【40代向け】住宅ローン繰り上げ返済と新NISA、どっちを優先?後悔しないための判断基準を解説
- 2025.10.24
- うさぎで学ぶシリーズ ライフステージ別マネープラン
- 新NISA, 税金, 積立投資, 老後資金, 資産形成
宇宙のどこか、なにもかもが「ふわふわ」でできている惑星、ふわふわ星。この星の通貨は、美味しくて栄養満点の「ニンジン」です。今日のふわふわ星は、よく晴れていてお散歩日和。生まれたばかりの元気なプリンセス、ちろ姫は、お城の庭をぴょんぴょんと楽しそうに跳ね回っていました。
ちろ姫: 「わーい!おひさま、あったかーい!ぴょんぴょん!ぴょんぴょーん!」
その手には、ふわふわ星の住宅情報誌『月刊すてきな巣穴』が握られています。ちろ姫は、立派な巣穴(お城)の絵を見て、目をキラキラさせていました。
ちろ姫: 「あたち、大きくなったら、こんなおっきくて、ニンジン畑が見えるお城に住みたいの!そのためには、お勉強がんばるんだ!」
そこに、威厳と優しさを兼ね備えたふわふわ星の王、てち王がゆっくりとやってきました。手には、好物のイチゴが乗ったお皿を持っています。
てち王: 「ふむ。ちろ姫、今日も元気で何よりだ。して、何を見ているのだ?」
ちろ姫: 「てち兄様!見て見て!このお城、すっごく素敵じゃない?でもね、お友達のうさぎさんが言ってたの。『お家を買うときのローンっていう借金は、早く返しちゃった方が絶対いいんだ』って!あたちたちのお城も、ニンジン・ローンがあるんでしょ?早く返さないと大変なの!」
てち王: 「ほう、ローンか。ちろ姫も難しい言葉を知るようになったな。だがな、その『絶対』という言葉、ことお金の世界においては、慎重に使わねばならんのだ。さ、イチゴでも食べながら、少し難しい話をしようか。今日の議題は『住宅ローンと新NISA、40代はどちらを優先すべきか』だ。」
ちろ姫: 「にーさ?なあに、それ?美味しいの?」
てち王: 「ふふふ。美味しい果実が実る『かもしれない』魔法の箱のようなものだ。さあ、一緒に学んでいこう。民の幸せは、正しい知識から生まれるのだからな。」
繰り上げ返済の「確実な魅力」と新NISAの「大きな可能性」
てち王: 「まず、ちろ姫が言うように『借金を早く返す』、つまり繰り上げ返済は、非常に堅実で優れた考え方だ。それを理解するために、まずは具体的なうさぎさん一家を例に考えてみよう。」
てち王は、ふわりと宙に指をかざし、具体例を映し出しました。
【ふわふわ星に住む、うさぎのモデルケース】
- 年齢: 40代
- 家族: パパうさぎ、ママうさぎ、子うさぎ2匹
- 世帯年収: 600万ニンジン
- 住宅ローン残高: 3000万ニンジン
- ローン金利: 年1.0%
- 手元の余裕資金: 300万ニンジン
ちろ姫: 「わあ!ニンジンがいっぱい!でも、ローンもいっぱいなの!」
てち王: 「うむ。この一家が、余裕資金の中から100万ニンジンを繰り上げ返済に使うとどうなるか。最大のメリットは、支払うはずだった『利息』を減らせることだ。今回の場合、金利は1.0%だから、100万ニンジンの繰り上げ返済は、将来支払うはずだった利息を確実に減らすことができる。これは、いわば『金利1.0%の確実なリターンを得た』のと同じことなのだ。」
ちろ姫: 「へぇー!100万ニンジンが、未来の利息をやっつけてくれるんだ!すごいの!それに、借金が減ったら、なんだか安心するもんね!夜もぐっすり眠れそう!」
てち王: 「その通りだ、ちろ姫。その『安心感』は何物にも代えがたい価値がある。借金という精神的な負担が減るのは、大きなメリットと言えよう。これが繰り上げ返済の『確実な魅力』だ。」
ちろ姫は「なるほど!」と大きく頷き、干し草をもしゃもしゃと食べ始めました。
てち王: 「だがな、ちろ姫。ここで、もう一つの選択肢が出てくる。それが『新NISA』での資産運用だ。」
ちろ姫: 「でたー!魔法の箱!それでニンジンが増えるの?」
