【初心者向け】円安で投資はどう変わる?資産を守り増やすNISA活用術を解説
プロローグ:ノンビリ星からの訪問者
ふわふわ星は、その名の通り、何もかもがふわふわした雲の上にある平和な星。地面も、木も、お城までもが綿菓子のように柔らかく、住人であるうさぎたちは毎日をのんびりと過ごしていました。
そんなある日の午後、ふわふわ星のお城に、甲羅にたくさんの荷物を載せた訪問者がやってきました。ノンビリ星に住む、亀のノンビリ・タートルさんです。
てち王:「こんにちは、タートルさん。遠いところからようこそふわふわ星へ。」
お出迎えしたのは、この星の若き王、てち王。そして、その傍らでぴょんぴょんと跳ねているのは、妹のちろ姫です。
ちろ姫:「タートルさんだー!こんにちはー!おやつ食べる?」
てち王:「こら、ちろ姫。お客様にご挨拶が先だ。…それで、タートル殿。今日はどうされたかな?少し顔色が優れないようだが。」
てち王の言葉に、タートルさんは甲羅から首をゆっくりと伸ばし、困ったような顔で言いました。
ノンビリ・タートル:「てち王様…。実はご相談したいことがありまして…。わたくし、将来のためにと、一生懸命働いて通貨である『ニンジン』を貯めてきたんです。お城の地下金庫には、1万本のニンジンがぎっしりと…。ですが、最近おかしなことが起きているんです。」
ちろ姫:「1万本のニンジン!?すごーい!あたちなら毎日ニンジンパーティしちゃう!」
てち王:「ちろ姫、静かになさい。…おかしなこと、とは?」
ノンビリ・タートル:「はい。隣のキラキラ星から、ピカピカ光る『星の砂』を輸入して、庭に飾るのが趣味なのですが…。去年は100ニンジンで瓶いっぱい買えたのに、今年は同じ量を買うのに120ニンジンも必要だと言われてしまったのです。私のニンジンは1本も減っておりませんのに…まるで、ニンジンの価値が減ってしまったかのようで…。」
タートルさんの切実な悩みに、てち王は優しく、しかし真剣な眼差しで頷きました。
てち王:「なるほどな。それは『ニンジンの価値が安くなっている』、つまり『ニンジン安』…地球の言葉で言うところの『円安』と同じ現象が起きているということだ。」
ちろ姫:「えんやす?なにそれ、おいしいの?」
てち王:「ふふ、食べ物ではないぞ、ちろ姫。だが、我々の生活や、特に投資に深く関わる、とても大切な話だ。よし、今日はこの『円安』が、我々の資産にどのような影響を与えるのか、そしてどう向き合っていくべきかを学んでいこう。タートル殿も、ぜひ聞いていかれるとよい。」
こうして、ふわふわ星のお城で、ちょっぴり難しいけれど、とても大切な経済の勉強会が始まったのです。
そもそも「円安(ニンジン安)」って何?
ちろ姫:「てち兄様!ニンジンが安くなるってどういうこと?あたちのニンジンも価値が下がっちゃうの?」
りんごをかじりながら、ちろ姫が首をかしげます。
てち王:「うむ。良い質問だ、ちろ姫。まず基本から理解しよう。『円安』や『ニンジン安』というのは、自分の国の通貨の価値が、外国の通貨に対して相対的に低くなることを指す。」
ノンビリ・タートル:「相対的…ですか?」
てち王:「そうだ。例えば、キラキラ星の通貨が『キラキラコイン』だとしよう。以前は『1キラキラコイン=100ニンジン』で交換できた。これが、タートル殿が去年、星の砂を買った時のレートだな。これを為替レートという。」
てち王は、ふわふわの雲に木の枝で図を描き始めました。
てち王:「だが、今は『1キラキラコイン=120ニンジン』になってしまった。以前と同じ1キラキラコインを手に入れるために、より多くのニンジンが必要になっている。これが、『ニンジンの価値が安くなった』、つまりニンジン安の状態だ。」
ちろ姫:「ふむふむ。だから、キラキラ星から輸入している『星の砂』が値上がりしたんだね!」
てち王:「その通りだ、ちろ姫。輸入品は高くなる。そなたが好きな外国産のりんごも、以前より多くのニンジンを払わないと買えなくなるかもしれん。逆に、我々が他の星へ輸出しているふわふわ星特産の『ふわふわウール』は、外国の者から見れば安く買えることになる。だから、輸出をしている者にとっては有利に働くこともある。」
ノンビリ・タートル:「なるほど…。わたくしのように、ただニンジンを貯金しているだけだと、外国の物を買う力が弱まってしまうのですね。これは由々しき事態ですぞ…。」
タートルさんが青ざめた顔で甲羅に引っ込みそうになったその時、てち王は優しく続けました。
てち王:「だが、悲観するのはまだ早い。この『円安』という状況は、投資をしている者にとっては、大きなチャンスにもなり得るのだ。特に、外国の資産を持っている場合はな。」
円安が投資に与える2つの影響
ちろ姫:「投資!あたち、てち兄様に言われて『宇宙S&P500』っていうのを毎月コツコツ買ってるよ!それも関係あるの?」
