【初心者向け】AI株投資の始め方!将来性とリスクをわかりやすく解説
- 2025.10.21
- うさぎで学ぶシリーズ 時事・トレンド
- ETF (上場投資信託), ファンダメンタルズ分析, 投資初心者, 株式投資, 米国株
プロローグ:ふわふわ星に吹く、新しい風
宇宙のどこかにある、何もかもがふわふわな惑星「ふわふわ星」。そこに住むうさぎたちは、今日も元気にニンジン畑を耕し、穏やかな毎日を過ごしていました。
おや、あそこにいるのは、ふわふわ星のプリンセス、ちろ姫様ですね。何やらぴょんぴょん跳ねて、とってもご機嫌な様子。どうしたのでしょうか?
ちろ姫:「あたち、聞いたんだ!『えーあい株』っていうのを買えば、おやつが山ほど手に入るって!干し草もりんごも、食べ放題なんだって!」
目をキラキラさせながら、兄であるてち王に駆け寄るちろ姫。その手には、どこで手に入れたのか、経済新聞のようなものが握られています。
てち王: 「(やれやれ、また何か吹き込まれたようだな…)ちろ姫、落ち着きなさい。その『えーあい株』とやらは、一体誰から聞いたんだ?」
てち王は、妹の純粋すぎる瞳を見つめながら、優しく、しかし少しだけ呆れたように尋ねます。王として、そして兄として、彼女を正しい道に導くのが彼の役目なのです。
ちろ姫:「えっとね!耳が長くて、しっぽがふさふさの、とっても物知りなキツネさんから!」
てち王:「……朕は、そのキツネに心当たりがあるぞ。」
てち王が深いため息をついた、その時でした。
甘い誘惑と「未公開AI株」の罠
コンコン・フォックス:「コーン、コーン、コーン!これはこれは、てち王様にちろ姫様。素晴らしい未来のお話をされているようですね、コン!」
物陰からぬるり、と現れたのは、コンコン星からやってきたコンコン・フォックス。口元は笑っていますが、その目は少しも笑っていません。
ちろ姫:「あ!さっきのキツネさん!」
コンコン・フォックス:「姫様、ご理解が早くていらっしゃる!そう、AI!人工知能!これからの宇宙はAIが全てを支配するのですコン!そして、その波に乗った者だけが、莫大な富…いえ、莫大なニンジンを手に入れることができる!」
コンコン・フォックスは、一枚の怪しげなチャートを取り出します。そこには、天を突き破るかのような右肩上がりのグラフが描かれていました。
コンコン・フォックス:「実はですね、姫様だけに特別なお話があるんですコン。まだ市場には出ていない、我がコンコン星の天才たちが開発した超絶AI技術を持つ会社の『未公開株』…これを姫様だけに、おやつのリンゴ100個分で譲ってしんぜよう!上場すれば、1万個のリンゴになるのは確実ですコン!」
ちろ姫:「り、りんごが1万個!?すごーい!あたち、買う!今すぐ買う!」
今にも大切なおやつ倉庫の鍵を渡してしまいそうな妹を見て、てち王は静かに、しかし力強くその手を制しました。
てち王:「待て、ちろ姫。コンコン・フォックス、お前の話はあまりにも虫が良すぎる。第一、本当に価値があるものなら、なぜ見ず知らずの我々にそんな『うまい話』を持ってくるのだ?」
AIとは何か?ブームの正体を暴く
てち王の冷静な一言に、コンコン・フォックスは一瞬言葉に詰まります。その隙を逃さず、てち王はちろ姫に向き直りました。
てち王:「ちろ姫。まずAI、人工知能が何かを理解するところから始めよう。AI自体は、我々の生活を豊かにする素晴らしい技術だ。自動で畑を耕すトラクターや、天気予報の精度を上げるシステムなど、すでに我々の周りにもたくさん使われている。」
ちろ姫:「うんうん!あたちのニンジン収穫ゲームも、AIが敵の動きを考えてるんだって!」
てち王:「その通りだ。そして今、株式市場で注目されているのは、このAI技術が爆発的に進化し、社会のあらゆる分野を根底から変えようとしているからだ。特に重要な役割を担っている企業がいくつかある。」
てち王は、ふわりと空中にお手製のチャートを映し出します。
