【知らないと損】老後資金の税金対策ガイド|iDeCo・NISAの節税から退職金・年金の賢い受け取り方まで

【知らないと損】老後資金の税金対策ガイド|iDeCo・NISAの節税から退職金・年金の賢い受け取り方まで

宇宙のどこかにある、何もかもがふわっふわな惑星、その名も「ふわふわ星」。 この星では、王様も、お城も、そこに住むうさぎ達も、みんなフワフワしています。そして、この星で使われている通貨は、なんと「ニンジン」なのです。

今日も、ふわふわ星のお城の庭では、何やら楽しげな声が聞こえてきます。 この星を治める若き王「てち王」と、その妹である元気いっぱいのプリンセス「ちろ姫」の兄妹です。将来、立派な王女になるため、ちろ姫は博識な兄から、日々帝王学を学んでいるのでした。

今日のテーマは、少し難しい「お金」と「税金」のお話のようです。


将来のニンジンと、避けられない「ニンジン税」

ちろ姫 「いーちニンジン、にーニンジン、しゃーんニンジン…。うーん、たくさん!あたちが大人になったら、このニンジンぜーんぶおやつにするんだ!」

お城の宝物庫にある、将来のためのニンジンを数えていたちろ姫。しかし、三つ数えたところでもう飽きてしまい、その場でぴょんぴょんと飛び跳ね始めました。その様子を、てち王が優しいながらも、少しだけ呆れたような目で見つめています。

てち王 「ちろ姫よ。お前がぴょんぴょん跳ねている間に、その大切なニンジンが将来目減りしてしまうかもしれん、と考えたことはあるか?」

ちろ姫 「めべり?なぁにそれ?ニンジンは、あたちが食べなきゃ減らないもん!」

てち王 「ふむ…まだ子供だと思っていたが、やはり一から教える必要がありそうだな。よいか、ちろ姫。我々が豊かに暮らしていくためには、働いてニンジンを得るだけでなく、そのニンジンを『守り』、そして『育てる』知恵が必要なのだ。そして、その最大の障壁となるのが…『税』、この星で言うところの『ニンジン税』だ」

ちろ姫 「ニンジンぜー!?やだ!あたちのニンジン、誰にもあげないもん!税金なんて、取られるだけなんでしょ!ぷんすか!」

「税金」という言葉を聞いた途端、ちろ姫は耳をピンと逆立てて怒ってしまいました。自分のおやつが取られてしまうと思ったのでしょう。そんな妹を見て、てち王は静かに微笑みました。

てち王 「ふふ、そう怒るな。確かに税は納めるものだが、仕組みを正しく理解すれば、ただ取られるだけの敵ではない。むしろ、将来のお前を助けてくれる、心強い味方にもなるのだ。今日は、ちろ姫が大人になった時に困らぬよう、来るべき『老後』の資金と、このニンジン税の賢い付き合い方を教えよう。」


味方につける税の知識①「入口」でニンジンを増やす魔法

てち王 「よいか、ちろ姫。老後のためのニンジンを準備する方法は、大きく分けて『入口』と『出口』で考えるのが肝要だ。『入口』とは、今からニンジンを貯めていく段階のこと。そして『出口』とは、貯めたニンジンを受け取る段階のことだ。まずは『入口』で使える、強力な魔法を二つ教えてやろう」

ちろ姫 「まほう!?」

魔法という言葉に、ちろ姫の目はキラキラと輝きました。単純ですが、そこが彼女の可愛いところです。

魔法その1:未来の自分のためのニンジン畑「iDeCo(イデコ)」

てち王 「一つ目の魔法の名は『iDeCo(イデコ)』という」

ちろ姫 「イデコ?なんだか、新発売のイチゴ味のお菓子の名前みたい!おいちいの?」

てち王 「…食べるものではない。iDeCoはな、『個人型確定拠出年金』といって、未来の自分のために、自分でニンジンを積み立てていく制度だ。そして、これには国が用意してくれた、三つの大きな税の優遇措置がある」

