ESG投資とは?初心者にもわかりやすく解説!未来を変える新しいお金の常識

ESG投資とは?初心者にもわかりやすく解説!未来を変える新しいお金の常識

宇宙のどこかにある、何もかもがふわふわした惑星、その名も「ふわふわ星」。この星では、王様もお城も、雲さえも、みんなふわふわしています。そして、この星で使われている通貨は、なんと「ニンジン」です。 今日も、ふわふわ星のお城では、なにやら楽しそうな声が聞こえてきます。


プリンセスの素朴なギモン

ちろ姫: 「いーちニンジン、にーニンジン、しゃーんニンジン…。うーん、あたちのおやつ用のニンジン、これっぽっちしかない…。」

ふわふわの絨毯の上で、小さな茶色いうさぎのプリンセス、ちろ姫がブスッとした顔でニンジンを数えています。彼女の右手だけが雪のように白いのは、プリンセスの証です。

てち王: 「どうしたんだい、ちろ姫。朕の可愛い妹が、そんなに眉間にシワを寄せて。自慢のふわふわが台無しだぞ?」

そこに現れたのは、白と茶色の毛が混ざった、威厳と優しさを兼ね備えた青年うさぎ。このふわふわ星を治める王、てち王です。歳の離れた妹であるちろ姫のことを、彼はいつも気にかけています。

ちろ姫: 「てち兄様!あのね、あたちのニンジン、これだけなの!これじゃあ干草とりんごをちょっと食べたら無くなっちゃう!もっといっぱい欲しい!」

ぴょんぴょんと飛び跳ねながら、ちろ姫は頬を膨らませます。その様子を見て、てち王は優しく微笑みました。

てち王: 「ふむ。ニンジンは確かに大切だ。だがな、ちろ姫。ただ数を増やすことだけを考えるのは、少し早いかもしれない。その大切なニンジンを、未来のために『良く』使う方法があるとしたら、興味はあるかい?」

ちろ姫: 「未来のために良く使う?どういうこと?ニンジンは食べる以外に使い道があるの?美味しいの?」

キラキラした目で首をかしげるちろ姫に、てち王はゆっくりと頷きました。

てち王: 「ああ。とても大切で、そしてこれからの時代に欠かせない考え方だ。今日は少し難しいかもしれないが、『ESG投資』について話してあげよう。未来の王女になる君には、必ず知っておいてほしいことだからね。」

ちろ姫: 「いーえすじー…? なんだか必殺技みたいな名前!かっこいい!」

元気いっぱいのちろ姫は、まだその言葉の本当の意味を知りません。てち王は、そんな無邪気な妹の手を取り、ふわふわのソファに並んで座るのでした。


EとSとGってなんだろう?

てち王: 「さて、ちろ姫。まず『ESG(イー・エス・ジー)投資』というのは、3つの言葉の頭文字をとったものなんだ。」

ちろ姫: 「あたまもじ!あたちの場合は『ち』だね!」

てち王: 「はは、そうだね。ESGはそれぞれ、E (Environment) は『環境』S (Social) は『社会』、そして G (Governance) は『企業統治』を意味する。これら3つの観点を重視して、投資する会社を選ぶ方法のことを言うんだよ。」

ちろ姫: 「かんきょう、しゃかい、きぎょうとうち…? 全然わかんない!やっぱりニンジンをかじる方がいい!」

早速飽きてしまったのか、ちろ姫は近くにあった干草をもしゃもしゃと食べ始めました。てち王はやれやれという顔をしながらも、根気強く続けます。

てち王: 「こらこら、落ち着きなさい。一つずつ、地球…つまり、僕たちの星とは違う、人間たちが住む星の例で説明してあげよう。」

【E (Environment) – 環境】

てち王: 「まず『E』、環境だ。これは、地球の自然を大切にしている会社に投資しよう、という考え方だね。例えば、地球では今、『地球温暖化』といって、星全体の温度が上がってしまう問題が起きている。」

ちろ姫: 「あったかくなるの?じゃあ冬でもあったかくていいね!」

てち王: 「残念ながら、そう単純な話ではないんだ。異常な気候が増えたり、僕たちうさぎの仲間や他の生き物が住む場所がなくなったりする。だから、そうならないように頑張っている会社を応援するんだ。例えば、排気ガスを出さない『電気自動車』を作っているテスラという会社や、太陽の光や風の力で電気を作る『再生可能エネルギー』に力を入れている会社なんかがそうだね。」

ちろ姫: 「太陽の光!ふわふわ星はいつもぽかぽかだから、いっぱい電気作れそう!あたちが毎日ぴょんぴょん飛び跳ねるエネルギーも、再生可能?」

てち王: 「うーん、それは君の元気の源だから、また別の話かな。でも、そういう風に環境に良いことをしている会社は、将来、多くの人から応援されて、会社としても成長していく可能性が高い。だから、僕たち投資家も、そういう会社にニンジン(お金)を託すわけだ。」

