「インデックス投資だけで安心」は罠?S&P500・オルカンから一歩進む本当の分散投資戦略
- 2025.10.24
- うさぎで学ぶシリーズ 投資戦略・テクニック
- インデックス投資, ポートフォリオ, 分散投資, 投資初心者, 資産運用
宇宙のどこか、なにもかもが「ふわふわ」でできている惑星、ふわふわ星。ここの通貨は、甘くて美味しい「ニンジン」です。今日のふわふわ星は、気持ちのいい青空が広がっています。お城のバルコニーでは、この星のプリンセスである「ちろ姫」が、収穫されたばかりのたくさんのニンジンを前に、何やらご満悦な様子です。
ちろ姫: 「うふふふふ!あたちのニンジン畑は、今年も大豊作なの!このたくさんのニンジンたち…そうだ!全部『オルカン』と『S&P500』に入れておけば、あたちはもう将来安泰なの!これで、毎日おやつを食べても、ぴょんぴょん跳ねていても、勝手にニンジンが増えていくの!天才なの!」
胸を張り、得意げに鼻をぴくぴくさせているちろ姫。その背後から、優しくも威厳のある声が聞こえてきました。ふわふわ星の王であり、ちろ姫の兄でもある「てち王」です。
てち王: 「ちろ姫。聞こえておったぞ。インデックス投資の代表格である『全世界株式(オルカン)』と『S&P500』に目をつけたのは、良い学びの成果じゃな。それは素晴らしい第一歩じゃ。しかし…」
ちろ姫: 「しかし…? 」
てち王: 「うむ。それだけでは『本当の安心』とは言えんかもしれんぞ?」
ちろ姫: 「えーーーーっ!? どうしてなの!? てち王兄様!みんなが良いって言ってる最強の組み合わせのはずなの!あたちは、もう何もしなくていいと思ったのに!」
ぴょんっと飛び上がって驚くちろ姫。てち王は、そんな妹を優しく見つめながら、ゆっくりと語り始めました。
インデックス投資という「安心のわな」
てち王: 「ちろ姫よ、落ち着いて聞くのじゃ。お主の考えは決して間違ってはいない。むしろ、多くの投資初心者が最初にたどり着く、非常に賢明な答えの一つじゃ。全世界やアメリカの成長の恩恵を、まるごと受け取れる素晴らしい仕組みじゃからな。じゃが、その『まるごと』という言葉に、少しだけ注意が必要なのじゃ」
ちろ姫: 「注意? ニンジンに虫でもついているの?」
てち王: 「ははは、違う違う。投資の世界には『卵を一つのカゴに盛るな』という古い格言がある。これは知っておるな?」
ちろ姫: 「もちろん!たくさんのカゴに卵を分けておけば、もし一つのカゴを落として卵が割れても、他のカゴの卵は無事、ということだよね!」
てち王: 「その通りじゃ。そして、ちろ姫は『オルカン』と『S&P500』という、二つの大きなカゴに卵を分けようとしておる。一見、分散できているように見える。だが、そのカゴの中身を、よぉく見てみるとどうじゃろうか?」
てち王: 「例えば『オルカン』、つまり全世界株式じゃが、その構成比の約6割は、実はアメリカの株式で占められておる。そして『S&P500』は、言わずもがなアメリカの代表的な500社じゃ。つまり、ちろ姫のニンジン畑は、『全世界』と名前がついていても、その大部分が『アメリカ』という国に植えられているのと同じことなのじゃ」
ちろ姫: 「むむむ…!そうなの? ということは、あたちの二つのカゴは、どちらも『アメリカ』と書かれた、同じ大きな荷馬車に乗っているようなもの…?」
てち王: 「察しが良くて助かるぞ、ちろ姫。その通りじゃ。もし、そのアメリカという荷馬車が、何十年という長い道のりの途中で、ぬかるみにはまって進めなくなったり、道が大きく揺れたりしたら、お主のカゴは二つとも大きな影響を受けてしまう。これが、インデックス投資だけで満足してしまうことの、一つ目の『わな』なのじゃよ」
一歩進んだ「国・地域の分散」という考え方