ちろ姫 「ゆーぐーそち?」

てち王 「うむ。分かりやすく言えば、『税金がお得になる特典』が三つもある、ということだ。ニンジン畑で例えてやろう」

  1. 植える時(掛金)の特典: iDeCoという特別な畑に植えたニンジン(掛金)の分だけ、その年に納めるべきニンジン税が安くなるのだ。(掛金の全額所得控除
  2. 育つ時(運用)の特典: 普通、畑でニンジンが育って増えた分(運用益)には税金がかかる。だが、このiDeCo畑で増えたニンジンには、一切税金がかからない。(運用益が非課税
  3. 収穫する時(受取)の特典: 将来、畑からニンジンを収穫する時も、税金がとても優しくなる仕組みがある。(退職所得控除・公的年金等控除)これは後で詳しく話そう。

ちろ姫 「ふーん…。でも、いちばん最初の『しょとくこーじょ』ってのが、よくわかんない!」 ぴょんぴょん! 「むずかしいから、あっちで干し草食べてていい?」

てち王 「こら、座りなさい。王女たるもの、落ち着きを…まあよい。では、こう考えてみろ。例えば、ちろ姫が王女の仕事をして、1年間に1,000ニンジンの給料をもらったとする。普通なら、この1,000ニンジンに対してニンジン税がかかる。仮に税率が10%なら、100ニンジンを税として納めねばならん」

ちろ姫 「100ニンジンも!?そんなに取られたら、りんごが買えないじゃない!」

てち王 「そこでiDeCoだ。もし、ちろ姫が年間120ニンジンをiDeCoで積み立てたとしよう。すると国は、『ちろ姫は将来のために頑張っているな。では、税金の計算をする元々の給料を、120ニンジン分少なかったことにしてあげよう』と考えてくれるのだ。つまり、1,000ニンジンではなく、880ニンジン(1,000 – 120)に対して税金がかかるようになる。880ニンジンの10%は88ニンジン。つまり、納める税金が12ニンジンも少なくて済む。この12ニンジンで、また新しいおやつが買えるというわけだ」

ちろ姫 「なるほど!未来の自分のためにお金を貯めてるだけなのに、今払う税金も安くなるなんて、すっごーい!イデコ、やる!」

てち王 「うむ。ただし、iDeCoはあくまで『老後』の資産を作るための制度。原則として60歳になるまで、そのニンジンを引き出すことはできん。途中で『やっぱり、あの新しいドレスが欲しいから…』などというつまらぬ理由でニンジンを取り崩すことは許されんのだ。ちろ姫のような誘惑に弱いうさぎには、むしろその強制力がメリットになるやもしれんな」

魔法その2:自由なニンジン栽培プランター「NISA(ニーサ)」

ちろ姫 「60歳までニンジンが食べられないのは、ちょっとさみちい…。もっと気軽にできる魔法はないの、てち兄様(にいさま)?」

てち王 「ふふ、よくぞ申した。兄様(にいさま)…ではなく、『NISA(ニーサ)』という、もう一つの強力な魔法があるぞ」

ちろ姫 「にいさま!やっぱり、てち兄様のことじゃない!」

てち王 (やれやれ…) 「NISAはな、国が用意してくれた『税金がかからない特別なプランター』のようなものだ。このプランターの中でニンジンを育てれば(投資をすれば)、どれだけニンジンが増えても(利益が出ても)、一切ニンジン税がかからないのだ」

ちろ姫 「イデコと何が違うの?」

てち王 「良い質問だ。一番大きな違いは、先ほど言った『掛金の所得控除』がNISAにはないことだ。つまり、NISAで積み立てをしても、今払う税金が安くなるわけではない。だがその代わり、NISAにはiDeCoにはない絶大なメリットがある。それは、プランターの中のニンジンがいつでも引き出せることだ」

てち王は続けます。

てち王 「例えば、将来お前が家を建てたくなったり、子供の教育でニンジンが必要になったり、不測の事態が起きたりした時に、NISAで育てたニンジンは自由に使うことができる。iDeCoが『老後資金専用』の、固く閉ざされた宝箱だとすれば、NISAは『様々な目的に使える』、鍵のかかっていない貯金箱のようなものだ。そして、2024年から始まった新しいNISAでは、このプランターがとても大きくなり、一生涯にわたって税金がかからない恩恵を受けられるようになった。これは革命的なことなのだ」

