確定申告と年末調整の違いとは?【初心者向け】会社員でも損しない節税方法をわかりやすく解説
ここは、宇宙のどこかにある、何もかもが“ふわふわ”な惑星、その名も「ふわふわ星」。この星を治めるのは、白と茶色の毛が混じった、それはそれは立派なうさぎの王様「てち王」。そして、その傍らには、元気いっぱい、好奇心旺盛な妹君、「ちろ姫」がいました。今日もふわふわ城では、未来の女王様になるための、優しくもちょっぴり難しいお勉強が始まろうとしています。
(ぴょんぴょん、ぴょんぴょん!)
ちろ姫は、ふわふわの雲でできた廊下を、楽しそうに跳ね回っていました。大好きな干草のおやつを食べた後で、ご機嫌です。すると向こうから、何やら難しい顔をした兵士うさぎさんたちが、書類の束を抱えてやってくるのが見えました。
兵士うさぎA: 「はぁ…今年もこの季節がやってきたぴょん…『年末調整』…」
兵士うさぎB: 「私の扶養家族は…っと。生命保険の証明書はどこにしまったかな…。毎年思うけど、本当にめんどくさいぴょん…」
ちろ姫: 「ねんまつ…ちょーせー?」
聞き慣れない言葉に、ちろ姫の長いお耳がぴくっと動きます。兵士さんたちが溜息をつきながら通り過ぎるのを見送ると、ちろ姫は急いで大好きなお兄様のもとへ駆け出しました。
(だだだだっ!ばたーん!)
ちろ姫: 「兄様! 大変なの! へーしさんたちが、何だか難しそうなお顔で、へんてこなおまじないを唱えてたの!」
執務室でふわふわ星の未来について思案していたてち王は、息を切らして飛び込んできた妹に、優しく目を細めました。
てち王: 「おぉ、ちろ姫。そんなに慌ててどうしたのじゃ。またおやつの干草をつまみ食いしたのがバレたか?」
ちろ姫: 「ち、違うもん! あたちが聞いたのは『ねんまつちょーせー』っていうおまじない! みんな、ニンジンが取られちゃうみたいに、困ったお顔をしてたの。あれは一体なあに?」
てち王は、ちろ姫の素朴な疑問ににっこりと微笑むと、優しく手招きしました。
てち王: 「ふふ、ちろ姫。それはおまじないではないぞ。我がふわふわ星の国民…いや、地球で暮らす人々にとっても、非常に大切な『税金』にまつわる言葉なのじゃ。良い機会だ。今日は朕が、その『年末調整』と、もう一つ『確定申告』というものについて、ちろ姫に教えてやろう。これは、立派な王女になるための、大切なお勉強じゃぞ」
ちろ姫はこくりと頷き、てち王のふわふわな膝の上にちょこんと座りました。こうして、ふわふわ星の、ニンジンを巡る税金講座が始まったのです。
年末調整とは? – お城が代わりにやってくれる“おまかせ”ニンジン計算
てち王: 「まず、『年末調整』から話そうかの。これは、ちろ姫が見た兵士たちのように、このお城(会社)に勤めておる者たちに関係の深い話じゃ」
ちろ姫: 「へーしさんたち、みんな関係あるの?」
てち王: 「うむ。よいか、兵士たちはお城のために働く代わりに、朕から毎月お給料としてニンジンをもらっておる。じゃが、そのニンジンを全てもらえるわけではないのじゃ」
ちろ姫: 「えっ!? どうして!?」
てち王: 「国を運営するためには、お金…この星で言うところの『ニンジン』が必要不可欠じゃ。道を作ったり、みんなの安全を守ったり、このふわふわ城を維持したり…。そのために、国民は皆、稼いだニンジンの一部を国に納める義務がある。これを『納税』と言い、納めるニンジンのことを『税金』と呼ぶのじゃ」
ちろ姫: 「そうなんだ…。でも、毎月計算するの大変そう…」
