【脱・王道】S&P500とオルカンだけで満足?ポートフォリオを加速させるインド投資の魅力

【脱・王道】S&P500とオルカンだけで満足?ポートフォリオを加速させるインド投資の魅力

宇宙のどこかに、何もかもがふわふわしている「ふわふわ星」がありました。この星の通貨は、甘くて美味しい「ニンジン」。星の民であるうさぎたちは、賢くて優しい「てち王」と、元気いっぱいの妹「ちろ姫」のもとで、平和に暮らしていました。今日も、王の執務室では、未来の女王になるべく、ちろ姫が経済のお勉強に励んでいるようです。


ちろ姫: 「えっへん!てち兄様!あたち、もう完璧に理解したでしゅ!」

ぴょん!と効果音がつきそうなほど元気に椅子から飛び降りたちろ姫は、胸を張って宣言しました。その右手には、食べかけのりんごが握られています。

てち王: 「ほう、ちろ姫。何を理解したというのだ?申してみよ。」

山積みの公務書類から顔を上げたてち王は、優しく微笑みかけます。彼のふわふわな毛並みは、まるで雲のようです。

ちろ姫: 「投資の答えでしゅ!全世界のうさぎたちが幸せになる方法はただ一つ!『S&P500』と『オルカン』にニンジンを積み立てること!これこそが唯一絶対の正義!もうこれ以上、学ぶことなんてありましぇん!」

得意げに言い切るちろ姫。最近覚えた言葉を並べ、すっかり投資をマスターした気になっているようです。その様子に、てち王は小さく笑みをこぼしました。

てち王: 「ふふ、確かにS&P500とeMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)、通称オルカンは、投資の『王道』と言える素晴らしい選択肢だ。朕も、ふわふわ星の民にはまずその二つから始めることを推奨しておる。だがな、ちろ姫。その『王道』だけで満足していては、見えない景色があることも事実なのだぞ。」

ちろ姫: 「えー?でも、みんな最強って言ってるでしゅよ?これさえやっておけば、将来はニンジン御殿で暮らせるって!」

てち王: 「ははは。もちろん、それだけでもニンジン畑くらいは築けるやもしれぬ。だが、もっと大きな可能性…例えば、ポートフォリオ全体の成長を『加速』させる、スパイスのような存在があるとしたら、興味はないか?」

ちろ姫: 「スパイス…?りんごよりも美味しいでしゅか?」

ちろ姫の興味が食べ物に向かいかけた、その時でした。執務室の扉が勢いよく開き、ずる賢そうな笑みを浮かべた一匹のきつねが姿を現したのです。

コンコン・フォックス: 「おっと、これは失礼!素晴らしいお話が聞こえてきましたコン!スパイスの話なら、このコンコン・フォックスにお任せあれ!」

ちろ姫: 「あ!コンコン・フォックス!また来たでしゅか!」

コンコン・フォックス: 「姫様、ご機嫌麗しゅう。何を隠そう、私こそが今、宇宙で最もホットな『スパイス』の情報を持っておりますコン!その名も…魅惑の国、『インド』への投資ですぞ!」

コンコン・フォックスは、芝居がかった仕草で胸を張り、高らかに宣言しました。

コンコン・フォックス: 「ちろ姫様!S&P500やオルカンなんて、もう古い古い!これからの時代、ニンジンを100倍、いや1000倍にするならインドしかありませんコン!若くて優秀な働き手が爆発的に増え、経済はウサギ跳びのように成長中!今、1ニンジンを投資すれば、あっという間にニンジンの山が築けますぞ!さあ、この『爆益インドファンド』にサインを!」

怪しげな契約書を突き出すコンコン・フォックス。その言葉に、ちろ姫の目はキラキラと輝き始めています。

ちろ姫: 「ニンジンが1000倍!?あたち、やるでしゅ!サインするでしゅ!」

てち王: 「待て、ちろ姫。コンコン・フォックス、相変わらず口が上手いな。だが、その説明はあまりに一方的で、民を惑わすものだ。」

冷静な声で、てち王がちろ姫の小さな手を制しました。

てち王: 「確かに、コンコン・フォックスの言う通り、インドが凄まじいポテンシャルを秘めていることは事実だ。まず、何と言っても『人口』。2023年には中国を抜き、世界一の人口大国となった。しかも、その平均年齢は20代と非常に若い。これは『人口ボーナス期』と呼ばれ、豊富な労働力が経済成長を力強く押し上げるのだ。」