てち王: 「その通り。新NISAとは、国が作った特別な制度で、この箱の中で投資をして得た利益には、なんと税金がかからないのだ。例えば、先ほどの100万ニンジンを新NISAで運用し、世界中の会社の株などを集めた『投資信託』を買ったとしよう。もし、それが年平均5%で成長したとしたら、どうなると思う?」
ちろ姫: 「えーっと…100万ニンジンが、1年で105万ニンジンになるってこと!?」
てち王: 「その通りだ。繰り上げ返済で得られるリターンは『1%』。一方で、新NISAでの運用で期待できるリターンは『5%』。この差は4%だ。もちろん、投資だから必ず5%になる保証はない。時にはマイナスになる年もあるだろう。だが、長い目で見れば、複利の力でニンジンがニンジンを呼び、大きく育つ可能性があるのだ。」
複利、という難しい言葉に、ちろ姫は頭の上に「?」を浮かべました。
てち王: 「複利とは、雪だるまのようなものだ。最初は小さな雪玉でも、転がしているうちに雪がどんどんくっついて、あっという間に大きくなるだろう?利益がさらに新たな利益を生む。この力を、非課税の恩恵を受けながら最大限に活用できるのが新NISAの『大きな可能性』なのだ。」
どちらを選ぶ?運命を分ける「3つの質問」
ちろ姫: 「うーん…。話が難しくなってきたの…。確実な『1%』と、不確実だけど大きな『5%』…。あたち、どっちを選べばいいかわかんなくなっちゃった!」
ちろ姫は、悩んでその場でぴょんぴょんと跳ね始めました。落ち着きのない妹を見て、てち王は優しく微笑みます。
てち王: 「ふふ、それでいいのだ、ちろ姫。悩むということは、それだけ真剣に考えている証拠だ。実はな、この問題に『万人にとっての正解』はない。どのうさぎにとっても最適な答えは違うのだ。だが、自分にとっての最適解を見つけるための『3つの質問』がある。」
ちろ姫: 「3つの質問?」
てち王: 「うむ。まず一つ目。『汝の住宅ローンの金利は何%か?』 これが最も重要だ。」
てち王は、一本目の指を立てて言いました。
てち王: 「今回の例は1.0%という、比較的低い金利だった。だからこそ、投資でそれ以上のリターンを狙う価値がある。しかし、もしこの金利が2.0%、あるいは昔のように3.0%だったらどうだろう?そうなると、繰り上げ返済で得られる『確実なリターン』も2.0%、3.0%になる。不確実な投資で高いリターンを狙うよりも、まずは高い金利の借金を返す方が合理的かもしれん。一つの目安として『投資の期待リターン(年3〜5%)> 住宅ローンの金利』が成り立つかどうかが、大きな判断基準となる。」
ちろ姫: 「なるほどー!金利が高いローンは、早くやっつけた方がお得なのね!」
てち王: 「左様。では、二つ目の質問だ。『汝、リスクとどう向き合うか?』」
てち王は、ちろ姫の目をじっと見て問いかけます。
てち王: 「投資には必ず価格変動のリスクが伴う。今日100万ニンジンだったものが、明日には95万ニンジンになる可能性もあるのだ。たとえ長い目で見ればプラスになると分かっていても、日々のマイナスに心を痛め、夜も眠れなくなってしまううさぎもいる。そういう性格ならば、無理に投資をするより、繰り上げ返済で精神的な平穏を得る方が幸せだろう。逆に、多少の変動は気にせず、将来の大きな実りを待てるうさぎなら、NISAが向いている。自分の『リスク許容度』、つまり、どれくらいの価格の上下に耐えられるかを自問することが肝心だ。」
ちろ姫: 「あたちは…ニンジンが減ったら、悲しくてぴょんぴょん跳ねちゃうかも…。でも、いっぱい増えたら、もっと高く跳ねちゃう!」
てち王: 「ははは、正直でよろしい。では、最後の質問だ。『汝の家庭に、万が一の備えは十分か?』」
てち王の表情が、少し引き締まりました。