てち王: 「その通りじゃ! だから、お城(会社)は兵士たちにニンジンを渡す前に、あらかじめ『大体これくらいかの?』という税金の分を天引きして、代わりに国に納めておる。これを源泉徴収(げんせんちょうしゅう)と言う。」
ちろ姫: 「ふむふむ。先に取られちゃうんだね」
てち王: 「うむ。じゃが、その“先に取られている”税金の額は、あくまで概算…つまり『仮の金額』なのじゃ。本当の年間の税額は、そのうさぎが一年間にどれだけ稼いだか、そして、どれだけ『税金を安くできる事情』があったかで、年末に改めて計算し直さねばならん」
てち王は、ちろ姫の小さな頭を優しく撫でました。
てち王: 「兵士たちは日々の警備で忙しいからの。だから、年末に朕のお城(会社)が、『あなたの本当の税額は、こうなりましたよ』と、その“仮の金額”とのズレを調整してあげるのじゃ。これが『年末調整』の正体じゃよ」
ちろ姫: 「なるほどー!お城が代わりに計算してくれるんだ!それで『調整』っていうのね!」
てち王: 「その通り。例えば、『生命保険に入って、万が一に備えています』とか、『家族をたくさん養っています』とか、そういう個人の事情を申告してもらう。そういった事情があると、税金の負担が少し軽くなる所得控除(しょとくこうじょ)という仕組みが使えるからの。その書類を兵士たちに書いてもらい、朕たちが計算し直す。そして…」
ちろ姫: 「そして?」
てち王: 「もし、一年間で天引きされた“仮の税金”が、本当の税額より多かった場合は、差額のニンジンが兵士たちに返ってくる。逆に、少なかった場合は、最後の給料から追加で徴収される。ほとんどの場合は、少し多めに天引きされているから、ニンジンが返ってくることが多いのじゃよ」
ちろ姫: 「わーい!ニンジンが返ってくるんだ!それなら、へーしさんたち、もっと嬉しそうな顔をすればいいのに!」
てち王: 「ふふ、書類を書くのが少し面倒なのじゃろうな。じゃが、この『年末調整』は、お城(会社)に勤めている者にとっては、自分で税金の計算をしなくて済む、とても便利な制度なのじゃよ」
確定申告とは? – 自分でニンジンを取り戻す“冒険”
ちろ姫は「年末調整」を理解し、満足そうに頷きました。
ちろ姫: 「年末調整は、お城がやってくれる便利なものなんだね!じゃあ、もう一つ言ってた『かくにんしんこく?』はなあに?」
てち王: 「はは、惜しいな。『確定申告(かくていしんこく)』じゃ。よいか、ちろ姫。年末調整は、あくまでお城(会社)が把握できる範囲のことしかできぬ。それ以外の特別な事情がある者たちは、年末調整だけでは正しい税金の計算ができんのじゃ」
ちろ姫: 「とくべつな事情?」
てち王: 「うむ。そういう者たちは、『わたくしの昨年の稼ぎと事情はこうでした!だから納めるべき税金はこの額で確定です!』と、自分自身で国に報告しに行かねばならん。それが『確定申告』じゃ」
ちろ姫: 「じぶんで!? それは大変そう…あたち、めんどくさいのは嫌いだもん…」
ちろ姫は、早くもおやつの干草のことで頭がいっぱいになり、少しだけ体を揺らし始めました。てち王は、そんな妹の様子を見て、悪戯っぽく笑います。
てち王: 「ふふ、そう思うのも無理はない。じゃがな、ちろ姫。この確定申告は、ただ面倒なだけではないのじゃ。これは、年末調整では手が届かなかった『払いすぎたニンジンを取り戻す』ための、勇気と知識が試される、偉大な冒険でもあるのじゃよ!」
ちろ姫: 「に、ニンジンを取り戻す…ぼうけん!?」
ちろ姫の目が、キラリと輝きました。単純な彼女は「冒険」という言葉にすっかり心を奪われたようです。
冒険に出るべき勇者たち – どんな時に確定申告が必要?
