【初心者向け】米国株の始め方|円貨決済と外貨決済はどっちがお得?手数料で損しないための完全ガイド

【初心者向け】米国株の始め方|円貨決済と外貨決済はどっちがお得?手数料で損しないための完全ガイド

宇宙のどこかに、何もかもが“ふわふわ”でできている、それはそれは平和な星がありました。その星の名は「ふわふわ星」。この星の王として君臨するのは、聡明で心優しい「てち王」。そして、その妹であり、将来の王女になるべく元気いっぱいに成長中の「ちろ姫」。ふわふわ星の通貨は、甘くて美味しい「ニンジン」です。今日も、平和な玉座の間から、賑やかな声が聞こえてくるようです。

ちろ姫: 「てち王お兄さま〜!大変、大変!あたち、すごいものを見つけちゃったの!」

玉座で静かに経済新聞(もちろんニンジン紙でできている)を読んでいたてち王のもとに、ちろ姫が小さな体を弾ませながら、ぴょんぴょんと駆け寄ってきた。その手には、最新式の宇宙パッドが握られている。

てち王: 「おぉ、ちろ姫。どうしたのだ、そんなに慌てて。朕のニンジン・マカロンをこっそりつまみ食いしたのがバレたかと思ったぞ?」

ちろ姫: 「そ、それは昨日のこと!そうじゃなくて、これを見て!『ちきゅう』という星の、『あめりか』っていう国のキラキラよ!」

ちろ姫がパッドの画面をてち王に見せると、そこには色とりどりのグミや、見たこともない形のチョコレート、そしてカラフルなクリームが乗ったカップケーキの映像が映し出されていた。どれもふわふわ星のお菓子とは違う、刺激的で魅力的な輝きを放っている。

ちろ姫: 「あたち、このキラキラが食べたい!今すぐ食べたいの!ぴょんぴょん!」

その場で嬉しそうに跳ねるちろ姫を見て、てち王は優しく微笑んだ。

てち王: 「ふむ、これはアメリカのお菓子だね。確かに美味しそうだ。だが、ちろ姫。これを手に入れるには、我らのニンジンがそのままでは使えないのだよ」

ちろ姫: 「えーっ!?どうしてなの?ふわふわ星のニンジンは宇宙一美味しいのに!」

てち王: 「その通りだ。だが、星が違えば使うお金も違う。アメリカでは『ドル』というお金が使われている。だから、我らのニンジンを、一度ドルに両替しなくてはならないんだ」

ちろ姫: 「どる?にんじんをどるに…?なんだか難しそうなの…」

しょんぼりと耳が垂れるちろ姫。てち王は、妹の小さな頭を優しく撫でた。

てち王: 「大丈夫だ、ちろ姫。これは、ちきゅうの資産、特にアメリカの会社の株を買う時にも、とても大切な考え方なんだ。良い機会だ。今日は、この『両替』の仕組み…すなわち『決済方法』について、王女になるための特別講義をしよう。これが分かれば、ちきゅうの美味しいお菓子だけでなく、力強い経済の果実も手に入れる第一歩になるのだからな」

こうして、ふわふわ星の玉座の間で、一人の元気なプリンセスの素朴な願いから、宇宙で一番分かりやすい「米国株の始め方」講座の幕が開いたのであった。


米国株を買うための二つの扉「円貨決済」と「外貨決済」

てち王: 「さて、ちろ姫。アメリカの会社の株を買う、と決めたとしよう。その時、我々がニンジン(日本円)をどうやってドル建ての資産に変えるか、大きく分けて二つの方法がある。それが『円貨決済(えんかけっさい)』『外貨決済(がいかけっさい)』だ」

ちろ姫: 「えんか…?がいか…?なんだかお固い名前で眠くなっちゃうの…」

ちろ姫は早くもおやつの干し草に手を伸ばそうとする。てち王は、ふっと息を吐いて話を続けた。

てち王: 「こらこら、ちろ姫。分かりやすく例えてやろう。まず『円貨決済』は、いわば『おまかせコース』だ」

ちろ姫: 「おまかせコース?」

てち王: 「うむ。ちろ姫が『アメリカ・アップル社の株が1株欲しい』と、ふわふわ星の証券会社にお願いするとしよう。そうしたら、証券会社が、その時の為替レートで必要なニンジン(円)を計算して、自動でドルに両替して株を買ってきてくれる。ちろ姫は、ただニンジンを渡すだけ。あとは全部やってくれる。楽だろう?」

