【初心者向け】株主優待は本当にお得?メリット・デメリットと失敗しないための注意点を解説
- 2025.10.21
- うさぎで学ぶシリーズ 投資戦略・テクニック
- 投資初心者, 株主優待, 株式投資, 資産形成, 配当金
宇宙のどこか、なにもかもが「ふわふわ」でできている惑星、ふわふわ星。この星では、お金の代わりにピカピカのニンジンが通貨として使われています。
この星を治めるのは、博識で心優しき王様、てち王。そして、その傍らには、元気いっぱいだけど、まだ世の中のことは何も知らない妹のちろ姫がいました。
今日も、ふわふわの雲でできた玉座で、てち王が経済新聞を読んでいると、ちろ姫がキラキラした瞳で駆け寄ってきました。
ちろ姫 「てち王お兄様〜!聞いて聞いて!あたち、とっても素敵な『プレゼント』をもらったの!」
ちろ姫がぴょんぴょん跳ねながら見せたのは、ふわふわ星で一番人気のレストラン「キャロット・デラックス」のお食事券でした。
てち王 「ほう、ちろ姫。それは良かったな。だが、誰からいただいたのだ?誕生日でもないのに」
ちろ姫 「それがね!『カブヌシユウタイ』っていうものなんだって!レストランの会社の『カブ』をちょっと持ってるだけで、こーんな美味しいプレゼントがもらえるなんて、最高じゃない!?」
目を輝かせるちろ姫を見て、てち王は優しく微笑みました。妹に経済の仕組みを教える、絶好の機会が訪れたようです。
てち王 「ふむ…ちろ姫よ。その『株主優待』、確かに魅力的に見えるな。だが、果たして本当に『プレゼント』と呼べるほど、手放しで喜んで良いものなのだろうか?今日はその仕組みを、朕が直々に教えてやろう」
ちろ姫 「えー!プレゼントはプレゼントでしょ?難しいお話はいいから、あたち、このお食事券で早く特大ニンジンパフェが食べたいな〜!」
そう言って、またぴょんぴょん跳ね回るちろ姫。てち王は、やれやれといった表情で、大好物のイチゴを一粒つまみながら、話を始めました。
そもそも「株主優待」って何?

てち王 「ちろ姫、落ち着いて聞くのだ。まず『株主優待』とは、会社が、自分たちの株を持ってくれている株主(つまり、会社の応援団だな)に対して、感謝の気持ちを込めて贈る品々のことだ」
ちろ姫 「応援団へのプレゼント!素敵!」
てち王 「うむ。例えば、ちろ姫がもらったようなレストランの食事券や、自社製品の詰め合わせ。ふわふわ星で人気の『ふわふわ遊園地』のチケットや、映画のチケットなんかもあるぞ。中には、どんなお店でも使える『クオカード』のような金券を贈ってくれる会社もある」
ちろ姫 「遊園地のチケット!?あたち、欲しい!今すぐその会社の応援団になる!どうすればいいの?」
てち王 「まあ待て。応援団になるには、その会社の『株式』、つまり応援団の会員証のようなものを買う必要がある。そして、ただ持っているだけではダメで、『権利確定日』という、会社が『この日の時点で応援団に入っている人』というのをチェックする日に、会員証を持っていないといけないのだ」
ちろ姫 「けんりかくていび…?なんだか難しい名前…」
てち王 「例えるなら、年に一度の『応援団ありがとうパーティー』の招待状がもらえる日、といったところか。その日に名簿に名前が載っていれば、後日プレゼントが届く、というわけだ。だから、パーティーの直前に慌てて会員になっても、名簿の締め切りに間に合わなければ招待状はもらえんのだぞ」
ちろ姫 「なるほどー!じゃあ、その『けんりかくていび』の前に会員証を買っておけば、毎年プレゼントがもらえるのね!最高じゃない!あたち、ふわふわ星中の会社の株をぜーんぶ買って、毎日プレゼントで暮らすんだから!」
干し草をもしゃもしゃ食べながら、夢見心地で語るちろ姫。そのあまりに無邪気な発言に、てち王は少し真剣な表情になりました。
本当に「お得」?知っておくべき注意点
てち王 「ちろ姫、それこそが今回の話の核心だ。その考え方は、ニンジン畑に大きな落とし穴があることに気づかず、全力で駆け抜けていくようなものだぞ」
ちろ姫 「えっ!?落とし穴?」
てち王 「うむ。まず第一に、そして最も重要なことだが、株の値段は毎日動くということだ」
ちろ姫 「動く?株って、ぴょんぴょん跳ねたりするの?」
てち王 「(くすっ)いや、そういう意味ではない。例えば、ちろ姫が1本100ニンジンの価値がある株を買ったとしよう。優待で10ニンジン分のお食事券がもらえたとしても、もしその株の価値が80ニンジンに下がってしまったら、どうなる?」
ちろ姫 「えーっと…10ニンジンもらったけど、20ニンジン損してる…?あれ?全然お得じゃない…!」
てち王 「その通りだ。優待の価値以上に株価が下落してしまうリスクは常にある。これを『株価変動リスク』という。優待という目の前のニンジンに目がくらんで、自分が持っている畑(株)そのものの価値が下がってしまっては本末転倒なのだ」
ちろ姫 「そ、そっか…。プレゼントだけ見てちゃダメなのね…」
てち王 「第二に、その『プレゼント』が、未来永劫もらえるとは限らないことだ」
ちろ姫 「ええっ!?なんで!?応援団なのに!?」
