【初心者向け】積立投資の投資信託、失敗しない選び方|見るべき3つの重要ポイントを解説
宇宙のどこか、そこにあるのは何もかもがふわふわな惑星、その名も「ふわふわ星」。この星では、王様もお姫様も、みんなふわふわのうさぎです。通貨は、甘くて美味しい「ニンジン」。今日もこの星では、愛らしい兄妹による、ちょっとためになるお話が始まるようです。
おやつの時間と未来のニンジン
ふわふわの雲が浮かぶお城の庭で、一匹のうさぎが幸せそうにりんごをかじっていました。将来、ふわふわ星の王女となる「ちろ姫」です。その茶色い毛並みの中で、自慢の白い右手がりんごの赤に映えています。
ちろ姫:「んー!シャクシャク!りんご、おいちい!」
ぴょんぴょんと嬉しそうに跳ねるちろ姫のもとへ、もっと大きく、威厳と優しさを兼ね備えたうさぎが、ふわりと歩み寄ってきました。ふわふわ星の王、「てち王」です。
てち王:「ちろ姫よ、楽しそうなのは良いことだ。だが、王女になるための勉強はどうしたのかね?」
その声は、まるで春風のように優しく、しかし有無を言わせぬ響きを持っていました。
ちろ姫:「あたち、ちゃんとお勉強してるもん!見てて、お兄様!あたち、将来のために毎日ニンジンを1本、お庭に埋めてるの!これで将来はニンジン長者よ!」
得意げに胸を張るちろ姫。てち王は、その愛らしい妹の姿に、ふっと笑みをこぼしました。
てち王:「ふむ。良い心がけだ。だがちろ姫よ、ただニンジンを埋めるだけでは、土の中でしなびてしまうかもしれんぞ?もっと上手く、ニンジンを増やす方法があるのだが…興味はあるかね?」
ちろ姫:「え!?埋めるより良い方法!?あるの!?」
ちろ姫は、かじりかけのりんごをポトリと落とし、てち王に駆け寄りました。その瞳は、好奇心でキラキラと輝いています。こうして、てち王による、ちろ姫のための特別な金融レッスンが始まったのです。
積立投資の「たね」選び~基本の3か条~
てち王:「いいかね、ちろ姫。我々がこれから学ぶのは『積立投資』というものだ。これは、毎月決まった日に、決まった数のニンジンで、価値が育つ可能性のある『投資のたね』を買い続ける方法のことだ」
ちろ姫:「とうしのたね?」
てち王:「うむ。そのたねは、ふわふわ星だけでなく、宇宙中の優れたニンジン畑(会社)の権利が少しずつ入った、特別な袋詰のようなものだと思ってくれれば良い」
てち王がそう言うと、ちろ姫は目を輝かせました。
ちろ姫:「すごい!宇宙中のニンジン畑!でも、たねって言っても、お店にはいーっぱい並んでるわ。どれを選んだらいいの?」
素直な疑問です。投資を始めようと思った誰もが、最初にぶつかる壁でしょう。てち王は優しく頷き、ちろ姫の目線までかがんで話し始めました。
てち王:「良い質問だ、ちろ。では、初心者が『投資のたね』…つまり投資信託を選ぶときに、最低限確認すべき3つのことを教えよう。これを『基本の3か条』と呼ぶことにする」
【第一条:『何に』投資しているかを知るべし!】
てち王:「まず一番大切なのは、そのたねが、どんなニンジン畑に投資しているかだ。大きく分けて『株式』と『債券』がある」
ちろ姫:「かぶしき?さいけん?」
てち王:「うむ。『株式』とは、ニンジン畑そのものの一部を持つ権利だ。畑が豊作になれば、ちろ姫の持つ権利の価値もグンと上がる。しかし、不作になれば価値は下がることもある。少しドキドキするが、大きな成長が期待できるものだ」
ちろ姫:「ほうほう!」
てち王:「一方、『債券』とは、ニンジン畑にお金を貸してあげる代わりに、決まった利息をもらう権利だ。大きな成長は期待しにくいが、畑の出来に関わらず、約束した分のニンジン(利息)がもらえる。比較的、安心感があるな」
てち王は続けます。
てち王:「そして、どの地域の畑に投資するかも重要だ。例えば『S&P500』という名前のたねは、アメリカという巨大な大陸で、特に元気な500個のニンジン畑にまとめて投資するものだ。また、『オール・カントリー(オルカン)』というたねは、アメリカだけでなく、ヨーロッパ、日本など、宇宙中の先進的なニンジン畑すべてに、まるっと投資するものだ。どちらも、世界中のうさぎたちに人気があるぞ」