てち王:「まず、AIを動かすための『脳みそ』、つまり超高性能な半導体(GPU)を作っている会社。代表的なのはNVIDIA(エヌビディア)という会社だな。AI開発という金脈を掘るために、世界中の企業が彼らの作る『ツルハシ』を買い求めているようなものだ。だから、彼らの業績は凄まじい勢いで伸びている。」
ちろ姫:「つるはし屋さん!なるほどー!」
てち王:「次に、その『脳みそ』を使って、我々が使えるサービスを作り出す会社。例えば、Microsoft(マイクロソフト)は、ChatGPTという対話AIを開発したOpenAI社に巨額の投資をし、自社のサービスに組み込んでいる。Google(グーグル)も、Geminiという高性能AIを開発して対抗している。彼らは、AIという新しい道具を使って、自分たちの帝国をさらに広げようとしているんだ。」
てち王:「さらに、そうしたAIサービスを動かすための広大な『土地』、つまりクラウドコンピューティングを提供している会社もいる。Amazon(アマゾン)や、先ほどのマイクロソフトがその代表格だ。多くの企業が自前で巨大なサーバーを持つ代わりに、彼らの土地を借りてAIを動かしている。土地の持ち主は、利用料で安定して儲かるというわけだ。」
ちろ姫は、兄の分かりやすい説明に、キラキラしていた目をさらに輝かせます。
ちろ姫:「へぇー!AIって、色々な会社が関わっているんだね!じゃあ、やっぱりNVIDIAって会社の株を買えば、リンゴが1万個になるの!?」
てち王:「そこが、投資の最も難しく、そして面白いところだ。」
熱狂の裏に潜むリスクと、賢者の選択
てち王は、コンコン・フォックスを鋭い目つきで一瞥してから、話を続けました。
てち王:「確かにこれらの会社は素晴らしい。だが、『素晴らしい会社』であることと、『株価がこれからも上がり続けるか』は、必ずしもイコールではないのだ。いくつか注意点がある。」
1.バブルの危険性(高すぎる期待)
てち王:「まず、『バブル』の可能性だ。今のAIブームは、2000年頃にあったドットコムバブルに似ているという専門家もいる。当時は『インターネットが世界を変える!』という熱狂で、関連企業の株価が実力以上に跳ね上がった。しかし、その後バブルが弾け、多くの会社が消え、投資家は大損害を被った。」
ちろ姫:「バブル…?シャボン玉みたいに、パチンってなっちゃうの?」
てち王:「まさにその通りだ。株価の割高さを測る指標の一つにPER(株価収益率)というものがある。これは、会社の利益に対して株価が何倍まで買われているかを示す。例えば、PERが20倍なら、投資した資金を会社の利益だけで回収するのに20年かかる、という意味合いだ。今のNVIDIAのPERは70倍を超えている(※実際の数値は常に変動します)。これは『20年どころか70年かかるけど、それでも将来の成長に期待して買いたい!』という投資家が、世界中に大勢いるということの表れだ。この期待が、もし少しでも裏切られれば…株価は大きく下がるリスクを孕んでいる。」
2.過当競争と未来の不確実性
てち王:「二つ目は、競争の激しさだ。NVIDIAの牙城を崩そうと、AMDやIntelといったライバルも必死に高性能な半導体を開発している。GoogleとMicrosoftのAI開発競争も熾烈だ。今はNVIDIA一強に見えても、5年後、10年後にどの会社が覇権を握っているかは誰にも断言できない。一つの会社に全財産を投じるのは、一つのカゴに全てのニンジンを盛るようなもの。もしそのカゴを落としたら…」
ちろ姫:「ぜ、全部ダメになっちゃう…!」
3.詐欺師の甘い言葉
てち王:「そして三つ目だ。」
てち王は、ついにコンコン・フォックスを真正面からさしました。
てち王:「『未公開株』『あなただけに』『絶対に儲かる』。これは、いつの時代も詐欺師が使う常套句だ。本当に有望な未公開株の話が、こんな道端で簡単に手に入るわけがない。それは、熟す前のニンジンを『これは伝説の虹色ニンジンだ』と言って売りつけるようなものだ。」
図星を突かれたコンコン・フォックスの顔が、みるみる青ざめていきます。
賢い投資家への第一歩