ちろ姫 「いつでも引き出せるなら、あたちはNISAがいい!だって、干し草が食べたくなったら、すぐにニンジンが欲しいもん!」

てち王 「うむ。それぞれの制度に良い点がある。だからこそ、多くの賢者は、まずNISAを最大限活用し、さらに余裕があればiDeCoも併用して、鉄壁の守りを築くのだ。『入口』で税の恩恵を受けながら、将来のためのニンジンを育てていく。これが老後資金作りの第一歩だ」


味方につける税の知識②「出口」でニンジンを死守する盾

ちろ姫 「そっかー!NISAとiDeCoで、いっぱいニンジンを増やせばいいんだね!これで安心!」

すっかり分かった気になったちろ姫が、またぴょんぴょんと跳ねようとした、その時でした。

ちろ姫 「…ん?でも待って?てち兄様。いっぱい増やしても、最後にそのニンジンをもらう時、ごそーっ!と税金を取られたら、結局意味ないんじゃないの?たくさん育てたニンジン畑から、半分くらい国に持っていかれちゃったら、あたち、悲しくて三日三晩眠れない…」

てち王 「!!!!」

てち王は目を見開きました。いつもはおやつと遊びのことしか考えていないと思っていた妹が、核心を突く質問をしたからです。これこそが、老後資金における最大のテーマ、「出口戦略」でした。

てち王 「…ちろ姫。お前、いつの間にそんなに賢くなったのだ。朕は、朕は嬉しいぞ…!その通りだ。いくら入口でニンジンを増やしても、出口でごっそり取られては意味がない。だが安心しろ。国もそこまで鬼ではない。長年頑張って働いてきた者、将来のためにコツコツ備えてきた者には、ちゃんと敬意を払ってくれる。そのための、二つの強力な『盾』があるのだ」

盾その1:長年の功労に報いる「退職所得控除」

てち王 「一つ目の盾は『退職所得控除』だ。これは、朕が王様を引退する時や、民が会社を辞める時にもらう『退職ニンジン(退職金)』にかかる税金を、大幅に軽くしてくれる、まさに黄金の盾だ」

ちろ姫 「たいしょくしょとくこーじょ?また長くて覚えられない名前…」

てち王 「名前は覚えなくてよい。効果を理解するのだ。この盾の強さは、『働いた年数』が長ければ長いほど、どんどん強力になるという特徴がある」

てち王は、ふわふわの雲に数式を書いて説明を始めました。

てち王 「例えば、うさぎ年で20年間、王室に仕えてくれたうさぎが退職ニンジンをもらうとしよう。その場合、『800万ニンジン』までは、なんと税金が一切かからない計算になるのだ。(※勤続20年以下:40万円×勤続年数、20年超:800万円+70万円×(勤続年数-20年)) もし30年間仕えてくれたなら、その額は『1,500万ニンジン』にまで跳ね上がる。そして、もらった退職ニンジンがその金額を超えたとしても、さらにその超えた分の半分にしか税金がかからない。これは、他の所得に比べて、驚くほど優遇されているのだ」

ちろ姫 「へぇー!長く頑張れば頑張るほど、国が『お疲れ様』って言って、税金をサービスしてくれるんだね!」

てち王 「その通りだ。そして、先ほど話したiDeCoを60歳以降に一括で受け取る場合も、この『退職所得控除』が使えるのだ。iDeCoの掛金を払っていた年数を『勤続年数』とみなしてくれる。だから、iDeCoは入口だけでなく、出口でも非常に強力な節税効果を発揮する」

盾その2:穏やかな老後のための「公的年金等控除」

ちろ姫 「じゃあ、毎日コツコツもらうおやつのニンジン…じゃなくて、年金はどうなるの?それにも税金がかかるの?」

てち王 「うむ。国からもらう『公的年金』や、iDeCoを分割で受け取る場合も、税金の対象にはなる。だが、ここにも『公的年金等控除』という、もう一つの立派な盾が用意されている」