【S (Social) – 社会】

てち王: 「次に『S』、社会だ。これは、人々や社会との関わり方を大切にしている会社に投資しよう、ということだ。」

ちろ姫: 「ひとびと?あたちも、ふわふわ星のみんなと仲良しだよ!みんなにあたちのおやつをあげる!」

てち王: 「その優しさは素晴らしいね、ちろ姫。会社における『S』は、例えば、そこで働く人たちが、とても働きやすい環境を整えているか、ということだ。人間たちの世界では、グーグルという会社のオフィスは、食事が無料で提供されたり、遊び心のある設備があったりして、従業員が創造性を発揮しやすいように工夫されていることで有名だよ。」

ちろ姫: 「ごはんが無料!?いいなー!あたちも毎日、ニンジンとリンゴと干草が食べ放題の職場で働きたい!」

てち王: 「ははは。君はまだ働かなくていいよ。他にも、商品を作る過程で、不当に安い賃金で人を働かせたり、危険な場所で子供を働かせたりしていないか、という人権への配慮も『S』に含まれる。例えば、ユニクロを展開するファーストリテイリングのようなアパレル企業は、サプライチェーン(製品が消費者に届くまでの一連の流れ)全体で人権問題が起きないように、厳しい基準を設けて監視しているんだ。」

ちろ姫: 「あたちが着ているこのリボンも、誰かが作ってくれたんだもんね。その人が笑顔じゃないと、あたちも悲しい…。」

てち王: 「その通りだ。働く人や、地域社会、顧客、みんなを大切にする会社は、結果として多くの人から信頼され、長く愛される会社になる。これも立派な投資の判断基準なんだ。」

【G (Governance) – 企業統治】

てち王: 「そして最後が『G』、ガバナンス…日本語では『企業統治』という。これは少し難しいかな。簡単に言うと、『会社が、ちゃんとしたルールに基づいて、透明性を持って正しく運営されているか』ということだ。」

ちろ姫: 「とうめいせい?ガラスみたいにスケスケってこと?」

てち王: 「いい例えだね。まあ、そんな感じだ。例えば、会社のトップが誰にも相談せず、自分勝手な判断ばかりしていたらどう思う?」

ちろ姫: 「やだ!てち兄様が相談なしに、あたちのイチゴを全部食べちゃったら、あたち怒る!」

てち王: 「だろう?会社も同じだ。経営陣が暴走しないように、社外の専門家がチェックする仕組み(社外取締役)があったり、株主(会社にお金を出している人たち)の意見をちゃんと聞いたりする体制が整っていることが大事なんだ。過去には、経営陣が不正な会計をして利益を水増ししていたことが発覚して、会社の信用が地に落ち、株価が大きく下がった東芝のような例もある。」

ちろ姫: 「嘘をついたらダメってことだね!あたち、正直者だもん!…ねぇ、てち兄様の経営は透明?非常食用のニンジンの隠し場所は、ちゃんとみんなに公開してる?」

てち王: 「うっ…そ、それは国家機密だ。…と、とにかく!不正をせず、誠実な経営をしている会社は、投資家から見ても安心できる。不祥事を起こすリスクが低いからね。これが『G』の観点だ。」

ちろ姫は少し分かったような、分からないような顔をしながらも、兄の話に真剣に耳を傾けていました。


良い会社って、本当に儲かるの?

ひと通り説明を終えたてち王が、お茶代わりにニンジンスムージーを一口飲んだとき、ちろ姫がポツリと呟きました。

ちろ姫: 「ねぇ、てち兄様。環境やみんなに優しいのは、すっごく良いことだと思う。でも…そういう会社って、本当にニンジンをいっぱい稼げるの?優しさだけじゃ、お腹はいっぱいにならないよ?」

それは、子供らしい素朴な疑問でありながら、ESG投資における最も本質的な問いでした。てち王は少し驚いた顔をしましたが、すぐに誇らしげな笑みを浮かべました。

てち王: 「ちろ姫、素晴らしい質問だ。さすが、未来の王女だな。それこそが、多くの投資家が考えることだ。結論から言うと、『長期的には、ESGを重視する会社の方が儲かる可能性が高い』と考えられているんだ。」

ちろ姫: 「長期的に?」

てち王: 「そうだ。考えてもごらん。例えば、環境汚染をしまくっているニンジン畑があったとする。最初はたくさんニンジンが採れるかもしれないが、いずれ土がダメになって、何も採れなくなるだろう?それに、『あの畑のニンジンは星を汚している』と評判が悪くなれば、誰も買ってくれなくなるかもしれない(レピュテーションリスク)。これは会社も同じだ。」

てち王は続けます。

てち王: 「気候変動に対応せず、古い技術に頼っている会社は、将来、厳しい環境規制ができたときに対応できず、大きな損害を被るかもしれない(移行リスク)。従業員を大切にしない会社からは、優秀な人材がどんどん辞めていって、新しいアイデアも生まれなくなるだろう。経営が不透明な会社は、いつ不祥事が発覚して、株価が暴落するかわからない。」