『宇宙S&P500』とは、宇宙に浮かぶ特に成長著しい500社の企業の株をまとめたパッケージ商品(投資信託)のことです。
てち王:「もちろんだ。大いに関係があるぞ。円安は、投資において大きく分けて2つの影響を考える必要がある。『外国の資産』への影響と、『国内の資産』への影響だ。」
影響その1:外国資産(外貨建て資産)を持っている場合
てち王:「ちろ姫が持っている『宇宙S&P500』は、様々な星の企業の株の集まりだから、その価値は基本的に外国の通貨(例えば『宇宙ドル』)で計算される。こういう資産を外貨建て資産と呼ぶ。」
てち王:「仮に、そなたが100宇宙ドル分の『宇宙S&P500』を持っていたとしよう。以前のレート『1宇宙ドル=100ニンジン』の時なら、それは1万ニンジン(100ドル × 100ニンジン)の価値があった。だが、ニンジン安が進んで『1宇宙ドル=120ニンジン』になった今、同じ100宇宙ドル分の資産は、いくらの価値になるかな?」
ちろ姫:「えーっと…100ドルかける120ニンジンだから…1万2000ニンジン!わーい!2000ニンジンも増えてる!」
てち王:「うむ、正解だ。宇宙S&P500自体の価値が全く変わっていなくても、ニンジン安になっただけで、ニンジンに換算した時の価値は増える。これを為替差益(かわせさえき)という。つまり、円安は、米国株や全世界株式のような外貨建て資産を持っている者にとっては、資産が増える追い風になるのだ。」
ノンビリ・タートル:「おお…!貯金しているだけだと損した気分になりますが、外国の資産を持っていれば、逆に資産が増えることもあるのですね。」
影響その2:国内資産(日本株など)を持っている場合
てち王:「次に、ふわふわ星の中、つまり日本国内の企業の株を持っている場合を考えよう。こちらは少し複雑だ。」
てち王:「先ほども話した通り、円安は輸出企業にとっては追い風だ。例えば、ふわふわ星の技術を結集した最新型ロケットを製造し、他の星に輸出している『フワフワ重工業』のような会社は、製品が売れやすくなり、儲けも増える。だから株価も上がりやすい。」
ちろ姫:「なるほどー!じゃあ、輸入している会社は逆?」
てち王:「その通りだ、ちろ姫。原材料のほとんどを外国からの輸入に頼っている『モグモグ製パン』のような会社は、仕入れコストが上がって利益が圧迫される。そうなると、業績が悪化して株価は下がりやすくなるかもしれん。もちろん、値上げをして対応できる企業もあるがな。」
ノンビリ・タートル:「むむむ…、同じ国内の株でも、円安がプラスに働く企業とマイナスに働く企業があるのですね。これは奥が深い…。」
てち王:「そうだ。だからこそ、円安だからと単純に『日本株はダメだ』とか『外国株が良い』と判断するのではなく、自分の持っている資産がどのような影響を受けるのかを、冷静に分析することが重要なのだ。」
てち王がそう締めくくった、まさにその時でした。 お城の窓から、ずる賢そうな影がスッと入り込んできたのです。
コンコン・フォックスの甘い誘惑
コンコン・フォックス:「クックックッ…、王様のやり方はまどろっこしいコン!そんなチマチマした話じゃ、いつまで経ってもニンジンは増えないコンよ!」
声の主は、コンコン星からやってきた悪徳投資家のコンコン・フォックス。いつも甘い話でうさぎたちを騙そうと企んでいます。
ちろ姫:「あ!コンコン・フォックス!また来たの!」
コンコン・フォックス:「ちろ姫様、良いところに来たコン!ニンジン安の今こそ、一瞬で大金持ちになるビッグチャンスだコン!王様の言うような長期投資なんて、亀の歩くようなもの。これからはスピードが命だコン!」
コンコン・フォックスは、キラキラと怪しく光る端末をちろ姫の前に突き出しました。
コンコン・フォックス:「これこそが究極の投資術、FX(ふわふわ・エクスチェンジ)だコン!ニンジンが安くなる方に賭けて、ほんの少しの元手(証拠金)で、何十倍、何百倍もの取引ができる!ニンジン安が続けば、姫様は一晩でニンジンの山を築けるコンよ!」
ちろ姫:「ええっ!?一晩で!?それすごい!」
目を輝かせるちろ姫。その様子を見て、てち王が静かに、しかし力強い声で制しました。
てち王:「待て、ちろ姫。その話には大きな罠がある。」
てち王:「コンコン・フォックスが言っているのは、レバレッジをかけたハイリスクな取引のことだ。確かに、予想が当たれば大きな利益を得られるが、少しでも予想が外れれば、預けた元手(証拠金)のすべて、場合によってはそれ以上の損失を被ることもある。それはもはや投資ではなく、丁半博打…投機(ギャンブル)に他ならない。」
コンコン・フォックス:「な、何を言うコン!これは立派な金融商品だコン!」
てち王:「ふん。お主は、ちろ姫が取引をするたびに入る手数料が目当てなのだろう。初心者が安易に手を出すべきものではない。特に、ちろ姫のように落ち着きのない者が手を出せば、大切なおやつ代まで一瞬で溶かしてしまうのが関の山だ。」