てち王は、ちろ姫の好きなりんごを一つ差し出しながら言いました。

てち王 「この盾は、年金で暮らす者の負担が重くなりすぎないように、という国の配慮だ。年齢や年金額によって控除額は変わるが、例えば65歳以上であれば、最低でも年間110万ニンジンまでは、税金がかからない計算になる。他の所得(給料など)がなければ、の話だがな。これにより、多くの者は年金生活になっても、過度な税負担を負わずに済むのだ」

ちろ姫 「そっかぁ。もらい方によって、使える盾が変わってくるんだね。一括でもらうか、分割でもらうか…ニンジンを一番たくさん手元に残せる方法を、ちゃんと考えなきゃいけないんだ!」

てち王 「その通りだ、ちろ姫!まさにそれが『出口戦略』だ。自分の資産状況、働き方、そして何より『どのような老後を送りたいか』によって、最適な受け取り方は変わってくる。税金の仕組みを知ることは、自分の未来の選択肢を広げることなのだ」


未来のニンジンを守る、一番大切なこと

難しい税金の話を最後まで聞き終えたちろ姫。いつもならとっくに飽きて、庭のクローバーを摘みに行っている時間です。しかし今日のちろ姫は、真剣な眼差しで、兄であるてち王を見つめていました。

ちろ姫 「あたち、むずかしいけど、ちょっとだけ分かった気がする…。税金って、ただ取られるだけの、いじわるなものだと思ってた。でも、ちゃんと知れば、あたちのニンジンを守ってくれる味方にもなるんだね。あたち、ちゃんとお勉強して、自分のニンジンは、自分でしっかり守る!立派な王女になるために!」

てち王 「…うむ。その意気だ、ちろ姫」

てち王は、妹の成長した姿に目を細め、そのふわふわの頭を優しく撫でました。

てち王 「王女たるもの、民の暮らしと幸せを守る義務がある。そのためには、まず自らの資産を守り、豊かにする知恵を身につけねばならん。今日の勉強は、その偉大な一歩だ。さあ、よく頑張ったな。褒美に、とっておきのイチゴをやろう」

ニンジンやお金をただ貯めるだけでは、インフレや税金によって、その価値は時間と共に目減りしてしまう可能性があります。しかし、iDeCoやNISAのような制度を賢く利用して「育て」、退職所得控除や公的年金等控除の知識を持って「守る」

この「入口」と「出口」の税金の知識こそが、あなたの未来を、そして大切な老後資金を守る、最強の武器となるのです。 さあ、あなたも今日から、ご自身のニンジンを守るための第一歩を、踏み出してみませんか?


用語解説

  • iDeCo(個人型確定拠出年金)
    • 自分で掛金を拠出し、自分で運用方法を選んで老後資金を準備する私的年金制度。掛金が全額所得控除、運用益が非課税、受取時にも控除があるという、3段階の強力な税制優遇が特徴。原則60歳まで引き出せないため、着実な老後資金準備に向いている。
  • NISA(少額投資非課税制度)
    • 個人投資家のための税制優遇制度。2024年から新NISAとなり、非課税で投資できる上限額が大幅に拡大され、制度も恒久化された。NISA口座内で得られた利益(配当金、分配金、譲渡益)が非課税になる。iDeCoと違い、いつでも引き出しが可能で、使途も自由なため、汎用性が高い。
  • 所得控除
    • 税金を計算する元となる「所得」から、一定の金額を差し引くこと。所得が低くなるため、結果的に納める税金が安くなる。iDeCoの掛金は、この所得控除の対象となる。
  • 退職所得控除
    • 退職金などにかかる税金を計算する際に、所得から差し引くことができる大きな控除枠。「長年の勤労に報いる」という趣旨のため、他の所得控除に比べて非常に優遇されている。勤続年数が長いほど控除額が大きくなる。
  • 公的年金等控除
    • 公的年金(国民年金・厚生年金)や、iDeCoを年金形式で受け取る際などに適用される所得控除。高齢者の税負担を軽減するための制度。