【初心者必見】ウォーレン・バフェットの投資術を世界一やさしく解説

【初心者必見】ウォーレン・バフェットの投資術を世界一やさしく解説

ここは宇宙のどこかにある、何もかもがふわふわな惑星「ふわふわ星」。この星の玉座では、若き王「てち王」が、今日も悩みの種を抱えていました。彼の悩みの種、それは歳の離れた妹であり、次期王女である「ちろ姫」の教育についてです。


プリンセスの憂鬱な勉強時間

ちろ姫:「も〜!てち兄様!あたち、もう飽きちゃったの!『ふわふわ星の歴史』とか『正しい毛づくろいの作法』なんて、おやつよりもちっとも面白くないの!」

玉座の隣に設けられた勉強机で、ちろ姫は教科書を放り出してぷっくりと頬を膨らませています。その足元には、かじりかけの干草が散らばっていました。

てち王:「こら、ちろ姫。将来、立派な王女になるためには、歴史や作法も大切なのじゃぞ。民は、おぬしの優雅な立ち居振る舞いを見るのを楽しみにしておる」

優しく諭すてち王ですが、ちろ姫はぴょんぴょんと跳ねて聞く耳を持ちません。その右手だけが白い毛で覆われているのが、まるで抗議の旗のように見えます。

ちろ姫:「だって、だって!そんなことより、もっと国の皆がたくさんのニンジンを食べられるようになる方法とか、そういうのを学びたいの!あたち、プリンセスだもん!」

その意外な一言に、てち王はフワフワの耳をぴくっと動かしました。いつもはおやつのことしか頭にないと思っていた妹の口から、「民のため」という言葉が出たのですから。

てち王:「……ほう。面白いことを言うのう、ちろ姫。民を豊かにする方法か。それならば、今日は教科書とは違う、特別な勉強をしようかの。地球という星にいた、たった一人で国を豊かにできるほどのニンジン…いや、お金を集めた『投資の神様』の話じゃ」

ちろ姫:「とーしの、かみしゃま?」

ちろ姫はぴょんぴょん跳ねるのをやめ、キョトンとした顔でてち王を見上げました。彼女の好物であるリンゴよりも甘く、魅力的な響きが、その言葉にはあったのです。

神様の不思議なニンジン畑

てち王:「うむ。その神様の名は、ウォーレン・バフェット。彼は、ニンジンをただ土に埋めるのではなく、『最高のニンジン畑』を見つけ出し、そこにニンジンを預けることで、雪だるま式にニンジンを増やしていったのじゃ」

ちろ姫:「最高のニンジン畑?あたちの知ってるニンジン畑と違うの?」

てち王:「うむ。バフェットの言う『最高の畑』とは、会社のことじゃ。優れた会社を見つけて、その一部を持たせてもらう(株を買う)こと。それが彼の言う投資なのじゃよ」

てち王は、ちろ姫の小さな頭に、バフェットの投資哲学という種を植え始めました。

てち王:「バフェットの教え、その壱は『長期投資』じゃ。ちろ姫、我々うさぎがニンジンを植えたら、次の日に掘り起こしたりはせぬだろう?芽が出て、葉が茂り、立派なニンジンになるまで、じっくりと待つ。投資もそれと同じ。一度『最高の畑』だと信じたら、日々の天気に一喜一憂せず、何年も、時には何十年も待ち続けるのじゃ」

ちろ姫:「ふむふむ。毎日ぴょんぴょんしないのが大事なのね!」

てち王:「その通りじゃ。そして、教えのその弐は『バリュー投資』。これは、『素晴らしいニンジン畑を、お買い得な値段で買う』ということじゃな」

ちろ姫:「お買い得?腐ったりんごは安くてもいらないの!」

てち王:「まさにその通り!さすがは我が妹じゃ。腐ったりんごではなく、本当は甘くて美味しいのに、なぜか皆が見向きもしない、泥だらけのリンゴを見つけ出すようなものじゃ。会社の本質的な価値を見抜き、それが市場で不当に安く評価されている時に買う。これがバリュー投資の神髄じゃ」

感心したてち王は、自分の好物であるイチゴを一つ、ちろ姫に差し出しました。ちろ姫はそれを嬉しそうに受け取ります。

てち王:「そして、最も大切な教えが、その参『能力の輪』じゃ。朕は、ニンジンとイチゴのことなら誰よりも詳しい。しかし、ふわふわ雲の向こう側で採れるというキラキラ鉱石のことは、さっぱりわからぬ。だから、朕は最高のニンジンジュースを作る会社には投資するが、キラキラ鉱石の会社には手を出さない。自分の理解できる範囲で勝負する。これが『能力の輪』じゃ」

ちろ姫:「あたち、干草とりんごのことは誰にも負けないの!じゃあ、あたちの『能力の輪』は干草とりんごなのね!」

ちろ姫は得意げに胸を張りました。難しいと思っていた勉強が、自分たちの好きなものに置き換えることで、少しずつ面白くなってきたのです。

伝説のジュース会社とリンゴの箱

ちろ姫:「てち兄様!じゃあ、どうやってその『最高のニンジン畑』…じゃなくて、『最高の会社』を見つけるの?ふわふわ星にもあるのかしら?」

ちろ姫の瞳は、知的好奇心でキラキラと輝き始めていました。てち王は、妹の成長を感じ、満足げに頷きます。

てち王:「良い質問じゃ、ちろ姫。バフェットは特に『消費者独占型企業』を好んだ。これは、他の会社には真似できない、特別な魅力を持つ会社のことじゃ」

てち王は、ちろ姫がいつもおやつに飲んでいるジュースを指さしました。

てち王:「ちろ姫、おぬしが飲むニンジンジュースは、いつも『ふわふわキャロット社』のものじゃな?たとえ隣の店で、他の会社のジュースが1ニンジン安く売られていても、おぬしはいつもの『ふわふわキャロット社』の濃厚な味を選ぶじゃろう。多くのうさぎ達がそうであるようにな。このように、人々を虜にする強いブランド力を持つ会社は、安定してニンジンを稼ぎ続けることができるのじゃ。地球の『コカ・コーラ』という会社が、まさにそれじゃった」

