バリュー投資とは?初心者向けにわかりやすく解説【うさぎでも分かる】

バリュー投資とは?初心者向けにわかりやすく解説【うさぎでも分かる】

プロローグ:ふわふわ星のきらびやかな市場にて

ここは宇宙のどこかにある、何もかもがふわふわな惑星、その名も「ふわふわ星」。この星では、我々が使う「円」や「ドル」の代わりに、うさぎ達の大好物である「ニンジン」が通貨として使われています。

ある晴れた日の午後、ふわふわ星の王様である「てち王」と、その妹「ちろ姫」は、星で一番賑わうニンジン市場へお買い物にやってきました。

ちろ姫:「わーい!お買い物、お買い物!あたち、キラキラのニンジン・アクセサリーが欲しいなっ!」

てち王:「こらこら、ちろ姫。あまりはしゃぐでない。王女たるもの、いつでも落ち着きを…」

ぴょんぴょん跳ね回るちろ姫の視線の先には、陽の光を浴びてピカピカに輝く「高級おやつカゴ」がありました。その値札には「1,000ニンジン」と書かれています。

ちろ姫:「てち兄様!あたち、あれが欲しい!見て!あんなにピカピカで、とっても価値がありそうだわ!」

てち王は、そのおやつカゴをじっと見つめ、優しく首を横に振りました。

てち王:「ちろ姫よ。見た目がピカピカしているからといって、本当にそれだけの価値があるとは限らないのだよ。今日は来るべき王女教育の一環として、モノの『本当の価値』を見抜く、大切な投資のお話をしよう。」

ちろ姫:「とーし?それよりおやつの方がいいなー!」

てち王:「うむ。まあ、まずはあそこの切り株に座って、朕の好物であるイチゴでも食べながらゆっくり話すとしようか。」

こうして、ふわふわ星の兄妹による、ちょっと不思議な経済のお勉強が始まったのでした。今日のテーマは、かの有名な投資家ウォーレン・バフェットも得意とする投資手法、「バリュー投資」についてです。


「高い」と「価値がある」は違う?

てち王:「ちろ姫。さっきのおやつカゴ、なぜ1,000ニンジンもするのに欲しくなったのだ?」

ちろ姫:「だって、ピカピカしてたもん!それに、みんなが『すごい、すごい』って見てたから、きっとすごい価値があるんだって思ったの!」

てち王:「うむ。それが第一の罠だ。多くの者は、人気があったり、値段が高かったりするものを、『価値がある』と勘違いしてしまう。だが、投資の世界では、その考え方はとても危険なのだ。」

ちろ姫:「ふえー、そうなの?」

てち王:「そうだ。例えば、ここに朕のニンジンが1本ある。これは市場で買うと1ニンジンだ。これがこのニンジンの『価格』だ。」

ちろ姫:「うんうん!あたちのリンゴと同じくらいね!」

てち王:「では、もし朕がこのニンジンを使って、絶品のニンジンジュースを作ったらどうだろう?そのジュースは、飲む者をたちまち幸せな気持ちにさせ、明日への活力を与える。そのジュースがもたらす価値は、果たして1ニンジンのままだろうか?」

ちろ姫:「うーん…もっと価値がありそう!だって、飲んだら幸せになれるんでしょ?だったら、あたちは5ニンジンでも買うわ!」

てち王:「その通り!ちろ姫が感じた『5ニンジンでも払う価値がある』というのが、そのジュースの『本質的な価値(ファンダメンタル・バリュー)』に近い考え方だ。バリュー投資とは、このように『価格』と『価値』の差に着目する投資法なのだよ。」

バリュー投資の神髄は、企業の「本質的な価値」を見極め、その価値よりも大幅に安い「価格」で取引されている株式を購入することにあります。つまり、「良いものを、安く買う」という、買い物の基本と同じ考え方なのです。

ちろ姫:「じゃあ、さっきのピカピカのカゴは、本当はそんなに価値がなかったってこと?」

てち王:「うむ。あそこの露店のうさぎは商売上手でな。普通のカゴに飾り付けをして、あたかも高級品であるかのように見せかけているだけだ。中に入っているおやつも、干草が少しだけ。その『本質的な価値』は、おそらく50ニンジンといったところだろう。それを市場の人気だけで1,000ニンジンで買うのは、『賢い投資』とは言えない。」

ちろ姫:「そっかー!あぶないあぶない。あたちの干草とりんごが、1,000ニンジン分も消えちゃうところだったわ…。」


どうやって「本当の価値」を見つけるの?