ちろ姫: 「そ、そんなの嫌なの! あたちの可愛いニンジンたちが、ぬかるみにはまるなんて! じゃあ、てち王兄様、どうすればいいの!?」
ちろ姫は、今にも泣き出しそうな顔でてち王のふわふわの毛にすり寄ります。
てち王: 「まあ、待て待て。すぐにぬかるみにはまるわけではないから安心するのじゃ。じゃが、未来は何が起こるか誰にもわからん。だからこそ、アメリカという素晴らしい荷馬車だけでなく、他の荷馬車にもニンジンを乗せておくことが肝心なのじゃ」
てち王: 「朕が言いたいのは、『国・地域の分散の深掘り』じゃ。『オルカン』にも、アメリカ以外の国々は含まれておる。日本やヨーロッパ、そして『新興国』と呼ばれる、これから大きく経済が成長する可能性を秘めた国々もな。じゃが、その比率はまだ小さい」
ちろ姫: 「しんこうこく…? コンコン星やノンビリ星みたいなところのこと?」
てち王: 「ふむ、良い例えじゃな。今の宇宙経済の中心がふわふわ星(アメリカと仮定する)だとして、コンコン星やノンビリ星は、まだ発展の途中じゃが、これからものすごい勢いで成長するかもしれん。例えば、インドやベトナム、インドネシアといった国々じゃな。人口が増え、新しい技術が生まれ、民が豊かになっていく。その成長力は、すでに成熟した我々ふわふわ星を、いずれ追い越すかもしれん」
ちろ姫: 「なるほど! これから背がぐんぐん伸びる子たちに、今のうちからニンジンをあげておく、みたいな感じね!」
てち王: 「まさにその通りじゃ! オルカンに加えて、例えば『新興国株式インデックスファンド』を少しだけポートフォリオに加えてみる。そうすれば、アメリカの成長が鈍化するような局面でも、新興国の高い成長が、お主の資産全体を支えてくれるかもしれん。もちろん、新興国は道がまだ整備されておらず、荷馬車が転んでしまうリスク(カントリーリスクや為替変動リスク)も大きい。だから、あくまで全体のバランスを考えて、少しだけ加える『スパイス』のような役割じゃな」
ちろ姫: 「ニンジンスープに入れる、ピリッとしたスパイス! 美味しくなりそう!」
株式の中にも種類がある?「スタイルの分散」
てち王: 「うむ。国の分散については理解が深まったようじゃな。だが、本当の分散投資は、これだけでは終わらんぞ。もう一歩、深い森へ入ってみようかの」
ちろ姫: 「もっとあるの!? あたちの小さな頭は、もうニンジンでいっぱいなの…」
てち王: 「大丈夫じゃ。今度は、同じ『株式』という畑の中の話じゃからな。ちろ姫よ、ニンジンにも色々な種類があるじゃろう? 甘くてすぐ育つニンジン、大きく育つまでに時間はかかるが栄養満点のニンジン、形は不揃いじゃが実はとても美味しいニンジン…」
ちろ姫: 「あるあるなの! あたちは、甘くてすぐ食べられるイチゴみたいなニンジンが好き!」
てち王: 「株式もそれと全く同じなのじゃ。S&P500に含まれるような巨大企業の多くは、いわゆる『大型株』じゃ。すでに大きく育ち、安定して利益という果実を実らせてくれる。じゃが、ここからさらに10倍、100倍に大きくなるのは難しいかもしれん。一方で、世の中にはまだ小さいけれど、革新的なアイデアを持つ『中小型株』がたくさんある。これらは、嵐が来たらすぐに倒れてしまうかもしれんが、うまく育てば、将来とてつもなく大きな木に成長する可能性を秘めておる」
ちろ姫: 「未来のGAFAMなの!」
てち王: 「そうじゃ! さらに、株式には『グロース株(成長株)』と『バリュー株(割安株)』という分け方もある」
- グロース株: ちろ姫が好きな『甘くてすぐ育つイチゴみたいなニンジン』じゃな。今はまだ利益が小さくても、将来の爆発的な成長が期待されて、民の人気が集まっておる。IT・ハイテク企業に多いタイプじゃ。
