【初心者向け】海外投資の税金は怖くない!二重課税と確定申告を徹底解説
宇宙のどこかにある、何もかもがふわふわな惑星「ふわふわ星」。この星の偉大なる王、てち王は、今日もお気に入りのイチゴを片手に、自慢のふわふわな玉座で優雅なティータイムを楽しんでおりました。その静寂を破るように、一匹のうさぎが猛スピードで駆け込んできます。
ちろ姫: 「お兄たまー! 大変でちょ! 大変でちょー!」
玉座の周りをぴょんぴょんと、というよりは、もはや瞬間移動に近い速度で跳ね回るのは、てち王の妹であり、ふわふわ星のプリンセス、ちろ姫です。その小さな右手(ここだけ白いのがチャームポイント)には、宇宙インターネット端末が固く握りしめられていました。
てち王: 「おぉ、ちろ姫か。そんなに慌ててどうしたのだ。朕のイチゴがそなたの起こす風で飛んでいってしまうではないか。落ち着くのだ、未来の女王たるもの、まずは深呼吸からだ。」
ちろ姫: 「ふんすー、ふんすー! でも、でも、これを見てほしいでちょ!」
ちろ姫が差し出した端末の画面には、それはそれは美しい食べ物の画像が映し出されていました。黄金色に輝くパイ生地、その中から顔をのぞかせる、艶やかで甘そうなりんごのコンポート。
ちろ姫: 「地球っていう星の『伝説のりんごパイ』でちょ! これ、絶対おいしい! あたち、これが食べたい! 今すぐ食べたいでちょ!」
てち王: 「ほう、確かに見事なパイだな。だがちろ姫よ、それは地球の食べ物だ。手に入れるには、我らがふわふわ星の通貨、『ニンジン』を地球の通貨に替えねばならんぞ。」
ちろ姫: 「そんなの簡単でちょ! あたちのニンジンをいーっぱいあげれば、交換してくれるでちょ!」
目をキラキラさせながら、自分の貯金箱(ニンジン型)を抱える仕草をするちろ姫。そんな無邪気な妹を見て、てち王は優しく、そして少し賢そうな笑みを浮かべました。
てち王: 「ふふふ、もちろんそれでも良い。だがな、ちろ姫。もっと良い方法がある。我々のニンジンを、ただ地球の通貨に替えるだけではない。その『伝説のりんごパイ』を作っている地球の会社に我々のニンジンを託し、仲間になってもらうことで、ニンジンそのものを増やし、将来はもっとたくさんのりんごパイを手に入れる…そんな方法があるとしたら、どうだ?」
ちろ姫: 「えっ!? あたちのニンジンで、もっとたくさんのりんごが手に入るんでちょか!? どういうことでちょ!?」
食い気味に尋ねるちろ姫に、てち王はゆっくりと頷きます。こうして、ふわふわ星の小さなプリンセスの、壮大なる経済学の第一歩が、一枚のりんごパイの写真から幕を開けたのでした。
海外投資の甘い蜜と、知っておくべき「大人のルール」
てち王: 「よいか、ちろ姫。地球、特にアメリカという国にはな、我らがふわふわ星にはないような、ものすごい勢いで成長している会社がたくさんあるのだ。そのりんごパイの会社もそうかもしれんな。そういった会社のオーナーの一員になること、これを『株式投資』と言う。そして、ふわふわ星の外の国に投資するから『海外投資』と呼ぶのだ。」
ちろ姫: 「かいがいとーし! なんだかカッコいい響きでちょ!」
てち王: 「うむ。世界中の人々が頑張って経済を成長させている。その力を借りて、我々の資産であるニンジンを増やすことができるのだ。これは、将来ふわふわ星を治めるそなたにとっても、非常に重要な知識となるだろう。」
ちろ姫: 「なるほどー! さすがはお兄たまでちょ! よーし、決めた! あたちが毎日食べてる干草をぜーんぶ売って、そのニンジンを全部地球のりんご農園に投資するでちょ! そうすれば、毎日りんごパイが食べられるようになるかもしれない!」
興奮のあまり、その場で嬉しそうにぴょんぴょんと跳ね始めるちろ姫。その姿は微笑ましいものの、てち王は威厳のある咳払いを一つ。
てち王: 「ま、待つのだちろ姫! 未来の女王たるもの、喜びの舞を踊る前に考えねばならぬことがある。そのりんご農園への投資がうまくいき、たくさんのニンジンが手に入ったとしよう。その時、我々には果たさねばならぬ『義務』が発生するのだ。」
ちろ姫: 「ぎむ? おやつの新しい名前でちょか?」