ちろ姫:「でもてち兄様、どうやったらその『本質的な価値』ってやつが分かるの?ちろには、難しいわ。」

てち王:「良い質問だ、ちろ姫。さすがは我が妹。それを見極めるために、我々投資家はいくつかの『魔法のメガネ』を使うのだ。」

ちろ姫:「魔法のメガネ!?」

てち王:「そうだ。例えば、その会社がどれだけ効率よくニンジン(利益)を稼いでいるかを見るための『PER(株価収益率)』というメガネがある。」

ちろ姫:「ぴーいーあーる?」

てち王:「うむ。簡単に言えば、会社の『価格(時価総額)』が、その会社が1年間で稼ぐニンジン(純利益)の何倍かを示す指標だ。この数字が低ければ低いほど、稼ぐ力に対して『価格』が割安だと判断できる。」

PER(Price Earnings Ratio)は、株価を1株あたりの純利益で割って算出されます。例えば、株価が1,000ニンジンで、1株あたりの利益が100ニンジンの会社なら、PERは10倍です。これは、「もし会社が毎年同じだけ稼ぐなら、投資したニンジンを10年で回収できる」という見方ができます。業界によって平均値は異なりますが、一般的にこの数値が低いほど割安とされます。

ちろ姫:「へぇー!じゃあ、PERが低い会社の株を買えばいいのね!」

てち王:「慌てるでない、ちろ姫。それだけでは不十分だ。会社が倒産してしまっては元も子もないだろう?だから、その会社がどれだけの純資産(解散した時に残る価値)を持っているかを見る『PBR(株価純資産倍率)』というメガネも使うのだ。」

ちろ姫:「ぴーびーあーる…だんだん眠くなってきたわ…」

てち王:「こら、起きなさい。これは、会社の『価格(時価総額)』が、持っている純資産の何倍かを示すものだ。もしPBRが1倍なら、会社の価格と純資産が同じということ。そして、もし1倍を大きく下回っていれば、その会社が今すぐ解散したとしても、投資したニンジンが戻ってくる可能性が高い、ということになる。非常に割安だと言えるだろう。」

PBR(Price Book-value Ratio)は、株価を1株あたりの純資産で割って計算されます。PBRが1倍割れの企業は、市場がその企業の将来性などを悲観し、本来持っている資産価値よりも低く評価している状態と考えることができます。バリュー投資家は、このような企業の中から、将来的に評価が見直されるであろう「お宝銘柄」を探し出すのです。

てち王:「このように、PERやPBRといった『魔法のメガネ』を通して企業を分析し、『本質的な価値』よりも安い価格で放置されている株、つまり『バーゲンセールの株』を探し出す。これがバリュー投資の第一歩なのだ。」

ちろ姫:「なるほどー!ピカピカに騙されちゃダメなのね。中身が大事ってことね!」


「割安株」は生まれるの?

ちろ姫:「でも、どうしてそんなにお買い得な『バーゲンセールの株』なんてものが存在するの?みんなが買えば、すぐに値段が上がっちゃうんじゃない?」

てち王:「それは、市場に参加しているうさぎ達の『感情』が大きく影響しているからだ。」

てち王は、遠くの市場を指さしました。あるお店の前では、たくさんのうさぎ達が大騒ぎしています。

てち王:「見なさい、ちろ姫。あそこでは『最新型おもちゃ』が発売されて、皆が熱狂している。ああなると、うさぎ達は冷静な判断を失い、そのおもちゃの『本質的な価値』を無視して、ただ『流行っているから』という理由で高い値段でも買ってしまう。」