てち王:「では、ちろ姫はどうすればいいのか。AIの未来を信じるならば、取るべき道は二つある。」
てち王:「一つは、今話したような個別の会社を徹底的に調べ、リスクを理解した上で、自分の資産の一部で投資すること。これは高いリターンも狙えるが、相応の知識と覚悟が必要だ。」
てち王:「そして、もう一つ。初心者であるちろ姫に朕が勧めるのは、ETF(上場投資信託)という仕組みを活用することだ。」
ちろ姫:「いーてぃーえふ…?」
てち王:「うむ。例えば、米国のハイテク企業全体にまとめて投資できる『QQQ』というETFや、AI関連企業をバスケットのように詰め合わせたETFなどがある。これらを一つ買うだけで、NVIDIAやMicrosoft、Googleといった主要な会社に、少しずつ分散投資したのと同じ効果が得られる。一つの会社が不調でも、他の会社が好調なら、大きな損失を防ぐことができる。いわば、たくさんのカゴにニンジンを少しずつ分けて入れておく、安全な方法だ。」
てち王の理路整然とした説明に、ぐうの音も出ないコンコン・フォックス。
コンコン・フォックス:「コ、コン…!覚えてろコン!次こそは、もっと凄い話を持ってきてやるコーーーーン!」
そう捨て台詞を吐くと、コンコン・フォックスは尻尾を巻いてコンコン星へと逃げ帰っていきました。
ちろ姫:「てち王お兄様…あたち、また騙されるところだった…。AI株って、ただキラキラしてるだけじゃないんだね。ちゃんと勉強しなきゃダメなんだ。」
しょんぼりする妹の頭を、てち王は優しく撫でました。
てち王:「それでいいんだ、ちろ姫。熱狂に踊らされるのではなく、その本質を学び、リスクを理解し、自分に合った方法で賢く付き合っていく。それが王女に、そして立派な投資家になるための第一歩だ。さあ、今日の勉強はここまで。褒美に特別なイチゴをやろう。」
ちろ姫:「わーい!お兄様、大好き!」
こうして、ふわふわ星の平和な一日は、また一つ賢くなったプリンセスの笑顔と共に暮れていくのでした。未来の技術への投資は、甘い言葉に惑わされず、確かな知識という土台の上に築くべきもの。うさぎたちは、身をもってそれを学んだのです。

用語解説コーナー
本日の物語に登場した、少し難しい金融・経済用語を分かりやすく解説します。
- AI (人工知能)
人間の知的活動をコンピュータで模倣したソフトウェアやシステムのこと。画像認識、自然言語処理、将来予測など、その応用範囲は多岐にわたります。 - 半導体 (Semiconductor)
電気を通す「導体」と通さない「絶縁体」の中間の性質を持つ物質。スマートフォンやPC、そしてAIを動かすサーバーに不可欠な電子部品で、「産業のコメ」とも呼ばれます。特にAIの計算にはGPU (Graphics Processing Unit) という画像処理用の半導体が高い性能を発揮します。 - PER (株価収益率)
Price Earnings Ratioの略。株価が1株あたりの純利益の何倍かを示す指標です。一般的に、数値が高いほど株価は割高、低いほど割安と判断されますが、成長期待の高いハイテク企業などはPERが高くなる傾向があります。 - ETF (上場投資信託)
Exchange Traded Fundの略。日経平均株価や米国のS&P500といった特定の株価指数などに連動するように運用される投資信託の一種で、証券取引所に上場しており、株式と同じようにいつでも売買できます。少額から分散投資ができるのが大きなメリットです。 - ドットコムバブル
1990年代後半から2000年初頭にかけて、米国で起きたIT・インターネット関連企業の株価が実態を伴わずに異常に高騰した現象のこと。多くの企業が倒産し、バブルは崩壊しました。熱狂的なブームが去った後の大きな下落リスクを教える歴史的な出来事として知られています。
-
前の記事
【初心者向け】短期投資と長期投資どっちがいい?違いと自分に合う選び方を徹底解説 2025.10.21
-
次の記事
【初心者向け】円安で投資はどう変わる?資産を守り増やすNISA活用術を解説 2025.10.21