ちろ姫:「へぇー!アメリカだけか、宇宙ぜんぶか…なんだかスケールが大きいわ!」
【第二条:『手数料』が低いものを選ぶべし!】
てち王:「次に大事なのがコスト、つまり手数料だ。投資のたねを管理してくれる庭師さんへの、お礼のニンジンだな。これを『信託報酬』と呼ぶ」
ちろ姫:「しんたくほうしゅう?」
てち王:「そうだ。この信託報酬は、ちろ姫が投資している間、毎日少しずつ、ちろ姫の資産から支払われ続ける。ほんの0.1%の違いでも、10年、20年と時間が経つと、複利の効果で大きな差になるのだ。まるで、小さな虫に毎日少しずつニンジンをかじられているようなものだな。だから、できるだけ腕が良くて、お礼のニンジンが少ない庭師さん…つまり、信託報酬が低いものを選ぶのが賢明だ」
ちろ姫は、自分のニンジンが虫にかじられるのを想像して、ぶるっと身を震わせました。
ちろ姫:「それは嫌!手数料は絶対チェックするわ!」
【第三条:『人気』のバロメーターを見るべし!】
てち王:「最後は、そのたねがどれだけ他のうさぎから人気があるかだ。これを『純資産総額』という数字で確認できる」
ちろ姫:「じゅんしさんそうがく?」
てち王:「うむ。みんながそのたねに投資したニンジンの合計額だ。この数字が大きくて、かつ右肩上がりに増えているものは、多くのうさぎから信頼され、支持されている証拠だ。逆に、どんどん減っているものは、何か問題を抱えているのかもしれない。大きな船の方が、小さな小舟より嵐に強いだろう?それと同じで、純資産総額が大きい方が、安定した運用が期待できるのだ」
ちろ姫:「なるほどー!大きくて増えてるのがイイのね!」
ちろ姫は、てち王の教えを忘れないように、小さな肉球で地面にメモを取り始めました。「なにに」「てすうりょう」「にんき」…
王女のための応用レッスン~一歩先の視点~

基本の3か条を学び、少し賢くなったちろ姫。しかし、彼女は未来の王女です。満足するには、まだ早いようでした。
ちろ姫:「お兄様!よく分かったわ!でも、それだけ見ておけば、もう完璧なの?王女たるもの、もっと深く知っておくべきではないかしら?」
その意欲的な言葉に、てち王は満足そうに目を細めました。
てち王:「素晴らしいぞ、ちろ姫。その探求心こそ、王族に必要な資質だ。よろしい。では、一歩進んだ『応用の視点』を授けよう。これを理解すれば、周りのうさぎたちに、一目置かれる存在となれるだろう」
【応用①:『説明書』と『健康診断書』を読み解くべし!】
てち王:「投資のたねには、必ず『目論見書(もくろみしょ)』という分厚い説明書と、『月次レポート』という毎月の健康診断書が付いてくる」
ちろ姫:「そんなものがあるの?」
てち王:「そうだ。『目論見書』には、そのたねがどんな哲学を持ってニンジン畑を選んでいるか、どんなリスク(例えば、宇宙イタチに畑が荒らされる危険性など)があるか、すべて書いてある。読むのは少し骨が折れるが、自分が大切なお金を投じる先の『正体』を知るために、一度は目を通すべきだ」
てち王:「そして、『月次レポート』はもっと実践的だ。先月、資産はどれくらい増減したのか、具体的にどのニンジン畑(企業)に多く投資しているのかが分かる。ここで注目すべき指標が一つある。『シャープレシオ』だ」
ちろ姫:「しゃーぷれしお…?」
てち王:「これは『投資の効率性』を示す数値だ。単に大きく成長した(リターン)だけでなく、その過程でどれくらい価格が揺れ動いたか(リスク)も考慮している。数値が高いほど、『少ないリスクで、効率よくリターンを得られた優秀なたね』ということになる。我々ふわふわ族は、無用なドキドキは好まんだろう?ならば、このシャープレシオは、良い判断材料になる」
【応用②:星の『中央銀行』と『ニンジン相場』を意識すべし!】
てち王:「最後は、もっと大きな視点だ。我々の投資は、このふわふわ星の経済全体、ひいては宇宙経済の動きと無関係ではいられない」
てち王は、空を指さしました。