てち王 「会社の経営が苦しくなったり、経営の方針が変わったりすると、『来年からはプレゼントをやめます』と発表することがある。これを『優待の廃止・改悪』という。これを発表した途端、プレゼント目当てだった応援団が一斉に抜けてしまい、株価が大きく下がることも珍しくない」
ちろ姫 「ひえぇ…プレゼントがなくなるだけじゃなくて、畑の価値まで下がっちゃうなんて…踏んだり蹴ったりだわ…」
すっかりしょんぼりして、自慢の茶色い毛がぺしょんとなってしまうちろ姫。てち王は、そんな妹の頭を優しく撫でました。
てち王 「だが、がっかりすることはない。大事なのは、目に見える『プレゼント』だけで物事を判断しない、ということだ。真の王女たるもの、物事の本質を見抜く目を持たねばならん。そこで重要になるのが『トータルリターン』という考え方だ」
投資家は「トータルリターン」で考える
ちろ姫 「とーたるりたーん…?」
てち王 「うむ。株への投資で得られる利益は、主に3つある。 一つは、今話してきた『株主優待』。 二つ目は、会社が出した利益の一部を、応援団に現金で分けてくれる『配当金』。 そして三つ目が、株そのものの価値が上がることによる『値上がり益(キャピタルゲイン)』だ」
ちろ姫 「プレゼントと、現金と、畑の価値が上がること…」
てち王 「その通りだ。賢い投資家は、これら3つを合計した『トータルリターン』で、その株が本当にお得かどうかを判断する。例えば、2つの会社があったとしよう」
A社: 株価1000ニンジン。豪華な優待(30ニンジン相当)があるが、配当金はなく、会社の成長もあまり期待できない。
B社: 株価1000ニンジン。優待はないが、毎年20ニンジンの配当金をくれる。さらに、業績が絶好調で、1年後には株価が1100ニンジンに上がることが期待されている。
てち王 「ちろ姫、どちらの会社の応援団になりたいかね?」
ちろ姫 「うーん…A社は30ニンジンのプレゼントがもらえるけど、B社は20ニンジンの現金と、100ニンジンの値上がりで、合計120ニンジンのプラスが期待できるってこと…?それなら、断然B社だわ!」
てち王 「うむ、正解だ!よくぞ見抜いたな。目先の優待はとても魅力的に映るが、それだけで投資を決めるのは危険だ。その会社がちゃんと利益を出しているのか、将来も成長していけるのかという、会社の『ファンダメンタルズ(基礎的な実力)』をしっかり見極めることが、何よりも重要なのだ」
ちろ姫は、おやつに持っていたリンゴをカジりながら、真剣な顔で頷きました。
ちろ姫 「そっか…。『カブヌシユウタイ』は、あくまで『おまけ』なのね!一番大事なのは、その会社自体をしっかり応援できるかどうか、ってことなんだ!あたち、また一つ、立派なプリンセスに近づいた気がする!」
てち王 「その意気やよし。優待は、あくまで投資の楽しみの一つとして捉えるのが良いだろう。自分が普段から利用していて、心から応援したいと思える会社の株主になり、その感謝のしるしとして優待をいただく。それこそが、株主優待との最も幸せな付き合い方だと、朕は思うぞ」
てち王の言葉に、ちろ姫は深く納得しました。手の中にあるお食事券が、ただのプレゼントではなく、その会社と自分とを繋ぐ「感謝のしるし」のように思えてきたのです。
ちろ姫 「お兄様、ありがとう!あたち、このお食事券でパフェを食べたら、その会社のこと、もっと調べてみる!そして、ちゃんとした応援団になるんだから!」
てち王 「うむ。それがいい。さあ、朕もイチゴが食べたくなってきた。一緒に甘いものでも食べに行くとしようか」
こうして、ふわふわ星の兄妹の、甘くて少しだけ知的な一日は過ぎていくのでした。株主優待は魅力的。でも、その向こう側にある本質を見つめることこそが、豊かな未来への第一歩なのかもしれません。
用語解説
今回の物語で出てきた、少し難しい金融・経済用語を分かりやすく解説します。
- 株主優待 (かぶぬしゆうたい)
企業が株主に対して、自社製品やサービス、割引券などを贈る制度のこと。日本の株式市場に特徴的な制度と言われています。すべての企業が実施しているわけではありません。 - 権利確定日 (けんりかくていび)
株主優待や配当金などを受け取る権利が確定する日のこと。この日の株主名簿に名前が記載されている必要があります。 - 配当金 (はいとうきん)
企業が事業活動によって得た利益の一部を、株主へ現金で分配するお金のこと。インカムゲインとも呼ばれます。 - 値上がり益 (ねあがりえき) / キャピタルゲイン
株式などを購入した価格よりも高い価格で売却することによって得られる利益のこと。 - トータルリターン (Total Return)
一定期間の投資において、株価の変動によって得られる「キャピタルゲイン(またはロス)」と、配当金や分配金などによって得られる「インカムゲイン」を合計した、総合的な収益率のこと。株主優待も広義のインカムゲインとして、これに含めて考えることがあります。 - ファンダメンタルズ分析 (Fundamental Analysis)
企業の財務状況(売上、利益、資産など)や業績、成長性といった、企業の「基礎的な実力」を分析し、株価の将来性を予測する手法のことです。
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