てち王: 「違う。それは『税金』という、大人のルールだ。」
ちろ姫の動きがピタッと止まりました。聞いたことのない言葉に、彼女の耳がぴこんと動きます。
てち王: 「税金、つまり『ぜいきん』とはな、投資で得た利益の中から、決められた一部を国に納めることだ。ふわふわ星でも、農家が収穫したたくさんのニンジンの中から、一部を我々王家に納めてくれるだろう? それと同じだ。国を運営し、皆が安心して暮らせるようにするために、利益を得たものが少しずつお金を出し合う。それが税金なのだ。」
ちろ姫: 「えー! せっかく増えたニンジン、取られちゃうんでちょか…?」
さっきまでの興奮が嘘のように、ちろ姫の肩ががっくりと落ちました。海外投資の甘い魅力のすぐそばに、少しだけ苦い、しかし避けては通れないルールの存在を初めて知った瞬間でした。
地球とふわふわ星、二つの星をまたぐ税金の冒険
しょんぼりする妹を見て、てち王は話を続けます。ここからが、本日の本題。海外投資ならではの、少しだけ複雑で、しかし知っておけば全く怖くない税金の話です。
てち王: 「ちろ姫、がっかりするのはまだ早い。ルールを知れば、賢く付き合うことができる。まず、海外投資で考えねばならん税金は、大きく分けて3つのポイントがあるのだ。」
ポイント1:為替差益(かわせさえき)の税金
ちろ姫: 「かわせ…? 川がどうしたでちょ?」
てち王: 「うむ、言葉が難しいな。ではこう考えよう。今日、我らがふわふわ星のニンジン1本が、地球のアメリカという国の通貨、1ドルと交換できるとしよう。そなたは伝説のりんごパイを買うために、100本のニンジンを100ドルに交換した。」
ちろ姫: 「うんうん。」
てち王: 「しかし、そなたはすぐにはパイを買わず、しばらく様子を見ることにした。その間に、ふわふわ星のニンジンが大豊作になり、宇宙中から引っ張りだこになった。するとどうだ、今度はニンジン1本が2ドルと交換できるようになったのだ。ニンジンの価値が上がったわけだな。」
ちろ姫: 「おおー! ニンジン、すごいでちょ!」
てち王: 「そこで、そなたは持っていた100ドルを、再びニンジンに戻すことにした。以前は100本で100ドルだったが、今は1本で2ドルと交換できるから、100ドルはニンジン50本にしかならない。これは損だな。逆に、地球の経済がすごく元気になって、ニンジン2本でようやく1ドルと交換できるようになったらどうだ? 持っていた100ドルをニンジンに戻すと、200本のニンジンになる。100本も増えたことになるな。」
ちろ姫: 「わー! 何もしてないのにニンジンが増えたでちょ!」
てち王: 「その通り! このように、通貨を交換するタイミングによって生まれる利益を『為替差益』と言う。そして、この為替差益にも、税金がかかるのだ。これは意外と見落としがちなポイントだから、覚えておくのだぞ。」
ポイント2:二重課税(にじゅうかぜい)と外国税額控除(がいこくぜいがくこうじょ)
てち王: 「さて、本題のりんご農園の株の話に戻ろう。そなたが投資したりんご農園が、見事にたくさんの利益を上げたとしよう。そして、オーナーの一員であるそなたに、『配当金』という形でお礼のニンジン(利益の分配)をくれることになった。」
ちろ姫: 「やったー! りんごのおすそ分けでちょ!」
てち王: 「しかしここが問題だ。まず、りんご農園がある地球の国が、『お、利益が出たな。ではまず我々に税金を納めてもらうぞ』と言って、配当金から税金を取る。例えば10%取られたとしよう。」
ちろ姫: 「むむ…仕方ないでちょ。」
てち王: 「そして、その税金を引かれた後のお金が、ふわふわ星にいるそなたの元に届く。すると今度は、ふわふわ星が『おぉ、地球で儲けたのだな。では我が星のルールに従って、こちらにも税金を納めてもらうぞ』と言ってくるのだ。」
ちろ姫: 「えええええ!? ひどいでちょ! 地球でも取られて、ふわふわ星でも取られるなんて! それじゃあ、手元に残るニンジンがすごく少なくなっちゃうじゃないでちょか!」