てち王: 「では、どんな者たちが、この確定申告という冒険の旅に出るべきなのか、具体的に教えてやろう」
【ケース1:そもそも年末調整がない勇者たち】
てち王: 「まず、お城(会社)に勤めておらん者たちじゃ。例えば、自分の畑でニンジンやイチゴを育てて、市場で売って暮らしている農家うさぎ(個人事業主)や、星々を旅しながら、その美しい歌声でニンジンを稼ぐ吟遊詩人うさぎ(フリーランス)たち。彼らは朕から給料をもらっておらんから、年末調整をしてもらえぬ。だから、一年間の稼ぎを全て自分で計算し、確定申告をせねばならんのじゃ」
ちろ姫: 「そっか!お城にいないうさぎさんたちは、自分で冒険に出るしかないんだね!」
【ケース2:払いすぎたニンジンを取り戻す勇者たち】
てち王: 「次が、この冒険の醍醐味じゃ。お城に勤めている兵士でも、確定申告をすることで、払いすぎた税金という名のニンジンを取り戻せる場合がある」
ちろ姫: 「どんなとき!?」
てち王: 「例えば…」
- ① たくさんお医者さんにかかった時(医療費控除)
「ある兵士うさぎが、森での訓練中に足を滑らせて大怪我をしてしまったとしよう。お医者さんうさぎに治療してもらい、たくさんのニンジンを支払った。その家族も含めて、一年間に支払った医療費の合計が10万ニンジン(円)を超えた場合、その兵士は確定申告の冒険に出る資格を得る。申告すれば、『大変だったのぅ』と国が税金を安くしてくれる医療費控除が受けられ、払いすぎたニンジンが返ってくるのじゃ」 - ② ふわふわ星の他の地域を応援した時(ふるさと納税)
「ちろ姫は、南の『りんごの森』のりんごが好物じゃろう?もし、ちろ姫が『りんごの森をもっと元気にするために!』と、そこにニンジンを寄付したとしよう。それが『ふるさと納税』という制度じゃ。この制度を使って寄付をすると、寄付したお礼に特産品のりんごがもらえて、さらに!確定申告をすれば、寄付した金額に応じて税金が安くなる(寄付金控除)。これもまた、賢い勇者の冒険じゃな」
(補足:会社員の場合、ワンストップ特例制度を使えば確定申告不要な場合もありますが、今回は確定申告のメリットとして紹介しています) - ③ 大きなお家を建てた時(住宅ローン控除)
「森の中に、大きな木の家を建てたうさぎがおったとする。銀行うさぎからたくさんのニンジンを借りて(住宅ローン)、家を建てた。その場合、最初の年だけは必ず確定申告をせねばならん。そうすれば、住宅ローン控除という非常に大きな税金の割引が受けられる。2年目からは年末調整で手続きできるが、最初の冒険は必須なのじゃ」
ちろ姫: 「わー!ニンジンを取り戻す方法って、いっぱいあるんだね!あたちも、りんごの森にニンジンを寄付する冒険に出たい!」
【ケース3:追加でニンジンを納める義務がある者たち】
てち王: 「うむ。だが、冒険には義務も伴う。確定申告をしなければならない者たちもいることを忘れてはならん」
- ④ お城以外でも稼いでいる時(副業収入)
「ある兵士うさぎが、お城での仕事が終わった後、夜な夜な隣のキラキラ星と通信して、翻訳のアルバイトをしていたとしよう。そして、そのアルバイトで稼いだニンジンが、一年間で20万ニンジンを超えた場合。その兵士は、お城からもらう給料とは別に稼いだ分を、正直に確定申告で報告し、追加の税金を納める義務があるのじゃ。これを怠ると、後で怖い税務調査うさぎがやってきて、もっとたくさんのニンジンを納めることになってしまうぞ」
ちろ姫: 「ひぇぇ…正直が一番なんだね…」
- ⑤ 投資で利益が出た時(金融所得)
「そして、これは朕のような王族や、未来を見据える賢い国民に関わる話じゃ。例えば、ふわふわ星の未来のために『ニンジン畑株式会社』の株を持っていて、そこから利益の分け前(配当金)をもらったり、持っていた株を売って儲けが出たりした場合じゃな」
ちろ姫: 「とうし?かぶ?」
てち王: 「うむ、少し難しい話じゃが、将来ちろ姫も学ぶことになる。この投資による利益が出た場合も、確定申告が必要になることがある。もちろん、最近は『特定口座(源泉徴収あり)』という便利な仕組みがあって、それを選んでおけば証券会社が税金を代わりに計算して納めてくれるから、確定申告が不要な場合も多い。じゃが…」
てち王は、少し声を潜めて続けた。
てち王: 「例えば、A証券では儲かったが、B証券では損してしまった、という場合に、確定申告をすれば両方の損益を合算(損益通算)して、払いすぎた税金を取り戻せたり、配当金にかかった税金の一部を返してもらえる配当控除という技を使えたりもする。これは、上級者向けの冒険じゃな」