ちろ姫: 「じんこーぼーなす?」

てち王: 「うむ。ふわふわ星に、働き者の若いうさぎが沢山いる状態を想像してみよ。ニンジンの収穫量はどんどん増え、星全体が豊かになるだろう?インドでは今、まさにその状態が起きている。さらに、現政権が進める経済政策『モディノミクス』によるインフラ整備や規制緩和も、海外からの投資を呼び込む追い風となっている。」

コンコン・フォックス: 「そ、その通りですコン!さすが、てち王様!全てお見通しで!さあ、姫様、やはりサインを!」

てち王: 「まだ話は終わっておらぬ。GDP(国内総生産)の成長率を見ても、多くの先進国が1〜2%で推移する中、インドは6〜7%という高い水準を維持している。これは、国の経済規模が毎年大きく成長している証だ。まさに、世界の成長センターと言っても過言ではない。」

話を聞いていたちろ姫は、目を輝かせています。しかし、話はこれだけでは終わりませんでした。執務室の隅で、会話を静かに聞いていたもう一人の人物が、おずおずと口を開きました。ノンビリ星から遊びに来ていた、ノンビリ・タートルです。

ノンビリ・タートル: 「あ、あのぅ…てち王様…。お話はよくわかるのですが…。インドのような新しい国への投資って、なんだか怖くて…ハイリスク・ハイリターンなんて聞きますし…。私のニンジンのように、コツコツ貯めたものが無くなってしまったらと考えると、甲羅に引っ込んでしまいそうです…。」

心配そうに首をすくめるノンビリ・タートル。彼の言葉は、多くの投資初心者が抱くであろう、もっともな不安でした。

てち王: 「うむ、タートル殿の言う通りだ。それこそが、コンコン・フォックスが全く触れなかった、もう一つの側面…『リスク』だな。」

てち王の鋭い視線がコンコン・フォックスに突き刺さります。

コンコン・フォックス: 「リ、リスクですと?そ、そんなものは、このコンコン・フォックスの辞書には…」

てち王: 「インドは、急成長しているが故の課題も多く抱えている。例えば『カントリーリスク』。政治が不安定になったり、近隣国との地政学的緊張が高まったりする可能性は常にある。また、通貨『ルピー』の為替変動リスクも大きい。いくらインド株が値上がりしても、円高ルピー安が進めば、円建てでのリターンは目減りしてしまう。」

ちろ姫: 「え…?じゃあ、ニンジンが減っちゃう可能性もあるでしゅか?」

てち王: 「その通りだ。他にも、未整備なインフラや、根強く残る格差の問題など、解決すべき課題は山積しておる。コンコン・フォックスが言うように、『投資すれば必ず100倍になる』などという甘い話は、この世のどこにも存在しないのだ。全ては可能性の話でしかない。」

てち王の冷静な分析に、コンコン・フォックスはぐうの音も出ず、冷や汗をかいています。一方、ちろ姫はすっかり混乱してしまったようです。

ちろ姫: 「うぅ…じゃあ、一体どうすればいいでしゅか!?インドはすごいの?すごくないの?投資していいの?ダメなのでしゅか?」

りんごを放り出し、ぴょんぴょんと跳ねながら頭を抱えるちろ姫。その姿を見て、てち王は優しく言いました。

てち王: 「落ち着きなさい、ちろ姫。どちらか一方ではないのだ。ここで重要になるのが、『ポートフォリオ』という考え方だ。」

ちろ姫: 「ぽーとふぉりお…?」

てち王: 「そうだ。ちろ姫が最初に言ったS&P500やオルカンは、いわば、このふわふわ星の頑丈な『お城』だ。世界の優良企業に幅広く分散投資されており、安定した成長が見込める、資産形成の『核(コア)』となる部分。まず、このお城をしっかりと築くことが何よりも大切だ。」

