【結論】積立投資の確認は年に1回でいい。毎日見てしまう人へ送る”ほったらかし”投資術

【結論】積立投資の確認は年に1回でいい。毎日見てしまう人へ送る”ほったらかし”投資術

宇宙のどこか、綿菓子のような雲とマシュマロの地面が広がる「ふわふわ星」。そこに住むうさぎたちは、皆のんびり、おっとり暮らしていました。この星の通貨は、甘くて美味しい「ニンジン」。星の民は、将来のためにニンジンを畑にコツコツ植えて(積立投資をして)、資産を築いています。

さて、ここふわふわ星のお城でも、小さな事件が起きていました。

ぴょんぴょんパニック!ちろ姫、評価額に一喜一憂する

ちろ姫: 「うわーん!てち王兄様!大変なのー!」

お城の廊下を、一匹の茶色いうさぎ、ちろ姫が猛スピードで駆けていきます。その右手だけが雪のように白いのが彼女のチャームポイント。手には、最新鋭の「にんじん畑チェッカー(スマホのようなもの)」が握られています。

てち王: 「どうしたのじゃ、ちろ。そんなに慌てて。プリンセスたるもの、もう少し落ち着きなさい。」

玉座で優雅にイチゴを嗜んでいたのは、ふわふわ星の王、てち王。その毛並みは星一番のフワフワを誇り、風格と優しさを兼ね備えています。年の離れた妹、ちろ姫の教育係も務める、頼れるお兄様です。

ちろ姫: 「落ち着いてなんていられないの!あたちのニンジン畑、昨日よりニンジンがちっちゃくなってる!このままじゃ、全部抜け落ちてなくなっちゃうかも!」

てち王: 「ふむ…『評価額が下がった』ということじゃな。ちろ、おぬし、そのチェッカーを日に何度も見ておるのではないか?」

ちろ姫: 「だって気になるんだもん!ちゃんと育ってるか、悪い虫さんに食べられてないか、心配で心配で…夜も眠れないの!」

てち王: (やれやれ…)「ちろよ。良いことを教えてやろう。そのように毎日畑の様子を覗き込んで一喜一憂していることこそが、ニンジンを枯らしてしまう一番の原因なのじゃ。」

ちろ姫: 「えぇ!?そうなの!?」

王様が教える、「見ない」ことが育てるコツ

てち王: 「うむ。よいか、ちろ。我々がやっている『積立投資』…つまり、ニンジンをコツコツ畑に植え続けるという行為は、長期的な視点で畑全体を豊かにするためのものじゃ。毎日一本一本のニンジンの育ち具合を気にするものではない。」

ちろ姫: 「でも、減っちゃうのは怖いよぉ…。」

てち王: 「気持ちはわかる。じゃが、毎日畑を見てしまうことには、3つの良くない点があるのじゃ。」

ちろ姫: 「みっつも?」

1. 感情という名の『害虫』を呼び寄せる

てち王: 「一つ目。毎日見ていると、少しニンジンが小さくなった(値下がりした)だけで、おぬしのようにパニックになってしまう。そして、『もうダメだ!』と、まだ育ち途中のニンジンを全部引っこ抜いてしまいたくなる。これを『狼狽(ろうばい)売り』という、投資における最も避けたい行動じゃ。」

ちろ姫: 「あたち、引っこ抜きたくなってた…。」

てち王: 「逆に、少し育ちが良い(値上がりした)だけで有頂天になり、『今のうちに収穫だ!』と、もっと大きく育つはずだったニンジンを早々に抜いてしまうこともある。感情に任せた行動は、長期的な収穫を逃すのじゃよ。」

2. 時間という『栄養』の無駄遣い

てち王: 「二つ目。おぬし、畑をチェックしている間に何ができたかな?美味しい干草を食べたり、お友達とぴょんぴょん駆け回ったり、将来女王になるための勉強もできたはずじゃ。時間は有限な資源、つまり栄養じゃ。それを畑のチェックという、あまり意味のない行為に吸い取られてはもったいない。」

ちろ姫: 「うっ…おやつのりんご、食べる時間なかった…。」

3. 『天気』に振り回されてしまう

てち王: 「三つ目じゃ。ニンジン畑の価値、つまり株価は、毎日変わる天気のようなもの。晴れの日もあれば、雨の日も、嵐の日もある。毎日天気予報ばかり見て、『今日は雨だからダメだ』『明日は晴れるから大丈夫だ』と一喜一憂しても、長い目で見ればニンジンは太陽と雨の両方をもらって、ちゃんと育っていくものなのじゃ。」