ちろ姫は、少し難しい顔をしながらも、一生懸命に聞いていました。
ちろ姫: 「なるほどー…。年末調整は、みんながやってもらう『基本のおまかせコース』で、確定申告は、特別な事情がある人が自分でやる『こだわりトッピング全部のせコース』みたいな感じ?」
てち王は、ちろ姫の思わぬ秀逸な例えに、目を丸くしました。
てち王: 「なんと!その通りじゃ、ちろ姫!素晴らしい例えじゃ!ちろ姫は本当に筋が良い。将来はきっと、朕を超える立派な女王になれるじゃろう」
褒められたちろ姫は、照れくさそうにぴょんと一度だけ跳ねるのでした。
自分はどちら?賢い国民になるために

てち王は、ちろ姫を膝の上で抱きしめ、諭すように語りかけました。
てち王: 「よいか、ちろ姫。そして、この話を聞いてくれている国民たちよ。今日の話をまとめよう」
「ほとんどのお城勤めの者(会社員)は、年末調整で税金の手続きは完了する。じゃが、もしそなたが…」
- 医療費をたくさん払った
- ふるさと納税をした
- 住宅ローンを組んだ(1年目)
- 副業で20万ニンジン以上稼いだ
- 株や投資で利益が出て、節税したい
「…などの事情に当てはまるのであれば、それは確定申告という冒険に出るべき勇者の証じゃ。自らの手で手続きをすることで、払いすぎたニンジンを取り戻し、あるいは、果たすべき義務を全うすることができる」
「最も大切なのは、自分の状況を毎年しっかりと把握すること。自分はただ年末調整を待つだけで良いのか、それとも冒険の地図を広げるべきなのか。それを知ることが、賢く、豊かに暮らすための第一歩なのじゃ。わかったかな、ちろ姫?」
ちろ姫: 「はい、兄様!あたち、わかった!あたちも大きくなったら、ちゃんと自分のニンジンを計算できる、立派なプリンセスになる!そして、確定申告の冒険に出て、払いすぎたニンジンをいーっぱい取り戻して、そのニンジンで干草とりんごを山ほど買うの!」
その元気な宣言に、てち王は声を出して笑いました。ふわふわ城の未来は、今日も明るいようです。
こうして、ちろ姫の税金に関するお勉強は終わりました。あなたも、自分が「年末調整」だけで良いのか、それとも「確定申告」という冒険に出るべきなのか、一度確認してみてはいかがでしょうか?払いすぎたニンジンが、あなたの帰りを待っているかもしれませんよ。
用語解説コーナー
- 年末調整(ねんまつちょうせい)
会社員や公務員など、給与をもらっている人が対象。会社が従業員に代わって、毎月の給料から天引きされた所得税の過不足を、年末に精算してくれる手続きのこと。生命保険料控除や扶養控除などを反映し、正しい税額を計算します。 - 確定申告(かくていしんこく)
個人事業主やフリーランス、または給与所得者でも年末調整では対応できない控除(医療費控除など)を受けたい人や、副業収入がある人などが対象。1年間の所得とそれに対する税額を自分で計算し、税務署に申告・納税する手続きのこと。原則、翌年の2月16日から3月15日に行います。 - 源泉徴収(げんせんちょうしゅう)
会社が給与や報酬を支払う際に、あらかじめ所得税を天引きして、本人に代わって国に納める制度のこと。年末調整や確定申告は、この源泉徴収された“仮の税額”と、“本来納めるべき税額”との差額を精算するために行われます。 - 所得控除(しょとくこうじょ)
納税者一人ひとりの事情(家族を養っている、社会保険料や生命保険料を支払っているなど)に応じて、所得の合計額から一定の金額を差し引くことができる仕組み。控除額が大きいほど、税金の計算の元となる所得が減るため、結果的に税額が安くなります。 - 医療費控除(いりょうひこうじょ)
1年間に支払った医療費が、原則として10万円を超えた場合に受けられる所得控除。本人だけでなく、生計を共にする配偶者や親族の医療費も合算できます。確定申告が必要です。 - 寄付金控除(きふきんこうじょ)
国や地方公共団体、特定の法人などに寄付をした場合に受けられる所得控除。「ふるさと納税」もこの一種です。 - 配当控除(はいとうこうじょ)
国内企業の株式の配当金を受け取った場合に、一定の計算式で算出された金額を、所得税額から直接差し引くことができる制度(税額控除)。利用するには確定申告(総合課税を選択)が必要です。 - 損益通算(そんえきつうさん)
複数の証券会社の口座で、ある口座では利益が出て、別の口座では損失が出た、という場合に、それらの利益と損失を合算すること。これにより、利益にかかる税金を減らすことができます。損益通算を行うには確定申告が必要です。
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