ちろ姫:「なるほど〜!あたちが『ふわふわキャロット社』のジュースを飲むたびに、会社はニンジンを稼いでいたのね!」

てち王:「うむ。また、地球には『アップル』という、りんごを売る会社ではないのじゃが、そういう名前の会社がある。そこが作る『iPhone』という道具は、一度使うと他の会社のものは使えなくなるほどの魅力があるそうじゃ。熱狂的なファンがおる。ちろ姫が干草とりんごをこよなく愛するように、人々はその会社の製品を愛し、買い続ける。これもまた、強力な消費者独占型企業と言えるじゃろう」

ちろ姫は、自分のリンゴ好きが、まさか投資の話に繋がるとは思わず、目を丸くしています。

てち王:「そして、そういった会社を見つけたら、『会社の健康診断書』とも言える財務諸表を見るのじゃ。毎年たくさんのニンジンを収穫できているか(売上高)、病気で弱っていないか(純利益)、そして、さらに畑を広げるための体力がどれくらいあるか(自己資本比率)…最初は難しく感じるかもしれぬが、数字は嘘をつかぬからのう」

ちろ姫:「うぅ…数字はちょっと苦手なの…」

てち王:「ははは。大丈夫じゃ。最初は、その会社が毎年ちゃんとニンジンを増やせているか、という点だけ見れば良い。そして最後に、大切なのが『安全マージン』という考え方じゃ」

てち王:「例えば、朕の計算では100ニンジンの価値があるニンジン畑があったとしよう。それを、市場のうさぎ達が何らかの理由でパニックになり、70ニンジンで売りに出したとする。その時に買うのじゃ。そうすれば、万が一、その年の収穫が少し悪くても(価値が90ニンジンに下がっても)、損をすることはない。この30ニンジンの差が、我々を守ってくれる『安心のふわふわクッション』、つまり安全マージンなのじゃ」

ちろ姫は、真剣な眼差しでてち王の話に聞き入っていました。ただのお勉強だと思っていた経済の話が、自分たちの生活や、国の未来に直結する、壮大な冒険のように感じられたのです。

未来の王女、新たな一歩

ちろ姫:「てち兄様…あたち、わかったの!経済や金融のお勉強って、『正しい毛づくろいの作法』と同じくらい…ううん、もっとずっと大事なことなのね!ふわふわ星の皆が、もっとたくさんのニンジンやリンゴを食べられるように、あたち、もっともっと勉強する!」

いつもの落ち着きのなさはどこへやら。ちろ姫は、小さな右手をぎゅっと握りしめ、力強く宣言しました。その姿は、未来の立派な王女そのものです。

てち王:「……うむ。よくぞ言った、ちろ姫。おぬしなら、きっと素晴らしい王女になれるじゃろう」

てち王は、妹の成長を心から喜び、その頭を優しく撫でました。ふわふわ星の未来は、この小さなプリンセスの双肩にかかっています。そして、その第一歩は、退屈な勉強机の上から、今まさに踏み出されたのです。

てち王:「では、今日の宿題じゃ。このふわふわ星にある会社の中から、バフェットが好みそうな会社を一つ、理由と一緒に見つけてくるのじゃ。ヒントは、おぬしの好きなものの中にあるやもしれぬぞ」

ちろ姫:「わかったの!あたち、絶対に見つけてみせる!」

目を輝かせながら、ちろ姫は自分の部屋へと駆け出していきました。その足取りは、まるで宝探しに出かける冒険者のように、軽やかで力強いものでした。


用語解説

今回の物語で登場した、ウォーレン・バフェットの投資術に関する重要な用語を簡単に解説します。

  • ウォーレン・バフェット: 「オマハの賢人」とも呼ばれる、世界で最も成功した投資家の一人。彼の投資哲学や手法は、世界中の投資家から参考にされています。
  • 長期投資: 株などを短期間で売買するのではなく、数年から数十年という長い期間にわたって保有し続ける投資スタイル。企業の成長と共に資産を増やすことを目指します。
  • バリュー投資: 企業の本来の価値(本質的価値)を分析し、現在の株価がそれよりも割安であると判断した場合に投資する手法。セール品の中から高品質なものを見つけ出すイメージです。
  • 能力の輪 (Circle of Competence): 自分が深く理解できる事業内容の企業にのみ投資するという考え方。自分が理解できない分野には手を出さないことで、大きな失敗を避けることができます。
  • 消費者独占型企業: 強力なブランド力、特許、地理的優位性などにより、競合他社が参入しにくい状況を作り出し、市場を独占的に支配している企業。安定した収益を上げやすい特徴があります。
  • 安全マージン (Margin of Safety): 企業の価値と市場価格(株価)との差のこと。この差が大きいほど、株価が下落した際のリスクを低減できると考えられており、バリュー投資において非常に重要な概念です。