【初心者向け】配当金ロードマップ!失敗しない高配当株ポートフォリオの考え方

【初心者向け】配当金ロードマップ!失敗しない高配当株ポートフォリオの考え方

プロローグ

ここは宇宙のどこかにある、何もかもがふわふわな『ふわふわ星』。この星の通貨は、甘くて美味しい『ニンジン』です。今日のふわふわ星は、うららかな日差しが宮殿の庭を照らし、絶好のお昼寝日和。そんな中、若きプリンセスの『ちろ姫』は、お気に入りのリンゴをかじりながら、何やら考え事をしているようです。

ちろ姫: 「むしゃむしゃ……んー、おいちい! あたち、毎日こうして美味しいおやつを、お腹いっぱい食べ続けたいなー。てち王お兄様みたいに、何もしなくてもニンジンがたくさんもらえる方法ってないのかしら?」

ぴょんぴょんと跳ねながら、執務室で星の記録を読んでいた兄、『てち王』の元へやってきたちろ姫が、素朴な疑問を投げかけました。

てち王: 「ふむ、ちろ姫か。今日も元気そうで何よりだ。何もしなくてもニンジンがもらえる方法、か。いかにも子供であるそなたらしい、純粋な願いだな。だがな、ちろ姫。実はそれに近い方法が存在するのだぞ」

ちろ姫: 「え!? あるの!? あたちが知らないヒミツのおやつ畑でもあるの!?」

目をキラキラさせるちろ姫に、てち王は優しく微笑みかけます。

てち王: 「ふふ、おやつ畑とは少し違うな。朕はそれを『ニンジンの実がなる木』と呼んでいる。一度植えれば、あとはその木が勝手にニンジンの実を実らせてくれる、魔法のような木だ」

ちろ姫: 「魔法の木! なにそれ、すごい! あたちもその木が欲しい!」

てち王: 「うむ。その『ニンジンの実がなる木』こそ、地球の言葉で言う『高配当株』というものなのだ。そして、その実が『配当金』と呼ばれるものだ。今日はその『ニンジンの実がなる木の育て方』、すなわち『月3万ニンジンの配当金を目指すポートフォリオの作り方』を教えてやろう。将来、立派な王女になるためには、星の財産を増やす知識も必要なのだからな」


ニンジンの木を育てる準備をはじめよう

ちろ姫: 「はいとーかぶ? ぽーとふぉりお? なんだか難しい言葉が出てきたわ……。あたちがわかるように説明して!」

干し草を一本口にくわえながら、ちろ姫は首をかしげました。

てち王: 「うむ。では、ちろ姫がいつも食べているおやつを作っている『もぐもぐ食品』という会社を例に話そうか。あの会社は、美味しいおやつをたくさん作って、たくさんのニンジンを稼いでいる。その会社の『株』を持つということは、その会社の一部を自分のものにする、つまりオーナーの一人になるということなのだ」

ちろ姫: 「あたちが、もぐもぐ食品のオーナーに!?」

てち王: 「そうだ。そして、会社が稼いだニンジンの一部を、オーナーである株主に分けてくれる。これが『配当金』、つまりニンジンの実だ。会社が頑張って働いてくれるおかげで、自分はのんびりしていても定期的にニンジンがもらえる。これが、ちろ姫が望んだ『何もしなくてもニンジンがもらえる方法』の正体だ」

ちろ姫: 「なるほどー! じゃあ、あたち、お財布にあるニンジン全部で『もぐもぐ食品』の株を買うわ! あたちが一番好きな会社だし、きっとたくさんの実をくれるはず!」

てち王: 「こら、ちろ姫。落ち着きなさい。それこそが初心者が陥りがちな最初の罠なのだ。一本の木だけに全ての期待をかけるのは、とても危険なことだぞ」

てち王は、ちろ姫のぴょんと跳ねた耳を優しくなでつけました。

てち王: 「もしも、その『もぐもぐ食品』の業績が悪くなって、ニンジンの実をつけなくなったらどうする? ちろ姫のニンジンの収入はゼロになってしまう。だからこそ、色々な種類の『ニンジンの木』を、バランス良く育てることが重要なのだ。この『育てている木の組み合わせ』のことを、『ポートフォリオ』と呼ぶのだよ」


月3万ニンジンを目指す!てち王のポートフォリオ講座

ちろ姫: 「色々な種類の木を育てるのね! でも、どんな木を選べばいいの?」

てち王: 「良い質問だ。まず目標を明確にしよう。今回の目標は『月3万ニンジン』、つまり年間で『36万ニンジンの配当金』を得ることだ。そのために重要なのが『配当利回り』という考え方だ」

てち王は石板にサラサラと数式を書きました。

配当利回り(%)=(1株あたりの年間配当金÷1株の価格)×100

てち王: 「仮に、税金を考えずに平均利回り4%のポートフォリオを目指すとしよう。その場合、年間36万ニンジンの配当金を得るためには、いくらの元手が必要になるかな?」

ちろ姫: 「えーっと……36万 ÷ 4% だから……うーん……900万ニンジン!?」

てち王: 「その通りだ、ちろ姫! よく計算できたな。もちろん、これはあくまで単純計算だ。税金もかかるし、いきなり900万ニンジンを用意する必要はない。コツコツと木を買い足し、育てていくことが肝心なのだ。では、実際にどんな木を組み合わせるか、架空の日本の会社を例に考えてみよう」