ちろ姫: 「楽ちんなの!あたち、それがいい!面倒なのは嫌いなの!」

即決するちろ姫に、てち王は「まあ、待て」と手をかざす。

てち王: 「次に『外貨決済』。これは『こだわりシェフコース』だな」

ちろ姫: 「こだわりシェフ?」

てち王: 「そうだ。こちらは、まずちろ姫自身が『今のうちにニンジンをドルに替えておこう』と、自分の好きなタイミングでドルを準備しておくんだ。そして、その準備したドルを使って、アメリカの株を買う。一手間かかるが、自分で全てを管理できる」

ちろ姫: 「ふぅん…なんだか面倒くさそうなの。おまかせコースでいいじゃない!」

てち王: 「ふふ、そう思うだろう?だが、この一手間が、将来得られるリターン…つまり、手に入るお菓子の数を大きく左右することもあるのだ。それぞれのメリットとデメリットを、ちゃんと知っておく必要がある」

てち王は、大きな白板(もちろん雲でできている)を引き寄せ、ニンジンで文字を書き始めた。


円貨決済(おまかせコース)のメリット・デメリット

  • メリット:
    • とにかく簡単: 日本株を買うのと同じ感覚で、ニンジン(円)さえあればすぐに米国株が買える。ドルを事前に用意する必要がない。
    • 管理が楽: 証券口座にドルが残らないので、資産管理がシンプル。
  • デメリット:
    • 為替手数料が割高: 取引のたびに証券会社が決めた為替レートで両替されるが、このレートには少しだけ手数料(スプレッド)が上乗せされている。これが後で解説する重要なポイントだ。
    • 両替のタイミングを選べない: 株を買うと決めた「その時」のレートで強制的に両替される。たとえニンジンがとても安い(円安)時でも、そのレートで両替するしかない。

外貨決済(こだわりシェフコース)のメリット・デメリット

  • メリット:
    • 為替手数料が安い: ネット銀行などを経由して両替(ドル転)すると、証券会社で自動両替されるより、はるかに安い手数料でドルを準備できる。
    • 両替のタイミングを自分で選べる: ニンジンが高い(円高)時を狙って、あらかじめドルをたくさん買っておく、という戦略がとれる。
    • 配当金をドルで受け取れる: 米国株から得られる配当金をドルのまま受け取り、そのまま次の米国株投資に回せる(再投資)。ニンジンに両替する手間と手数料がかからない。
  • デメリット:
    • 手間がかかる: 自分でドルを準備し、管理する必要がある。
    • 為替変動リスクを直接負う: ドルを持っている間、為替レートが変動すれば、そのドルのニンジン換算での価値も変動する。

ちろ姫: 「うーん…。おまかせコースは楽だけど、ちょっとだけ損してるかもしれないってこと?こだわりシェフコースは、お得だけど、自分で色々考えなきゃいけないのね…」

てち王: 「その通り!よく理解できたな、ちろ姫。では次に、その『ちょっとだけ損』が、具体的にどれくらいの違いになるのかを見ていこう。ここが王女になるための最重要科目だぞ」


見えないコスト「為替スプレッド」の正体

ちろ姫: 「てち王お兄さま!『手数料が割高』って言ってたけど、それって一体何なの?証券会社さんが、こっそり私たちのニンジンをかじってるってこと?」

ちろ姫の物騒な例えに、てち王は苦笑した。

てち王: 「ははは、かじっているわけではないが、近いものはあるな。その正体が『為替スプレッド』というものだ」

てち王: 「いいか、ちろ姫。ニュースで『1ドル=150円』と言っている時、我々が本当に150円で1ドルを買えるわけではないんだ。両替してくれる銀行や証券会社は、商売だからね。彼らがドルを仕入れる値段と、我々に売る値段に、少しだけ差をつけている。その差額が彼らの利益であり、我々にとっては手数料になる。これがスプレッドだ」