てち王は、机の上のニンジンで大きな円を描きました。

てち王: 「そして、インドのような新興国への投資は、そのお城の周りを飛ぶ、速くて強力な『偵察機(サテライト)』のようなものだ。」

てち王は、円の少し外側に、小さなニンジンを一つ置きました。

てち王: 「主力であるお城(コア)は、どっしりと構えて安定を守る。そして、資産の一部…例えば5%〜10%程度を、偵察機(サテライト)に振り分ける。この偵察機が大きな成果を上げれば、軍全体の力、つまりポートフォリオ全体のリターンを大きく引き上げることができる。たとえ、偵察機が不調に終わっても、大部分であるお城は無傷だから、致命傷にはならない。」

この戦略は「コア・サテライト戦略」と呼ばれています。ちろ姫も、ノンビリ・タートルも、その分かりやすい例えに感心したように頷きました。

ちろ姫: 「なるほど!お城がメインで、偵察機はスパイスみたいなものなんでしゅね!全部のお金を偵察機に突っ込んじゃダメってことか!」

てち王: 「その通りだ、ちろ姫。よく理解したな。S&P500やオルカンという王道を歩み、安定した土台を築きながら、その一部でインドのような成長性の高い資産に挑戦する。これが、王道だけで満足しない、『+α』の資産形成なのだ。」

てち王の言葉に、ノンビリ・タートルも甲羅から顔を出し、納得の表情を浮かべています。

ノンビリ・タートル: 「なるほど…全財産を投じるのは怖いですが、少しだけなら、僕も挑戦してみようかなという勇気が湧いてきました…。」

てち王: 「うむ。新NISAの『成長投資枠』などを活用すれば、非課税の恩恵を受けながらインド株式に連動する投資信託などに投資することも可能だ。もちろん、投資は自己責任。自分のリスク許容度をよく考え、まずは少額から試してみるのが良いだろう。」

てち王の理路整然とした説明と、説得力のある言葉に、コンコン・フォックスは完全に意気消沈しています。

コンコン・フォックス: 「くっ…王の知識には敵わないコン…。私の甘い話が通用するのは、ちろ姫様のような純粋な方だけか…。覚えてろですコン〜!」

そう捨て台詞を残し、コンコン・フォックスはすごすごとコンコン星へと帰っていきました。

ちろ姫: 「あたち、また一つ賢くなったでしゅ!S&P500とオルカンでお城を建てて、インドの偵察機を飛ばす!なんだかワクワクするでしゅね、てち兄様!」

てち王: 「うむ。投資の世界は広く、そして深い。常に学び続け、自分の視野を広げていくことが、未来のニンジンを豊かにする一番の近道なのだぞ、ちろ姫。」

にんまりと笑うちろ姫と、それを見守る優しい眼差しのてち王。ふわふわ星の未来は、今日も明るいようだ。


用語解説

  • S&P500:
    米国の代表的な企業500社の株価を元に算出される株価指数。これに連動する投資信託は、米国経済全体の成長の恩恵を受けることを目指す、世界で最も人気のあるインデックスファンドの一つです。
  • オルカン(eMAXIS Slim 全世界株式 オール・カントリー):
    日本を含む先進国および新興国の株式市場の動きを捉えることを目指すインデックスファンドの愛称。これ一本で全世界の企業に分散投資できる手軽さから、S&P500と並び、NISAなどでの積立投資の王道とされています。
  • ポートフォリオ:
    投資家が保有する金融資産の組み合わせや一覧のこと。株式、債券、不動産など、異なる値動きをする資産を組み合わせることで、リスクを分散し、安定的なリターンを目指します。
  • 人口ボーナス期:
    生産年齢人口(15歳〜64歳)の比率が高く、従属年齢人口(14歳以下と65歳以上)の比率が低い状態。豊富な労働力が経済成長を促進し、社会保障の負担も軽いため、国が経済的に発展しやすい期間とされています。
  • コア・サテライト戦略:
    資産を、安定的・長期的なリターンを目指す「コア(核)」と、より高いリターンを狙う積極的な「サテライト(衛星)」に分けて運用する戦略。資産全体のリスクを抑えつつ、プラスアルファのリターンを狙うことができます。
  • カントリーリスク:
    投資対象国の政治・経済情勢の変化によって、保有する資産の価値が変動するリスクのことです。新興国は、先進国に比べてこのリスクが高い傾向にあります。