ちろ姫: 「そっかぁ…天気はあたちにはどうにもできないもんね。」

てち王: 「その通り。我々にできるのは、どんな天気でも育つように、色々な種類のニンジン(分散投資)を、時間をかけて植え続ける(積立投資)ことだけなのじゃ。」

では、いつ見るのが正解?『年に一度のお手入れ』という考え方

ちろ姫: 「てち王兄様の話はわかったの。じゃあ、ずーっと見なくてもいいの?本当にほったらかしで、虫さんに食べられ放題でもいいの?」

ちろ姫の、もっともな疑問です。完全に放置するのも、それはそれで不安なもの。てち王は、優しく頷きました。

てち王: 「良い質問じゃ、ちろ。もちろん、完全な放置を推奨するわけではない。朕が言いたいのは『目的のない確認』をやめるべき、ということじゃ。確認するには、ちゃんと意味がある。それが『年に一度のお手入れ』、専門用語で『リバランス』というものじゃ。」

ちろ姫: 「りばらんす?」

てち王: 「うむ。例えば、ちろが最初に『ニンジン畑(株式)と、リンゴの木(債券)を半分ずつにしよう』と決めて投資を始めたとしよう。」

ちろ姫: 「うん!あたち、ニンジンもリンゴも大好きだから、そう決めたの!」

てち王: 「一年後、ニンジン畑がものすごく豊作で、リンゴの木はそこそこの実りだったとしよう。すると、おぬしの資産の割合は『ニンジン畑が7割、リンゴの木が3割』というように、バランスが崩れてしまう。」

ちろ姫: 「わー!ニンジンだらけになっちゃう!」

てち王: 「そうじゃ。ニンジン畑は豊作の時もあれば、不作の時もある(値動きが大きい)。リンゴの木は毎年安定して実る(値動きが穏やか)。バランスが崩れたままだと、もし翌年ニンジンが不作だった場合、資産全体が大きく減ってしまうリスクがある。だから、年に一度くらい確認して、増えすぎたニンジン(株式)を少し収穫(売却)し、そのニンジンでリンゴの木(債券)を買い足して、また『半分ずつのバランス』に戻してあげるのじゃ。これがリバランスじゃ。」

ちろ姫: 「なるほどー!ただ見るんじゃなくて、『バランスを整えるため』に見るんだね!」

てち王: 「その通りじゃ、ちろ。素晴らしい理解力じゃな。」

てち王に褒められ、ちろ姫は嬉しそうに耳をぴょこぴょこさせました。

ちろ姫: 「じゃあ、あたち、お誕生日の日にだけ畑をチェックするって決める!その日にリバランスするの!」

てち王: 「それが良い。年に一回、あるいは半年に一回、自分で決めたルールに従って淡々と確認し、必要なら手入れをする。あるいは、自分の目標(10年後に留学するための資金など)に対して、順調に進んでいるかを確認する程度でよい。それ以外は、堂々と忘れておきなさい。それが、我々投資家が心の平穏を保ち、資産を健やかに育てるための極意なのじゃ。」

ちろ姫: 「わかったの!王兄様、ありがとう!あたち、これでおやつのリンゴを安心して食べられる!ぴょーん!」

すっかり元気を取り戻したちろ姫は、おやつ目指してぴょんぴょんと跳ねていきました。その背中を見つめるてち王は、満足げに微笑み、残りのイチゴをゆっくりと口に運んだのでした。

投資とは、日々の値動きに心をすり減らすことではありません。自分の決めたルールと時間を味方につけて、どっしりと構えること。ふわふわ星の賢い王様は、今日も大切な妹に、お金の知識だけでなく、豊かな人生を送るための知恵を授けたのでした。


用語解説コーナー

今回の物語に出てきた、少し難しい言葉を解説します。

  • 積立投資(つみたてとうし)
    • 毎月1日、毎週月曜日など、自分で決めたタイミングで、決まった金額をコツコツと買い続ける投資方法のこと。「ニンジンを定期的に畑に植え続ける」イメージです。価格が高い時には少なく、安い時には多く買うことになるため、平均購入単価を抑える効果が期待できます。これを**「ドルコスト平均法」**と言います。
  • ポートフォリオ
    • 自分が保有している金融資産(株式、債券、投資信託など)の組み合わせや一覧のこと。物語の中の「ニンジン畑とリンゴの木の組み合わせ」がこれにあたります。どのような資産を、どのくらいの割合で持つかを考えることが、資産運用の第一歩です。
  • 狼狽売り(ろうばい売り)
    • 市場が暴落した際などに、パニックになってしまい、持っている資産を慌てて売ってしまうこと。価格が下がった時に売るため、大きな損失を確定させてしまうことが多い、投資で最も避けたい行動の一つです。
  • リバランス
    • 資産運用を続けていく中で、値動きによって崩れてしまった資産の配分(ポートフォリオの比率)を、当初決めた比率に戻すように調整すること。物語の例のように、値上がりした資産を一部売り、値下がりした資産を買い増すのが一般的です。これにより、リスクを取りすぎている状態を正常に戻し、資産を安定させる効果があります。年に1回など、定期的に行うのがおすすめです。