てち王は、ふわふわ星でも評判の、地球にあるいくつかの優良企業に似た会社をリストアップしました。

  • ふわふわ通信:星の暮らしに不可欠な通信サービスを提供。景気に左右されにくく、安定してニンジンの実をつけてくれる、ポートフォリオの土台となる木。
  • うさぎ商事:エネルギーから食品まで、手広く事業を行っている。様々な分野で稼いでいるため、一つの事業が不調でも他でカバーできる、たくましい木。
  • ニンジン銀行:ふわふわ星の金融を支える巨大銀行。景気が良い時はたくさんの実をつけるが、不景気になると実が減ることもある、少し気まぐれな木。
  • ピョンピョン自動車:最新鋭の空飛ぶ車を製造している。景気が良いと爆発的に売れるため、大きな実をつける可能性があるが、不景気には弱いという特徴を持つ木。
  • もぐもぐ食品:ちろ姫も大好きな、おやつや主食の干し草を製造。景気に関わらず皆が食べるものを売っているため、安定感は抜群の木。

てち王: 「例えば、これら5種類の木を、それぞれバランス良く植えていく。そうすれば、ピョンピョン自動車の元気が無い年は、ふわふわ通信やもぐもぐ食品が安定して実をつけてくれる。逆に景気が良い年は、ニンジン銀行やピョンピョン自動車が大きな実をつけてくれる。こうしてお互いの弱点を補い合うのが、分散投資の基本なのだ」

ちろ姫: 「なるほどー! お弁当みたいね! お肉もお魚もお野菜も、全部入っていると美味しいし、飽きないもの!」

てち王: 「うまい例えだ、ちろ姫。まさにその通り。自分だけの『最強のお弁当(ポートフォリオ)』を作る感覚だな。だが、ここで注意点がある。ただ利回りが高い、というだけで木を選んではいけない」

ちろ姫: 「え? 利回りが高い方が、たくさんニンジンがもらえて嬉しいじゃない!」

てち王: 「一見そう思えるがな。例えば、ここに利回り10%というとんでもない木があったとしよう。しかし、その木は稼いだニンジンのほぼ全てを配当として配ってしまい、来年のために畑を耕したり、新しい種を買うためのニンジンを残していなかったとしたら?」

ちろ姫: 「え……? それじゃあ、来年は実がならないかもしれないってこと?」

てち王: 「その通りだ。稼いだ利益のうち、どれだけを配当金に回しているかを示す『配当性向』という指標がある。これが高すぎる(例えば100%を超える)会社は、無理をして配当を出している可能性がある。いわば、自分の体を削って実をつけているようなものだ。いずれは実をつけられなくなる『減配』のリスクが高い」

てち王: 「また、株価が下がり続けた結果、見かけ上の利回りが高くなっているだけの『枯れかけの木』もある。だから、利回りの数字だけでなく、その会社がきちんと成長しているか、無理なく配当を出しているか、という中身をしっかり見ることが、良い木を育てる上で最も重要なのだ」


賢い王女への第一歩

ちろ姫: 「そっか……。ただ数字だけ見て飛びついちゃダメなのね。その木が元気なのか、ちゃんと来年も実をつけてくれるのか、しっかり見てあげないと……。なんだか、ペットを育てるみたいで、奥が深いのね!」

てち王: 「ふふ、その通りだ。配当金生活は、一朝一夕で成し遂げられるものではない。時間をかけて、自分のポートフォリオという庭を、愛情を持って手入れしていくことが大切だ。最初は一本の小さな苗木からでいい。コツコツと育てていけば、いずれはちろ姫が何もしなくても、たくさんのニンジンの実がなる立派な庭になるだろう」

ちろ姫: 「うん! あたち、勉強する! 難しいけど、面白いわ! まずは、もぐもぐ食品が元気な木なのか、調べてみる!」

目を輝かせ、決意を新たにするちろ姫の姿に、てち王は満足そうに頷きました。ふわふわ星の優しい日差しが、未来の賢い王女とその兄を、いつまでも見守っているのでした。

こうして、ちろ姫の「何もしなくてもおやつを食べたい」という可愛い願いから始まった経済の勉強。ポートフォリオという自分だけの庭を育てる楽しさに、ちろ姫は目覚めたようです。月3万ニンジンの配当金を得る道は、まだ始まったばかり。彼女の挑戦は、これからも続きます。

用語解説

最後に、今回登場した大切な言葉たちをおさらいしておきましょう。

  • 配当金(はいとうきん):
    企業が稼いだ利益の一部を、株主(オーナー)に分配するお金のこと。物語の中では「ニンジンの実」として登場しました。
  • ポートフォリオ:
    株式、債券、不動産など、保有している金融資産の組み合わせのこと。様々な種類の資産を組み合わせることで、リスクを分散させる効果があります。物語では「ニンジンの木の組み合わせ」や「お弁当」に例えられました。
  • 配当利回り(はいとうりまわり):
    株価に対する年間配当金の割合を示す指標。この数値が高いほど、投資額に対して多くの配当金を受け取れることを意味します。しかし、この数字の高さだけで投資先を決めるのは危険です。
  • 分散投資(ぶんさんとうし):
    投資先を一つに絞らず、複数の異なる資産や銘柄に分けて投資すること。一つの投資先の価値が下がっても、他の投資先でカバーすることで、全体のリスクを抑えることができます。
  • 配当性向(はいとうせいこう):
    企業が稼いだ税引き後の利益のうち、どれくらいの割合を配当金の支払いに充てたかを示す指標。この数値が高すぎると、企業が無理して配当を出している可能性があり、将来の成長投資や安定性に影響が出ることがあります。
  • 減配(げんぱい):
    企業が配当金の額を前期よりも減らすこと。業績の悪化などが主な原因で、減配が発表されると株価が下落する傾向があります。