【うさぎでも分かる】ドルコスト平均法とは?投資初心者が知るべきメリット・注意点をやさしく解説
- 2025.10.20
- うさぎで学ぶシリーズ 投資戦略・テクニック
- ドルコスト平均法, 投資初心者, 新NISA, 積立投資, 資産形成
ここは宇宙のどこかにある、何もかもがふわふわな惑星「ふわふわ星」。この星の通貨は、甘くて美味しい「ニンジン」です。今日のふわふわ星は、雲一つない快晴。お城の庭では、この星を治める若き王「てち王」と、その妹である「ちろ姫」が、のんびりとした午後を過ごしているようです。
プリンセスの食いしん坊と王の知恵
ちろ姫:
「てち兄様〜!見てみて!あたちが育てたりんご、こんなにいっぱい収穫できたの!ぜーんぶ、今すぐ食べるんだから!」
ちろ姫は、自分の体よりも大きなカゴいっぱいの真っ赤なりんごを、よいしょ、よいしょと引きずってきます。その瞳はキラキラと輝き、自慢げに胸を張っています。そして、一番大きなりんごに狙いを定め、がぶりと食いつこうと口を大きく開けました。その瞬間、ぴょんぴょん跳ねる本能が抑えきれず、その場で数回、嬉しそうに飛び跳ねてしまいます。
てち王:
「おぉ、ちろ姫。見事なりんごじゃな。だが、待つのだ。そんなに一度に食べてしまっては、お腹を壊してしまうぞ。それに、せっかくの美味しいりんごも、一度に食べたら楽しみがすぐになくなってしまうではないか。」
てち王は、ちろ姫の頭を優しく撫でながら、諭すように言います。その声は、王としての威厳と、兄としての優しさに満ちています。
ちろ姫:
「えー!でも、あたちのりんごだもん!お腹いっぱい食べたいの!」
ちろ姫は口を尖らせ、不満そうに耳をぺたんと倒します。右手だけが白い、自慢の毛並みを逆立てています。
てち王:
「ふむ。気持ちは分かる。だがな、ちろ姫。良いもの、価値のあるものというのは、一度に手に入れるより、少しずつ、時間をかけて付き合っていく方が、結果として大きな恵みをもたらすことがあるのじゃ。それは、りんごの食べ方だけでなく、我らがふわふわ星の富、つまり『ニンジン』を増やしていく上でも、非常に大切な考え方なのだ。」
ちろ姫:
「にんじん?りんごの話をしてたのに、なんでニンジンの話になるの?あたち、むずかしい話はわかんないー!」
ちろ姫はぷいっとそっぽを向き、近くに生えていた干し草を一本、口に運びました。彼女の好物は干し草とりんごなのです。
てち王:
「はっはっは。そう怒るでない。よいか、ちろ姫。ちろ姫がいずれこの星の立派な王女になるための、大切な『知恵』の話じゃ。朕が、ちろ姫にも分かるように、面白いたとえ話で教えてやろう。これは、将来ちろ姫が欲しいと願う『たくさんのお城』をニンジンで手に入れるための、魔法の呪文のようなものなのじゃよ。」
ちろ姫:
「まほうのじゅもん!?…それなら、聞いてあげてもいいの!」
『魔法』という言葉に、ちろ姫の耳がぴくんと反応し、再びてち王の方へと向き直りました。
魔法の呪文「ドルコスト平均法」
てち王:
「うむ。その呪文の名は…『ドルコスト平均法』という。」
ちろ姫:
「どるこすと…へいきんほう?なにそれ、変な名前!あたちの可愛いりんごとは全然ちがう!」
てち王:
「まあ、そう焦るな。名前は少し難しそうに聞こえるが、中身は至って単純じゃ。簡単に言えば、『決まった時に、決まった量のニンジンで、価値が変動するものを買い続ける』。たったこれだけのことなのじゃ。」
ちろ姫:
「???…ぜんっぜん、わかんない!」
ちろ姫は頭をぶんぶんと振り、その勢いで体がふわふわと少し浮き上がりました。
てち王:
「うむ、では実践してみよう。ここに、ふわふわ星で人気の投資先が2つあるとしよう。」
『もふもふ雲の上でお昼寝できる権利ファンド』
『ぴょんぴょん跳躍力アップシューズ株式』
ちろ姫:
「ぴょんぴょんシューズ!あたち、それほしい!もっと高く飛べるようになるの!?」
ちろ姫の目が再び輝き、その場で高くジャンプします。
てち王:
「そうじゃな。その『ぴょんぴょんシューズ』は、履けば大空まで飛べると噂の大人気商品で、会社の価値(株価)も、ちろ姫のように毎日ぴょんぴょんと激しく上下する。一方、『もふもふ雲ファンド』は、いつでも極上のお昼寝ができる権利で、価値はあまり大きく変わらないが、安定しておる。ちろ姫、ちろ姫に毎月10ニンジンの投資資金をやろう。これで1年間、『ぴょんぴょんシューズ株式』を買い続けるとどうなるか、見てみようではないか。」
てち王は、ふわふわの地面に木の枝で表を描き始めました。
てち王:
「よいか、これが『ぴょんぴょんシューズ株式』の1年間の値段の移り変わりじゃ。」
| 月 | 1株あたりの値段(ニンジン) | 毎月の投資額 (ニンジン) | 買える株数 |
| 1月 | 10 | 10 | 1.0株 |
| 2月 | 5 | 10 | 2.0株 |
| 3月 | 2 | 10 | 5.0株 |
| 4月 | 5 | 10 | 2.0株 |
| 5月 | 10 | 10 | 1.0株 |
| 6月 | 20 | 10 | 0.5株 |
| 7月 | 25 | 10 | 0.4株 |
| 8月 | 20 | 10 | 0.5株 |
| 9月 | 10 | 10 | 1.0株 |
| 10月 | 5 | 10 | 2.0株 |
| 11月 | 10 | 10 | 1.0株 |
| 12月 | 15 | 10 | 約0.67株 |
ちろ姫:
「わー!値段がめちゃくちゃ!2月のときは5ニンジンで買えたのに、7月は25ニンジンもするの!?高すぎ!あたち、2月とか3月にいっぱい買いたい!」
てち王:
「その通りじゃ。だが、いつが安くて、いつが高いのか、未来のことは誰にも分からぬ。朕にも、それは見通せん。だが、『ドルコスト平均法』を使えば、そんなことを悩む必要はないのじゃ。」
てち王はちろ姫の反応を見て、満足そうに頷きます。
てち王:
「見てみなさい。値段が高い月、例えば7月は25ニンジンもするから、10ニンジンの投資では0.4株しか買えん。だが、値段が暴落した3月は、たったの2ニンジンじゃ。だから同じ10ニンジンで、なんと5株も買えている。分かるか?この魔法のすごいところは、『値段が安い時にはたくさん買い、値段が高い時には少ししか買わない』という行動を、自動的に、何も考えずとも実行できる点にあるのじゃ。」
ちろ姫:
「ほんとだ!値段が下がって悲しいときでも、いっぱい買えてるから、ちょっと嬉しいかも!鼻がひくひくしちゃう!」
ちろ姫は興奮して、うさぎの本能である鼻のひくひくが止まらなくなっています。
平均の力と王様の注意点
てち王:
「さて、ちろ姫。1年間の投資が終わった。ちろ姫が使ったニンジンの合計は、10ニンジン×12ヶ月で、120ニンジンじゃな。そして、ちろ姫が手に入れた『ぴょんぴょんシューズ株式』の合計株数は、約17.07株じゃ。では、ちろ姫が買った株の、1株あたりの平均値段はいくらになるかな?」
ちろ姫:
「えーっと…わかんない!計算できないもん!」
てち王:
「はっはっは。朕が計算してやろう。使ったニンジンの合計(120ニンジン)を、手に入れた株の合計(17.07株)で割るのじゃ。すると…約7.03ニンジンとなる。これが、ちろ姫
の『平均取得単価』じゃ。」
ちろ姫:
「へいきんしゅとくたんか?」
てち王:
「うむ。ちろ姫がこの株を、平均していくらで買ったか、という数字じゃ。さて、ここで面白いことが分かる。この1年間の株価の平均((10+5+2+…+15)÷12)は、約12.25ニンジン。だが、ちろ姫が買った平均値段は、それよりずっと安い7.03ニンジンじゃ。そして年末、12月の株価は15ニンジンに回復しておる。もしここでちろ姫の株を全て売ったとしたら、17.07株 × 15ニンジン = 約256ニンジンになる。120ニンジンの投資が、倍以上に増えたことになるのじゃ!」
ちろ姫:
「すごーい!あたち、お金持ち(ニンジン持ち)になれるの!?」
てち王:
「これが、価格が変動する資産に対して、ドルコスト平均法が力を発揮する理由じゃ。時間の分散を行うことで、価格変動のリスクを味方につけ、取得単価を平準化させることができる。これを『ニンジンを分けて食べる』のと同じように、投資の世界では『時間の分散』と呼ぶのじゃ。」
ちろ姫は、ようやく最初のりんごの話と繋がったようで、目を丸くしています。
てち王:
「だが、ちろ姫。ここで一つ、王として大切なことを伝えねばならん。この魔法は万能ではない。」
ちろ姫:
「え?魔法なのに?」
てち王:
「うむ。もしも、『ぴょんぴょんシューズ株式』の値段が、一度も下がらず、1年間ずっと右肩上がりに上がり続けたらどうなると思う?」
てち王は、別の場所に新しいグラフを描きます。
てち王:
「その場合、一番最初に、120ニンジンを全て使って一気に株を買ってしまった方が、結果として多くの利益を得られたことになる。ドルコスト平均法は、高値で買ってしまうリスクを避ける代わりに、最安値で一気に買うチャンスも手放すことになるのじゃ。つまり、大きなリターンを少し逃す可能性もあるということだ。」