ちろ姫: 「なるほど…。目先のニンジンだけじゃなくて、未来のこともちゃんと考えている会社じゃないと、結局はダメになっちゃうってことか。」

てち王: 「その通りだ!ESG投資は、単なる慈善活動やボランティアじゃない。そういった未来の隠れたリスクを避け、持続的に成長できる企業を見つけ出すための、極めて合理的な投資手法なんだよ。世界中の巨大な年金基金や機関投資家がESGを重視しているのは、それがリターンに繋がると考えているからなんだ。」

ただし、とてち王は付け加えます。

てち王: 「もちろん、注意点もある。最近では、環境に配慮しているように見せかけて、実態はそうでもない『グリーンウォッシュ』と呼ばれる企業も出てきている。だから僕たち投資家は、その会社が本当にESGに取り組んでいるのか、見極める目を持つ必要があるんだ。これは、君が熟して甘いリンゴを見分けるのと同じくらい、重要なスキルだよ。」

ちろ姫は、自分のリンゴ選びの腕前を褒められた気がして、少し得意げに胸を張りました。


未来への“投票”

ちろ姫: 「そっかぁ…。『ESG投資』って、ただニンジンを増やすだけじゃなくて、私たちが暮らすこの星の未来を良くするためのものでもあるんだね!あたちが投資したニンジンで、地球がキレイになったり、みんなが笑顔で働けるようになったりするなら、なんだかすごく嬉しい!」

てち王: 「ああ、まさにその通りだ、ちろ姫。よく理解したな。」

てち王は満足そうに、ちろ姫のふわふわの頭を優しく撫でました。

てち王: 「僕たちが何かを買ったり、何かに投資したりするということは、その会社やその未来に対して『一票を投じる』ことと同じなんだ。だからこそ、どんな会社を応援したいか、どんな未来を作りたいかを考えて、大切なニンジンを使うべきなんだよ。それが、王族に生まれた僕たちの責任でもある。」

ちろ姫: 「うん!わかった!あたち、これからはニンジンを数えるだけじゃなくて、そのニンジンでどんな未来が買えるか、考えてみる!てち兄様、教えてくれてありがとう!」

満面の笑みでぴょんと立ち上がったちろ姫を見て、てち王は微笑ましく思いました。まだまだ子供だと思っていた妹が、また一つ、大きな成長を遂げた瞬間でした。

てち王: 「よし、よく頑張ったな。ご褒美に、とびきり甘いリンゴをやろう。」

ちろ姫: 「わーい!ありがとう、てち兄様!大好き!」

ふわふわ星のお城には、またいつものように、元気で楽しそうな声が響き渡るのでした。

お金は、ただの数字や道具ではありません。私たちがどんな未来を望むのかを映し出す鏡のようなもの。ちろ姫のように、自分のお金が社会や環境に与える影響について少し考えてみることが、より良い未来を作るための、大きな一歩になるのかもしれませんね。


まとめ&用語解説

今回のうさぎ兄妹の会話で出てきた「ESG投資」について、要点を整理しておきましょう。

  • ESG投資とは?
    • Environment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)の3つの要素を考慮して投資先を選ぶ投資手法のこと。
    • 財務情報(売上や利益など)だけでなく、これらの非財務情報を重視することで、企業の長期的な成長性や隠れたリスクを分析します。
  • なぜ注目されているの?
    • リスク回避: 気候変動や人権問題、不祥事など、長期的に企業価値を損なう可能性のあるリスクを避けやすい。
    • 新たな収益機会: 環境問題の解決や、より良い社会の実現に貢献する技術やサービスを持つ企業は、将来大きく成長する可能性がある。
    • 持続可能な社会への貢献: 自分の投資が、より良い社会や地球環境の実現に繋がるという実感を得られる。
  • 関連用語ピックアップ
    • SDGs(エスディージーズ): 「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略。2030年までに達成すべき17の国際目標のことで、貧困や不平等、気候変動など、世界が抱える問題を解決するための指針です。ESG投資は、このSDGsの達成に貢献する企業を応援する側面も持っています。
    • サステナビリティ: 「持続可能性」と訳されます。環境・社会・経済の3つの観点から、この世界を将来の世代に良好な状態で引き継いでいこうという考え方です。
    • グリーンウォッシュ: 「Green(環境に配慮した)」と「Whitewash(ごまかす、うわべを飾る)」を組み合わせた造語。環境に配慮しているように見せかけて、実態が伴っていない企業や商品を指します。投資家は、企業の報告書などをよく読み、本当に実態が伴っているかを見極める必要があります。
    • レピュテーションリスク: 企業の不正行為や不祥事、ネガティブな評判などによって、企業の信用やブランド価値が低下し、経営に悪影響が及ぶリスクのことです。

ESG投資は、もはや一部の意識の高い人だけのものではありません。私たちの年金を運用する巨大な基金(GPIFなど)も採用する、世界の投資のスタンダードになりつつあります。投資信託など、少額から始められる商品もたくさんあるので、興味を持った方はぜひ調べてみてくださいね。