- バリュー株: 『形は不揃いじゃが実はとても美味しいニンジン』のことじゃ。素晴らしい技術や実績があるのに、何らかの理由で人気がなく、本来の価値よりも安く評価されておる。金融やエネルギーといった、昔からある安定した産業に多いのう。
てち王: 「ここが重要なのじゃが、『グロース株』が元気な時(金利が低い時など)と、『バリュー株』が元気な時(金利が高い時など)は、経済の状況によってシーソーのように入れ替わることが多い。S&P500やオルカンは、この10年ほど、GAFAMに代表される『大型グロース株』がぐんぐん引っ張ってきた。じゃから、お主のポートフォリオは、知らず知らずのうちに『大型グロース株』に偏っている可能性があるのじゃ」
ちろ姫: 「偏食は良くないって、いつもてち王兄様に言われていることなの…! ニンジンだけじゃなくて、干草もりんごも食べなさいって!」
てち王: 「その通りじゃ! 投資も同じこと。もし、これから経済の風向きが変わり、バリュー株が強い時代が来たら、『大型グロース株』に偏ったポートフォリオは、しばらくの間、元気がなくなってしまうかもしれん。じゃからこそ、違う性格の株式も、畑に植えておくことが大切なのじゃ」
自分だけのニンジン畑を作る「コア・サテライト戦略」

ちろ姫: 「うぅ…頭から湯気が出そうなの…国の分散に、株の大きさの分散、それに性格の分散…あたち、もう何をどうすればいいのか、わからなくなってきたの…ぴょんぴょん!」
ちろ姫は混乱して、その場でぴょんぴょんと跳ね始めました。てち王は、そんな妹を優しく抱きとめ、落ち着かせます。
てち王: 「こらこら、落ち着きなさい。未来の女王たるものが、そんなことでうろたえるでない。大丈夫じゃ、難しく考える必要はない。朕が、わかりやすい『畑の作り方』を教えてやろう。それが『コア・サテライト戦略』じゃ」
ちろ姫: 「こあ・さてらいと…? 新しいお菓子の名前?」
てち王: 「はは、違うぞ。『コア』は『中核』、『サテライト』は『衛星』という意味じゃ」
- コア(中核)部分: これは、お主のニンジン畑の、ど真ん中に植える、最も大事な作物じゃ。ここには、これまで通り『オルカン』や『S&P500』のような、安定感のあるインデックスファンドをどっしりと据える。資産の7割~9割くらいを、このコアで固めるのじゃ。これが、お主の資産形成の土台となる。
- サテライト(衛星)部分: そして、コアの周りに、いくつかの小さな畑を作る。これがサテライトじゃ。ここには、残りの1割~3割のニンジンを使って、お主が『面白い』とか『成長しそう』と思う、少しだけリスクのある作物を植えるのじゃ。
てち王: 「例えば、こんな感じじゃ」
- サテライト畑①: 『新興国株式ファンド』を植えて、高い成長を狙う。
- サテライト畑②: 『米国中小型株ファンド』を植えて、未来のGAFAMを探す。
- サテライト畑③: 『高配当バリュー株ファンド』を植えて、定期的に配当金という果実を受け取る。
- サテライト畑④: 株式とは違う値動きをする『債券』や『REIT(不動産)』を植えて、畑全体を嵐から守る。
てち王: 「どうじゃ? こうすれば、土台となる『コア』で安定的に資産を育てつつ、『サテライト』で少しだけ冒険ができる。サテライトの作物が一つダメになっても、コアがしっかりしているから、畑全体が枯れてしまうことはない。これが、インデックス投資から一歩進んだ、自分だけのポートフォリオを作る、ということなのじゃ」
本当の分散投資への第一歩
ちろ姫: 「コア・サテライト…! なるほどなの! まずは真ん中に大きなニンジン畑を作って、その周りに、りんごの木や、干草の畑や、イチゴの畝を作る…みたいなイメージね! それなら、あたちにもできるかもしれない!」
ちろ姫の目に、再びキラキラとした輝きが戻りました。
