう完璧ね、てち兄様!」

自信満々に胸を張るちろ姫を見て、てち王は優しく微笑みます。

てち王:「うむ、基本はそれで良い。じゃがな、市場は時に意地悪なもの。ゴールデンクロスが出たと思ったら、すぐにまた下がってしまう『騙し』と呼ばれる動きもある。だから、このサインだけを鵜呑みにするのはまだ早いぞ。もう少し詳しく、今の市場の空気を感じ取るための道具も見てみようではないか」

今の勢いを測るメーター〜RSIとMACD〜

てち王:「チャートの上だけでなく、下にも注目してみよう」

てち王が操作すると、ローソク足チャートの下に、新たな二つの小さなグラフが表示されました。

ちろ姫:「わ! 今度は下に、ニョロニョロした線が出てきた! ミミズさん?」

てち王:「ふふ、これはミミズではないぞ。上のグラフを『RSI』、下のグラフを『MACD』と呼ぶ。これらは『オシレーター系指標』と言って、今の相場の『勢い』や『過熱感』を測るのに役立つ道具なのじゃ」

うさぎの満腹メーター「RSI」

てち王:「まずはこちらのRSIからじゃ。『Relative Strength Index』、日本語では『相対力指数』と言う。…少し難しいかの?」

ちろ姫:「うん、ぜんぜんわからない…」

てち王:「ではこう考えよう。これは『うさぎの満腹メーター』じゃ」

ちろ姫:「まんぷくメーター!」

てち王:「うむ。このメーターが70%や80%といった高い位置にある時、それは『もうニンジンでお腹いっぱいだよ!』といううさぎが多いサイン。つまり、市場で株が『買われすぎ』ている状態を示唆しておる。お腹がいっぱいなら、これ以上ニンジンを食べたいとは思わぬじゃろう? だから、そろそろ価格が下がるかもしれない、という警戒信号になる」

ちろ姫:「なるほどー! お腹いっぱいの時は、もう買わないのね!」

てち王:「その通り。逆に、メーターが30%や20%といった低い位置にある時、それは『お腹ぺこぺこだ!もっとニンジンが欲しい!』といううさぎが多いサイン。つまり、株が『売られすぎ』ている状態じゃ。お腹が空いていれば、これからたくさん食べたくなる。だから、そろそろ価格が上がるかもしれない、という反転のサインになるのじゃ」

ちろ姫:「わかったわ! まんぷくメーターが低い時に買って、高い時に売ればいいのね! これならあたちにもできるかも!」

てち王:「良い着眼点じゃ。相場の天井や底を見つけるのにとても役立つ指標じゃな」

未来を占う水晶玉「MACD」

てち王:「そして、最後はこちらの『MACD(マックディー)』じゃ。これは少しだけ複雑じゃが、『移動平均線を発展させたもの』と考えておけばよい。『トレンドの強さと、転換のタイミング』を、移動平均線よりも早く教えてくれることがある、便利な道具じゃ」

ちろ姫:「天気予報みたいなもの?」

てち王:「おお、素晴らしい例えじゃ! まさにその通り。MACDを使うことで、未来の天気を少しだけ早く知ることができるかもしれん。ここでも、二本の線が交差する『ゴールデンクロス』と『デッドクロス』が見られる。これが移動平均線のクロスよりも早く現れることが多いので、トレンドの転換をいち早く察知できる可能性があるのじゃ」

ちろ姫:「すごい! 未来がわかる水晶玉なのね!」

一番大事なこと〜王女の心得〜

一通りの説明を聞き終えたちろ姫は、目をキラキラと輝かせ、ぴょんと立ち上がりました。

ちろ姫:「てち兄様、あたちわかったわ! まず、まんぷくメーター(RSI)が30%以下になって、水晶玉(MACD)がゴールデンクロスして、虹の線(移動平均線)もゴールデンクロスしたら…! ふわふわ星のニンジンを全部使って株を買うの! そしたら、あたちは世界一のお金持ちプリンセスになれるのね!」