ちろ姫: 「むむむ…!なんだかズルいの!」

てち王: 「ズルいわけではない。正当なサービス料だ。だが、このサービス料が、どこで両替するかによって大きく違うのだ。具体的に計算してみよう」

てち王は、再び雲の白板に書き始めた。

【仮定】

  • 基準の為替レート: 1ドル = 150ニンジン(円)
  • 買いたい株: 1,000ドル分の米国株

ケース1:円貨決済(おまかせコース)で買う場合

多くのネット証券では、円貨決済の為替スプレッドは**1ドルあたり25銭(0.25ニンジン)**に設定されていることが多い。

  • 適用されるレート: 150ニンジン + 0.25ニンジン = 150.25ニンジン/ドル
  • 必要なニンジン: 1,000ドル × 150.25ニンジン = 150,250ニンジン

ケース2:外貨決済(こだわりシェフコース)で買う場合

住信SBIネット銀行や楽天銀行など、特定のネット銀行で自分でドルに両替(ドル転)すると、スプレッドは非常に安くなる。例えば、**1ドルあたり6銭(0.06ニンジン)**だとしよう。(※キャンペーン時などはさらに安くなることもある)

  • 適用されるレート: 150ニンジン + 0.06ニンジン = 150.06ニンジン/ドル
  • 必要なニンジン: 1,000ドル × 150.06ニンジン = 150,060ニンジン

てち王: 「さあ、ちろ姫。二つを比べてごらん。いくら差が出たかな?」

ちろ姫: 「えーっと…150,250ひく150,060は…190ニンジン!

てち王: 「その通り!たった1,000ドルの取引で、190ニンジンもの差がつくのだ。ちろ姫の大好きな高級イチゴが何個も買える金額だぞ。これが1万ドル、10万ドルと取引額が大きくなれば、差はどんどん開いていく。これが『為替スプレッド』の力だ」

ちろ姫: 「ひゃー!ぴょんぴょん!あたちのイチゴが…!これは大変なの!絶対、こだわりシェフコースにする!」

目にニンジンを浮かべて興奮するちろ姫。しかし、てち王は落ち着いて首を横に振った。

てち王: 「待て待て、早まるな。こだわりシェフコースには、もう一つ考えなければならない、もっと大きな問題がある。それが『為替変動リスク』だ」


最強の敵か、味方か。「為替変動リスク」との付き合い方

ちろ姫: 「為替…へんどうりすく?今度は何かの必殺技みたいな名前なの?」

てち王: 「ある意味、必殺技かもしれんな。使い方を間違えれば自分に、上手く使えば相手に大ダメージを与えられる。為替レートは、常に動いている。我々が寝ている間にも、ちきゅうの経済の状況によって、ニンジンの価値、ドルの価値は上がったり下がったりしているんだ」

てち王は、ちろ姫の目の前にニンジンを1本と、アメリカのリンゴ(ドルの代わり)を1つ置いた。

てち王: 「例えば今日、ニンジン1本でリンゴ1個と交換できたとしよう。これが『1ドル=1ニンジン』の状態だ。ちろ姫は、将来リンゴのパイをたくさん作るために、今のうちに手持ちのニンジン100本を、すべてリンゴ100個に交換した。これが『ドル転』だ」

ちろ姫: 「うんうん、それで?」

てち王: 「だが、次の日、ふわふわ星でニンジンが歴史的な大豊作になった。ニンジンの価値が下がり、ニンジン2本でなければリンゴ1個と交換できなくなってしまった。『1ドル=2ニンジン』、いわゆるニンジン安(円安)だ。この時、ちろ姫の持っているリンゴ100個は、ニンジンに換算すると何本分の価値になる?」