怒りのあまり、ちろ姫の茶色い体がわなわなと震えています。その気持ちは、地球の投資家たちも全く同じです。
てち王: 「その通りだ。それでは誰も海外に投資しなくなってしまうな。そこで、この『二重課税』という状態を調整するための、素晴らしい仕組みがある。それが『外国税額控除』だ。」
ちろ姫: 「がいこくぜいがく…こうじょ?」
てち王: 「うむ。簡単に言えば、『地球で先に払った税金分は、ふわふわ星で納める税金から差し引いてあげましょう』という制度だ。これにより、二重に税金を取られる不利益をなくすことができるのだ。」
ちろ姫: 「ほっ…よかったでちょ。それなら安心でちょ!」
てち王: 「だがな、ちろ姫。この素晴らしい制度の恩恵を受けるためには、一つ、自分でやらねばならぬ手続きがある。それが『確定申告』というものなのだ。」
ポイント3:確定申告(かくていしんこく)が必要なケース・不要なケース
ちろ姫: 「かくていしんこく…? 今日の話、なんだか難しい言葉ばっかりでちょ…。あたち、眠くなってきた…。」
そう言うと、ちろ姫は急に落ち着きなくぴょんぴょんと跳ね始めました。難しい話を聞くと眠くなってしまうのは、プリンセスの悪い癖です。
てち王: 「こら、ちろ姫! ここが一番大事なところだぞ! ……まぁ良い。安心するがよい。未来の女王が、頭から煙を出す必要はない。なぜなら、我々うさぎ投資家を助けてくれる、非常に便利な仕組みが地球にはあるのだからな。」
その言葉に、ちろ姫の耳が再びぴこんと立ちました。
てち王: 「地球との取引を仲介してくれる『証券会社』というお店で口座を作るとき、『特定口座(源泉徴収あり)』というものを選ぶことができる。これは、いわば『税金おまかせコース』だ。」
ちろ姫: 「おまかせコース!」
てち王: 「そうだ。このコースを選んでおけば、そなたがりんご農園の株で利益を得たり、配当金をもらったりした時に、証券会社が自動で税金を計算して、そなたの代わりに国に納めてくれるのだ。これを『源泉徴収』と言う。この口座を使っている限り、原則として、そなたが自分で面倒な確定申告をする必要はなくなる。」
ちろ姫: 「なーんだ! それならすっごく簡単でちょ! あたちは、ただりんごパイのことを考えていればいいんでちょね!」
すっかり安心したちろ姫は、再びりんごパイのことで頭がいっぱいのようです。てち王は優しく頷きつつも、王として、そして兄として、大切な補足を加えるのを忘れません。
てち王: 「うむ。ほとんどの場合はそれで問題ない。だが、先ほど話した『外国税額控除』を使って、地球で払った税金を取り戻したい場合はどうだ? この制度は、自動では適用されない。自分で『確定申告』をして、『地球でこれだけ税金を払ったので、ふわふわ星の税金を少し減らしてください』と申請する必要があるのだ。」
ちろ姫: 「えっ、じゃあ、おまかせコースにすると、外国税額控除は使えないでちょか?」
てち王: 「いや、使えるぞ。『特定口座(源泉徴収あり)』を選んでいても、自分で確定申告をすれば、外国税額控除は使える。つまり、『基本はおまかせで楽をする。でも、もっと有利にしたいなら、ひと手間かけて確定申告をする』という選択ができるのだ。他にも、複数の証券会社で取引していて、片方で利益、もう片方で損失が出た時に、それらを合算して税金を安くする『損益通算』をしたい場合なども、確定申告が必要になる。だから、仕組みだけでも知っておくことは、王族の嗜み(たしなみ)なのだ。」
ちろ姫: 「なるほど…。奥が深いでちょ…。」
てち王: 「そしてな、ちろ姫。今の地球の日本という国には、もっとすごい仕組みがある。『NISA』という、キラキラ輝く魔法の箱のような制度だ。」
ちろ姫: 「魔法の箱!」
てち王: 「そうだ。このNISAという箱の中で得た利益(配当金や売却益)には、なんと、ふわふわ星でかかるはずの税金(日本では約20%)が一切かからないのだ。ただし、地球の国で取られる税金(米国株の配当金なら10%)は取られてしまうがな。それでも、非常に有利な制度だ。投資初心者は、まずこの魔法の箱から始めてみるのが、最も賢い選択と言えるだろう。」
知識はニンジン畑を守る最高の柵