ちろ姫:
「むむむ…むずかしい…。じゃあ、どうすればいいの?」
てち王:
「最も大切なのは、未来の価格を完璧に予測しようとしないことじゃ。我々うさぎは、未来の天気が分からずとも、毎日コツコツと巣穴を掘るだろう?それと同じじゃ。投資も、未来を完璧に読むことはできん。だからこそ、一喜一憂せず、淡々と、決まったルールで、長期間続けることが、心を穏やかに保ち、結果として資産を築くことに繋がるのじゃ。ぴょんぴょん跳ねる相場に、いちいち心を乱されていては、立派な王女にはなれんぞ。」
小さなプリンセスの大きな一歩

ちろ姫:
「そっか…。あたち、わかった気がする!一気にりんごを食べようとしたみたいに、ニンジンも一気に使っちゃうと、もし値段が下がった時にすっごく悲しくなっちゃう。でも、毎月ちょっとずつにすれば、値段が下がった時は『ラッキー!いっぱい買える!』って思えるし、値段が上がった時も、前に安く買った分があるから嬉しくなれる。そういうこと?」
てち王:
「…素晴らしいぞ、ちろ姫!まさにその通りじゃ!朕の妹は、やはり賢いな!」
てち王は心から感心し、ちろ姫の頭をもう一度、優しく、そして少し力強く撫でました。
ちろ姫:
「えへへ!じゃあ、あたち、このりんごも毎日1個ずつ食べることにする!そしたら、長く楽しめるもんね!」
そう言うと、ちろ姫はカゴからりんごを一つだけ取り出し、シャクっと小さな口でかじり始めました。残りのりんごは、大切そうにふわふわの布で包んでいます。その姿は、もうただの食いしん坊なプリンセスではなく、未来のふわふわ星を担う、賢明な王女の姿そのものでした。
こうして、ちろ姫は「ドルコスト平均法」という、資産形成における非常に重要な知恵を一つ学びました。すぐにぴょんぴょんと跳ねてしまう彼女が、長期的な視点を持つことの大切さを理解した、記念すべき一日となったのです。投資の世界は奥が深いですが、その第一歩は、毎日りんごを一つ食べるような、ささやかで、しかし賢明な習慣から始まるのかもしれませんね。
ナレーターによる用語解説
今回の物語で登場した「ドルコスト平均法」について、改めて解説します。
ドルコスト平均法とは
価格が変動する金融商品を、常に一定の金額で、定期的に買い続ける投資手法です。「定額購入法」とも呼ばれます。株価や為替などが高い時には少なく、安い時には多く購入することになり、結果的に平均購入単価を平準化させる効果が期待できます。
メリット
平均購入単価の平準化: 価格が高い時には少なく、安い時には多く購入するため、長期的に見ると購入単価が安定しやすくなります。
高値掴みのリスク軽減: 一括投資で市場の最高値で買ってしまう「高値掴み」のリスクを大幅に低減できます。
専門的な知識や市場予測が不要: 「毎月1日に1万円分購入する」といったルールを決めてしまえば、あとは機械的に続けるだけなので、投資のタイミングに悩む必要がありません。
精神的な負担の軽減: 株価の短期的な変動に一喜一憂することなく、冷静に投資を続けやすいという心理的なメリットは非常に大きいです。
少額から始められる: 多くの金融機関で月々1,000円や100円といった少額から積立設定が可能で、初心者でも始めやすいのが特徴です。
デメリット
右肩上がりの相場ではパフォーマンスが劣後する可能性: 価格が一貫して上昇し続ける相場では、最初に一括投資した方が、平均購入単価が最も安くなるため、ドルコスト平均法はパフォーマンスで劣後します。
利益を保証するものではない: 平均購入単価を下げる効果は期待できますが、投資であるため元本割れのリスクは常に存在します。市場全体が長期的に下落し続ければ、損失が発生します。
手数料: 購入の都度、手数料がかかる金融商品の場合、少額で頻繁に購入すると手数料が割高になる可能性があります。NISAなどを活用し、購入時手数料のかからない(ノーロード)投資信託を選ぶなどの工夫が重要です。
どのような人・投資に向いているか
ドルコスト平均法は、特に「長期・積立・分散」を基本とする資産形成と非常に相性が良い手法です。具体的には、つみたて投資枠が設けられている新NISAや、iDeCo(個人型確定拠出年金)などを活用した、投資信託の積立投資に最適です。日々の値動きを追う時間がない会社員の方や、これから老後資金や教育資金を準備していきたい投資初心者の方にとって、心強い味方となるでしょう。
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