てち王: 「繰り上げ返済も、新NISAでの投資も、あくまで『余裕資金』で行うのが大前提だ。病気や怪我、仕事がなくなるといった不測の事態に備えるための『生活防衛資金』、これは何があっても使ってはならん。目安としては、生活費の半年から1年分。このニンジンを確保できて、初めて次のステップに進めるのだ。繰り上げ返済は、一度支払うと簡単には手元に戻せない。投資も、必要な時にお金の価値が下がっているかもしれない。流動性、つまり『いつでも使えるニンジン』を確保しておくことは、王国の危機管理の基本でもあるのだ。」
結論は一つではない。自分だけの最適解を見つけよう
ちろ姫: 「そっかぁ…。金利をチェックして、自分の心の強さを知って、そして、もしもの時のためのニンジンをしっかり確保する…。この3つを考えて、初めてどっちがいいか決められるのね!」
てち王: 「その通りだ、ちろ姫。よくぞ理解したな。今回のモデルケースのうさぎさん一家であれば、朕ならこう助言するだろう。」
てち王は、ゆっくりと結論を語り始めました。
てち王: 「まず、生活防衛資金が十分にあることを確認する。その上で、余裕資金の300万ニンジンを全てどちらか一方に使うのではなく、『両方を組み合わせる』という選択肢もある。例えば、100万ニンジンは繰り上げ返済に使い、将来の利息を減らして安心感を得る。残りの200万ニンジンのうち、毎年計画的に新NISAで積立投資を行い、子うさぎたちの教育資金や自分たちの老後の資金を育てる。このように、バランスを取ることが、多くの40代にとっては現実的で賢明な判断になるだろう。」
ちろ姫: 「そっか!どっちかを選ばなくてもいいんだ!両方やれば、安心もできて、将来の楽しみも増えるのね!」
てち王: 「うむ。人生も資産形成も、白か黒かではない。様々な色合いがあるのだ。大切なのは、情報を集め、自分の状況を客観的に見つめ、そして、自分自身で決断すること。今日の学びが、民の豊かな未来に繋がることを、朕は心から願っているぞ。」
てち王の言葉に、ちろ姫は大きく頷きました。小さなプリンセスの心に、また一つ、王女として大切な知識が刻まれたようです。ふわふわ星の午後は、こうして学びと共に、穏やかに過ぎていくのでした。

用語解説
今回の物語に出てきた、少し難しい金融用語を分かりやすく解説します。
- 住宅ローン繰り上げ返済:
毎月の返済とは別に、まとまった資金をローンの元金返済に充てること。支払うはずだった利息を軽減できる効果があります。返済期間を短くする「期間短縮型」と、毎月の返済額を減らす「返済額軽減型」があり、一般的に利息の軽減効果が高いのは「期間短縮型」です。 - 新NISA(新しいNISA):
2024年から始まった個人のための税制優遇制度。通常、投資で得た利益(配当金、分配金、譲渡益)には約20%の税金がかかりますが、NISA口座内での取引で得た利益には税金がかかりません。年間投資上限額が引き上げられ、「つみたて投資枠(年間120万円)」と「成長投資枠(年間240万円)」の2つの枠を併用できます。生涯にわたって非課税で保有できる上限額は1,800万円です。 - リスク許容度:
投資を行う上で、どの程度の価格の変動(リスク)を受け入れられるかという度合いのこと。年齢、収入、資産状況、性格、投資経験などによって個人差があります。自分のリスク許容度を把握することが、長期的な資産形成を成功させるための重要な鍵となります。 - 生活防衛資金:
病気や失業など、予期せぬ収入減に備えるためのお金。すぐに引き出せる預貯金で、生活費の6ヶ月〜2年分程度を確保しておくことが推奨されます。投資や繰り上げ返済は、この資金を確保した上で行うのが鉄則です。 - 機会損失(きかいそんしつ):
複数の選択肢がある中で、一つを選んだことによって、選ばなかった方の選択肢から得られたであろう利益を失うこと。今回の話では、「繰り上げ返済を選ぶことで、NISAで投資をしていれば得られたかもしれないリターン(機会)を失う」という考え方もできます。
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