てち王の丁寧な説明に、ちろ姫はすっかり感心した様子です。最初はただ「りんごパイが食べたい」だけだった小さなプリンセスの頭の中に、「海外投資」と「税金」という、新しい世界の地図がゆっくりと広がり始めていました。
ちろ姫: 「お兄たま、ありがとうでちょ。海外投資って、ただニンジンが増えるか減るかだけじゃなくて、税金っていうルールをちゃんと知らないといけない、とっても奥深い世界なんでちょね。あたち、ちょっとだけ大人になった気分でちょ!」
ちろ姫は、そう言って精一杯背伸びをしてみせました。その健気な姿に、てち王は満足そうに微笑みます。
てち王: 「うむ。その通りだ、ちろ姫。知識は、我々の大切なニンジン畑を守る、最高の柵(さく)になる。税金は決して我々の敵ではない。ルールを正しく理解し、賢く付き合うべきパートナーなのだ。」
玉座から立ち上がったてち王は、ちろ姫の頭を優しく撫でました。
てち王: 「税金が怖いからと、何もしなければ、伝説のりんごパイは永遠に食べられないままだ。まずは少額から、そして今日話した『特定口座(源泉徴収あり)』や『NISA』といった初心者に優しい仕組みを使いながら、第一歩を踏み出してみるのが良いだろう。分からなくなったら、いつでもこの朕に聞くがよい。そなたの初めての冒険、兄としていつでも力を貸そう。」
その言葉に、ちろ姫の目は再びキラキラと輝きを取り戻しました。
ちろ姫: 「うん! お兄たま! あたち、やってみるでちょ! まずは伝説のりんごパイのために、おやつの干草を我慢して貯めた10ニンジンから、始めてみるでちょ!」
高らかに宣言するちろ姫。その顔は、もはやただのお姫様ではありません。自らの資産と未来を切り拓こうとする、小さな投資家の顔つきになっていました。
ふわふわ星の未来の女王と、それを導く賢王。二匹のうさぎの資産形成ものがたりは、今、始まったばかりです。

いかがでしたでしょうか。てち王とちろ姫の会話を通して、海外投資と税金の関係が少しでも身近に感じられたなら幸いです。最後に、今日の物語に出てきた重要な用語を簡単におさらいしておきましょう。
【用語解説コーナー】
- 海外投資: 自分の国以外の国(例えばアメリカやヨーロッパ、全世界など)の株式や債券などに投資をすること。高い成長性が期待できる一方、為替変動のリスクや、税金が少し複雑になる点に注意が必要です。
- 為替差益(かわせさえき): 外国の通貨を売買する際に生じる利益のこと。例えば、1ドルが100円の時にドルを買い、円安が進んで1ドルが120円になった時に円に戻すと、20円の利益が出ます。この利益も課税対象となります。
- 二重課税(にじゅうかぜい): 外国で得た利益(特に配当金など)に対して、まずその国で課税され、さらに日本に持ち帰ってきた際に日本でも課税される状態のこと。
- 外国税額控除(がいこくぜいがくこうじょ): 上記の二重課税を調整するための制度。外国で支払った税額を、日本で納める所得税や住民税から一定の範囲で差し引くことができます。これを利用するには確定申告が必要です。
- 確定申告(かくていしんこく): 1年間の所得とそれに対する税金を計算し、税務署に報告・納税する手続きのこと。通常、会社員は年末調整で完了しますが、外国税額控除を使いたい場合や、年間の給与以外の所得が20万円を超える場合などに必要となります。
- 特定口座(源泉徴収あり): 証券会社の口座の一種。これを選ぶと、株や投資信託で利益が出るたびに、証券会社が自動で税金を計算し、納税まで済ませてくれます。投資初心者にとって、確定申告の手間を大幅に省ける非常に便利な口座です。
- NISA(新NISA): 少額投資非課税制度。年間で決められた金額までの投資で得られた利益(配当金・分配金・譲渡益)が非課税になる制度です。2024年から新NISAが始まり、非課税で保有できる上限額が大幅に拡大されました。海外投資をする上でも、この制度を最大限活用するのがおすすめです。
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