てち王:「例えば、『金利』だ。ふわふわ星の中央銀行が『ニンジンを貸し借りするときの利息を上げます!』と宣言するとどうなる?安全な預金でもらえる利息が増えるから、わざわざドキドキする株式投資よりも、そちらを選ぶうさぎが増えるかもしれん。そうなると、株式市場全体の元気がなくなることもある」
ちろ姫:「むずかしいわ…」
てち王:「それから『為替』だ。我々がオール・カントリーのたねを買うということは、宇宙中の通貨でニンジン畑を買っているのと同じだ。もし、我らが『ふわふわ星ニンジン』の価値が、他の星の通貨に対して上がった(円高ならぬニンジン高)場合、外国の畑で得た利益をニンジンに両替すると、目減りしてしまう。逆に『ニンジン安』になれば、海外の利益は膨らむ。この為替の動きも、海外に投資する上では無視できない要素なのだ」
ちろ姫は、頭から湯気が出そうでした。しかし、必死に食らいつきます。これが未来の王女としての責任だと感じたからです。
賢いプリンセスへの第一歩
てち王:「どうだ、ちろ姫。積立投資は、ただニンジンを積み上げるだけの単純な作業ではないだろう?だが、一度仕組みを理解すれば、これほど心強い味方はいない。大切なのは、誰かが『このたねが良いぞ』と言っていたからと、思考停止で飛びつかないことだ」
てち王は、妹の頭を優しく撫でました。
てち王:「今日学んだことを参考に、まずは自分で『目論見書』を読んでごらん。そして、少額からでいい。毎月ニンジン10本でも、20本でも。実際に始めてみることが、何よりの勉強になる。さあ、一緒に最初のたねを選んでみようか」
ちろ姫:「うん!お兄様!あたち、やってみる!賢いプリンセスになって、ふわふわ星をもっと豊かにしてみせるわ!」
決意を新たにしたちろ姫の目は、先ほどよりもずっと力強く、そして知的に輝いて見えました。
こうして、ふわふわ星の庭先で、二匹のうさぎは仲良く投資信託のパンフレットを広げるのでした。ちろ姫のニンジン長者への道は、まだ始まったばかりです。
用語解説
今回の物語に出てきた、少し難しい言葉を解説します。
- 積立投資(つみたてとうし): 毎月など、定期的に一定の金額で金融商品(投資信託など)を買い付けていく投資手法。購入単価が平準化される「ドルコスト平均法」の効果が期待できます。
- 投資信託(とうししんたく): 多くの投資家から集めた資金を一つにまとめ、運用の専門家(ファンドマネージャー)が株式や債券などに投資・運用する金融商品。S&P500やオール・カントリーなども、これに連動する投資信託が人気です。
- S&P500: 米国の代表的な株価指数の一つ。ニューヨーク証券取引所やNASDAQに上場している代表的な500社の銘柄で構成されています。
- オール・カントリー(オルカン): 全世界の株式を対象とした株価指数(例:MSCI ACWI)に連動する投資信託の愛称。これ一つで全世界の成長の恩恵を受けることを目指せます。
- 信託報酬(しんたくほうしゅう): 投資信託を管理・運用してもらうための経費として、信託財産から日々差し引かれる手数料のこと。
- 純資産総額(じゅんしさんそうがく): その投資信託が保有している資産(株式や債券など)の時価評価額の合計。ファンドの規模や人気を示す指標となります。
- 目論見書(もくろみしょ): 投資信託の目的や方針、リスク、手数料などが詳しく記載された説明資料。投資家は購入前に必ず確認するよう義務付けられています。
- シャープレシオ: リスク(価格変動の大きさ)に見合ったリターンをどれだけ得られたかを示す指標。数値が高いほど、運用効率が良いと評価されます。
- 金利(きんり): お金の貸し借りに対する利息の割合。中央銀行が決定する政策金利は、経済全体に大きな影響を与えます。
- 為替(かわせ): 異なる通貨を交換(売買)すること。円高・円安など、為替レートの変動は、海外資産に投資する際のリターンを左右します。
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