てち王: 「うむ、その通りじゃ。大切なのは、インデックス投資を『ゴール』だと思わないこと。それは、素晴らしい『スタート』なのじゃ。まずは、今ちろ姫が持っている、あるいはこれから買おうとしている投資信託の中身が、どの国に、どんな種類の会社に、どれくらい投資しているのかを、目論見書などで確認してみることじゃな」
ちろ姫: 「うん! まずは自分のカゴの中身を、ちゃんと見てみる! そして、あたちだけの、最強のニンジン畑を作ってみせる! てち王兄様、ありがとうなの!」
てち王: 「うむ、それでこそ未来のふわふわ星の女王じゃ。焦らず、じっくりと、楽しみながら自分だけのニンジン畑を育てるのじゃぞ。もし困ったら、いつでもこの朕に聞くがよい」
てち王は満足そうに頷き、ちろ姫は新たな目標を見つけて、元気よくお城の中へと駆け出していきました。ふわふわ星の空は、どこまでも青く澄み渡っているのでした。
本日のまとめと用語解説
いかがでしたでしょうか。インデックス投資は非常に優れた手法ですが、「それだけで完璧」と思い込んでしまうと、知らず知らずのうちにリスクが偏ってしまう可能性があります。今日のてち王とちろ姫の会話から、本当の分散投資のポイントを学びましょう。
【本日のポイント】
- 「オルカン」や「S&P500」は万能ではない:
これらは素晴らしい投資対象ですが、中身を見るとアメリカや特定の巨大企業(大型グロース株)への集中度が高いことを理解しましょう。 - 国・地域の分散を深掘りする:
ポートフォリオの安定性と成長性を高めるため、将来の成長が期待される新興国など、米国以外の地域へも目を向けてみましょう。 - 株式内での「スタイル分散」を意識する:
株式には「大型株/中小型株」や「グロース株/バリュー株」といった異なる特徴を持つ分類があります。これらを組み合わせることで、様々な経済局面に強いポートフォリオを目指せます。 - 「コア・サテライト戦略」で自分だけの資産配分を:
資産の大部分を安定的なインデックス(コア)で運用し、一部を新興国株や中小型株など(サテライト)で積極的にリターンを狙うことで、リスクを管理しながら自分らしい投資が実現できます。
【用語解説】
- ポートフォリオ:
投資家が保有する株式、債券、投資信託などの金融資産の組み合わせ、一覧のこと。資産配分。 - 資産クラス:
株式、債券、不動産(REIT)、コモディティ(金など)といった、値動きの特性が似ている資産の分類。異なる資産クラスを組み合わせることが分散投資の基本です。 - 新興国株式:
BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)やVISTA(ベトナム、インドネシア、南アフリカ、トルコ、アルゼンチン)などに代表される、今後高い経済成長が期待される国々の株式のこと。ハイリスク・ハイリターンな特徴があります。 - 中小型株:
企業の時価総額(株価×発行済株式数)による分類の一つ。一般的に、大型株に比べて成長の余地が大きい反面、業績や株価の変動も大きくなる傾向があります。 - グロース株(成長株):
企業の売上高や利益の成長率が高く、その将来性に期待して投資される株式。株価収益率(PER)などの指標では割高に見えることが多いです。 - バリュー株(割安株):
企業の本来持つ資産や収益力に比べて、株価が割安に放置されていると判断される株式。株価純資産倍率(PBR)などの指標が低い銘柄が多いです。 - コア・サテライト戦略:
運用資産を、安定的な運用を目指す「コア(中核)」と、より積極的なリターンを狙う「サテライト(衛星)」に分けて管理する投資手法。ポートフォリオ全体のリスクを抑えつつ、収益の上乗せを狙います。
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