そのあまりにも純粋な結論に、てち王は思わず苦笑し、そして優しく、しかし真剣な眼差しでちろ姫の頭をそっと撫でました。

てち王:「ちろ姫、その意気込みは素晴らしい。だがな、一番大事なことを忘れてはおらぬか?」

ちろ姫:「え…?」

てち王:「今日教えたテクニカル分析は、あくまで『過去のうさぎ達が、どういう道を通って、どうやって跳ねてきたか』という足跡を分析しているに過ぎない。未来を100%約束するものではないのじゃ」

ちろ姫:「100%じゃないの…?」

てち王:「うむ。例えば、どんなにチャート上で完璧な買いサインが出ていたとしても、突然、地球で『ものすごく画期的なリンゴが開発されて、みんな株を売ってそのリンゴを買い始めた』というような、誰も予測できなかった大きなニュースが飛び込んできたとする。そうすれば、チャートの形は一瞬で崩れてしまうこともある」

てち王は、ちろ姫の長い耳を優しくつまみました。

てち王:「今日教えたテクニカル分析という片方の耳だけに頼るのではなく、その会社の業績や、経済全体のニュースといった『ファンダメンタルズ分析』という、もう片方の耳も使う。両方の耳で、市場の声をしっかりと聞くこと。それが、資産を守り、育てるための、そしてこの星を守る王女たる者の心得じゃ。わかるかな?」

ちろ姫は、少し難しい顔をしながらも、兄の真剣な言葉を一生懸命に理解しようとしました。そして、こっくりと頷きます。

ちろ姫:「うん…。片方の耳だけじゃなくて、両方の耳で聞くのね…。わかったわ、てち兄様! もっとお勉強する!」

てち王:「うむ、それでこそ朕の妹じゃ。さあ、今日はよく頑張ったな。頭をたくさん使って疲れたじゃろう。褒美に、特大のリンゴをやろう」

ちろ姫:「わーい! りんご、りんご!」

こうして、ちろ姫の経済学の第一歩は幕を開けました。チャートの波を乗りこなし、立派な王女になるための道は、まだ始まったばかりです。でも、優しくて物知りな兄王がそばにいれば、きっと大丈夫でしょう。

あなたの投資の旅も、このうさぎ兄妹のように、楽しく、そして着実な一歩となりますように。


用語解説コーナー

本日の物語に出てきた金融用語を、簡単におさらいしましょう。

  • テクニカル分析
    過去の値動きをグラフ化した「チャート」を分析し、将来の値動きを予測する手法です。市場に参加している人々の心理状態がチャートに現れる、という考えに基づいています。
  • ローソク足(陽線・陰線・実体・ヒゲ)
    一定期間(日、週、月など)の値動きを一本の棒で表したもの。「実体」と呼ばれる四角い部分で始値と終値、「ヒゲ」と呼ばれる線で高値と安値を示します。始値より終値が高いものが「陽線」、低いものが「陰線」です。
  • 移動平均線 (Moving Average)
    一定期間の価格の終値の平均値を結んだ線のこと。相場の大きな流れ(トレンド)を把握するために使われます。短期線、中期線、長期線など、期間の違う複数の線を組み合わせて分析するのが一般的です。
  • ゴールデンクロス / デッドクロス
    短期の移動平均線が、長期の移動平均線を下から上に突き抜けることを「ゴールデンクロス」と呼び、強い買いサインとされます。逆に、上から下に突き抜けることを「デッドクロス」と呼び、強い売りサインとされます。
  • RSI (Relative Strength Index / 相対力指数)
    相場の「買われすぎ」か「売られすぎ」か、つまり過熱感を判断するための指標です。一般的に、70〜80%以上で買われすぎ、20〜30%以下で売られすぎと判断されます。
  • MACD (Moving Average Convergence Divergence / マックディー)
    移動平均線を応用した指標で、トレンドの転換点をより早く察知するために使われます。「MACD」と「シグナル」という2本の線の交差(ゴールデンクロス/デッドクロス)で売買のタイミングを計ります。
  • ファンダメンタルズ分析
    企業の財務状況や業績、経済全体の動向(金利、景気、政治など)を分析し、株価の将来性を予測する手法です。テクニカル分析が「チャート」を見るのに対し、ファンダメンタルズ分析は「企業や経済そのもの」を見ます。両方を組み合わせて使うことが理想的とされています。