ちろ姫:「あ!あたちも昨日、お友達が持ってたから新しいリボンが欲しくなっちゃった!」

てち王:「うむ。それと同じだ。逆に、少し古くなったけれど、とても丈夫で性能の良いおもちゃ屋さんはどうかな?今は誰も見向きもせず、店の前は閑散としている。しかし、そのおもちゃの『本質的な価値』は少しも変わっていない。むしろ、人気がないせいで、『価格』は本来の価値よりもずっと安くなっているかもしれない。」

株式市場も同様です。一時的な悪いニュースや、地味で目立たない業界であるといった理由で、本来の実力とは関係なく株価が売られすぎることがあります。バリュー投資家は、そのような市場の「恐怖」や「無関心」の中にこそ、絶好の投資機会が眠っていると考えます。皆が熱狂している派手な成長株ではなく、皆が見向きもしない不人気な株の中から、ダイヤモンドの原石を探し出すのです。

てち王:「つまり、市場の過剰な悲観が、割安な株を生み出すのだ。我々バリュー投資家は、群衆の逆を行く。皆が怖がって売っている時に買い、皆が欲しがって熱狂している時には静かに見守る。そのためには、自分自身で価値を判断する確固たる目と、周りに流されない強い心が必要なのだよ。」

ちろ姫:「ひえー!なんだかカッコイイわ、てち兄様!朕って感じ!」

てち王:「ふふ、当然だ。朕はふわふわ星の王だからな。…さあ、そろそろ日が暮れる。今日の勉強はここまでにして、お城に帰るとしよう。」


エピローグ:今日からできる第一歩

てち王に連れられてお城への帰り道を歩きながら、ちろ姫は市場のお店をこれまでとは少し違う目で見ていました。

ちろ姫:(あのお店のニンジンパンは、いつも行列ができてて人気だけど、本当に美味しいから、今の価格は安すぎるのかもしれないな…)

ちろ姫:(あっちの家具屋さんは、見た目は古いけど、作ってる椅子はすごく丈夫で長持ちするって評判だわ。もっと価値が認められてもいいのに…)

てち王は、そんな妹の様子を満足げに眺めていました。モノの「価格」だけを見るのではなく、その裏にある「価値」について考えること。それこそが、バリュー投資家としての最も重要な才能の始まりだからです。

この記事を読んでくださっているあなたも、ぜひ今日から、身の回りにあるお店や商品について、「この価格は、その本当の価値に見合っているだろうか?」と考えてみてください。

例えば、いつも利用しているカフェのコーヒーは、なぜその価格なのでしょう?居心地の良い空間、店員さんの素晴らしい接客、こだわりの豆…それら全てが「価値」を構成しています。その価値に対して、今の価格は高いですか?それとも安いですか?

このように、日常の中から「価値」と「価格」の差を意識する訓練をすることが、将来、素晴らしいバリュー投資家になるための、確実な第一歩となるのです。

さあ、あなたも一緒に、賢いうさぎ達と経済の冒険に出かけませんか?


本日の学び:バリュー投資の重要用語解説

  • バリュー投資とは: 企業の「本質的な価値」よりも株価が割安な状態にある銘柄に投資する手法。「良いものを安く買う」というシンプルな考え方に基づいている。市場の人気や短期的な値動きに惑わされず、長期的な視点で価値が正当に評価されるのを待つ。
  • 本質的な価値(ファンダメンタル・バリュー): 企業が本来持っている価値のこと。企業の収益力、資産、ブランド力、技術力といった、様々な要素(ファンダメンタルズ)を分析して算出される。この価値を正確に見積もることが、バリュー投資の成功の鍵となる。
  • PER (Price Earnings Ratio / 株価収益率): 株価が1株あたりの純利益の何倍かを示す指標。企業の収益力に対して株価が割安か割高かを判断する際に用いられる。一般的に、数値が低いほど割安とされる。 計算式: PER(倍) = 株価 ÷ 1株あたり純利益(EPS)
  • PBR (Price Book-value Ratio / 株価純資産倍率): 株価が1株あたりの純資産の何倍かを示す指標。企業の資産価値に対して株価が割安か割高かを判断する際に用いられる。特に、PBRが1倍を割れていると、企業の解散価値よりも株価が安い状態とされ、割安の目安とされる。 計算式: PBR(倍) = 株価 ÷ 1株あたり純資産(BPS)