ちろ姫:「お、おやつ代が…!?それは困る!」
てち王に図星を突かれ、論破されたコンコン・フォックスは「キーッ!」と悔しそうな声を上げると、一目散にコンコン星へと逃げ帰っていきました。

円安時代を生き抜くための処方箋
嵐が去ったお城で、てち王はちろ姫とタートルさんに改めて向き直りました。
てち王:「さて、少し騒がしくなったが、今日のまとめをしよう。円安という状況に、我々はどう向き合えばよいのか。朕からの処方箋は2つだ。」
処方箋1:貯金だけの人は「円安への備え」を始めよう
てち王:「まずはタートル殿。ニンジンを貯金しているだけでは、今回のように実質的な価値が目減りしてしまうリスクがある。これをインフレーション(インフレ)リスクとも言う。だからこそ、資産の一部を外貨建て資産に変えておくことが有効な備えとなる。」
ノンビリ・タートル:「外貨建て資産…というと、ちろ姫様がお持ちの『宇宙S&P500』のようなものですかな?」
てち王:「うむ。全世界の株式に分散して投資するような投資信託(オルカンなど)は、手軽に始められる良い選択肢の一つだ。もちろん投資だから元本保証ではないが、資産をニンジン(円)だけで持っておくリスクを和らげる(ヘッジする)効果が期待できる。NISAなどの制度を使えば、税金の面でも有利に進められるぞ。」
処方箋2:すでに投資をしている人は「資産配分の再確認」をしよう
てち王:「そして、ちろ姫。そなたのように、すでに積立投資をしている者は、パニックになる必要も、コンコン・フォックスの甘い誘いに乗る必要もない。やるべきは、自分のポートフォリオ(資産の組み合わせ)を再確認することだ。」
ちろ姫:「ぽーとふぉりお?」
てち王:「うむ。例えば、資産のほとんどが日本株に偏っていたら、円安の恩恵を受けにくいかもしれん。逆に、外国株に偏りすぎていると、今度は円高になった時に資産が目減りするリスクがある。大切なのは、通貨の分散と資産の分散だ。日本資産と外国資産、株式や債券などをバランス良く持つことで、どのような状況になっても大きなダメージを受けにくい、たくましいポートフォリオを育てていくことができる。」
てち王の言葉に、ちろ姫もタートルさんも、深く頷きました。
ちろ姫:「わかった!あたちはこれからもコツコツ積立を続けて、時々ポートフォリオを見直してみる!」
ノンビリ・タートル:「わたくしも、勇気を出して、まずは少額から外貨建て資産への投資を始めてみようと思います。てち王様、本日は誠にありがとうございました。」
てち王:「うむ。それが良い。為替の動きは誰にも完全には予測できん。だからこそ、一喜一憂せず、長期的な視点でどっしりと構え、自分の資産を育てていくことが肝要なのだ。」
夕焼けがふわふわの雲を茜色に染める中、二人の心の中の不安の雲は、すっかり晴れ渡っていったのでした。
今日の重要用語解説
今回の物語で出てきた、少し難しい金融・経済用語を分かりやすく解説します。
- 円安(えんやす)
- 外国の通貨(ドルなど)に対して、円の価値が相対的に低くなること。例えば、「1ドル=100円」から「1ドル=120円」になること。輸入品は高くなり、輸出品は安くなるため、企業の業績に影響を与えます。
- 為替レート(かわせれーと)
- 円とドルなど、異なる通貨を交換する際の取引価格(比率)のこと。このレートは常に変動しています。
- 外貨建て資産(がいかだてしさん)
- 米ドルやユーロなど、外国の通貨で価値が計算される資産のこと。米国株式、外国債券、それらを含む投資信託などが代表例です。円安になると、円に換算した時の価値が上がります。
- 輸出関連企業 / 輸入関連企業
- 輸出関連企業は、製品を海外に販売することが多い企業(自動車メーカーなど)。円安は、海外での価格競争力が高まり、円換算での利益も増えるため、追い風(プラス)になります。
- 輸入関連企業は、原材料や商品を海外から仕入れることが多い企業(電力・ガス、食品会社など)。円安は、仕入れコストが上がるため、逆風(マイナス)になります。
- FX(Foreign Exchange / 外国為替証拠金取引)
- 「証拠金」という担保を預けて、その何倍もの金額の外国為替を売買できる金融商品のこと。「レバレッジ」を効かせることで少ない資金で大きな利益を狙える一方、相場が逆に動いた場合は大きな損失を被る可能性もある、ハイリスク・ハイリターンな取引です。
- ポートフォリオ
- 自身が保有している金融資産の組み合わせやその比率のこと。「株式50%、債券30%、不動産20%」といった具合に表します。リスクを分散させるために、値動きの異なる様々な資産を組み合わせることが重要とされています。
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