ちろ姫: 「えーっと…リンゴ1個がニンジン2本だから…100個だと…200本! わーい!ニンジンが倍になったの!」

てち王: 「そうだ。これは成功例だ。逆に、もしふわふわ星のニンジンが世界中で大人気になり、価値が上がったとしよう。ニンジン半分でリンゴ1個と交換できるようになった。『1ドル=0.5ニンジン』、いわゆるニンジン高(円高)だ。この時、ちろ姫のリンゴ100個の価値はどうなる?」

ちろ姫: 「うぅ…リンゴ1個がニンジン半分だから…100個だと…50本…。半分になっちゃったの…」

がっくりと肩を落とすちろ姫。

てち王: 「これが、為替変動リスクだ。外貨決済のためにドルを持っているということは、この価値の変動を直接引き受けるということなのだよ。円貨決済なら、株を買う瞬間にしか為替の影響を受けないが、外貨決済はドルを保有している期間ずっと、このリスクと付き合うことになる」

ちろ姫: 「じゃあ、やっぱりおまかせコースの方が安全なの…?あたち、ニンジンが半分になるのは嫌なの…」

不安そうな妹を見て、てち王は力強く頷いた。

てち王: 「そこで、王女の知恵が試されるのだ、ちろ姫。このリスクを完全に無くすことはできない。だが、賢く付き合う方法はある。それが『ドルコスト平均法』の考え方を用いた、時間の分散だ」

ちろ姫: 「じかんのぶんさん?」

てち王: 「うむ。ニンジン100本を一度に全部リンゴに替えるから、レートが動いた時に一喜一憂することになる。そうではなく、『毎月10本ずつ、10ヶ月かけてリンゴに替える』と決めるんだ。そうすれば、ニンジンが高い時も安い時も、まんべんなく両替することになるだろう?結果として、両替レートが平準化され、高値掴みのリスクを減らすことができる。これは、積立投資の考え方と同じだ」

てち王: 「つまり、外貨決済を賢く使うコツは、『為替手数料の安いネット銀行で、ニンジン高(円高)の局面を狙いつつも、一度に替えず、複数回に分けてドルを準備しておく』こと。これが、こだわりシェフの腕の見せ所なのだよ」


王女が選ぶべき道

ちろ姫: 「なるほどなの…!楽ちんだけど手数料が少し高い『おまかせコース』。手数料は安いけど、為替の動きをちゃんと見ながら、計画的にドルを準備しないといけない『こだわりシェフコース』…。どっちがいいか、あたちの頭で考えなきゃいけないのね…!」

ちろ姫は、腕を組んでうーむ、と真剣な顔で考え込んでいる。その姿は、もう単なる食いしん坊のプリンセスではなかった。

てち王: 「その通りだ、ちろ姫。どちらが絶対的に正しい、という答えはない。投資にかけられる手間や時間、そしてちろ姫自身の性格によって、最適な選択は変わってくる」

てち王は、最後のまとめとして、優しく語りかけた。

てち王: 「もし、ちろ姫がまだ投資を始めたばかりで、難しいことは考えずに、まずは一歩を踏み出すことを優先したいなら、『円貨決済』から始めるといい。多少の手数料は、学びのための授業料だと考えればいい」

てち王: 「そして、取引に慣れてきて、少しでもコストを抑えたい、為替も意識した本格的な資産形成をしたい、と考えるようになったら、その時こそ『外貨決済』に挑戦する絶好の機会だ。朕が今日教えた戦略を思い出して、賢くドルを準備するんだ」

ちろ姫: 「分かったの、てち王お兄さま!あたち、まずは円貨決済でアメリカのキラキラお菓子株をちょっとだけ買ってみる!それで慣れたら、次はニンジン高の時にドルを準備して、こだわりシェフコースに挑戦してみるわ!」

自信に満ちた表情で宣言するちろ姫。その瞳には、未来の賢明な王女の輝きが宿っていた。

てち王: 「うむ、それがいい。何事も、まず始めてみることが、成長への一番の近道だからな。さあ、講義はここまでだ。ご褒美に、朕が隠しておいた特製のニンジン・フィナンシェをやろう」

ちろ姫: 「わーい!お兄さま大好き!ぴょんぴょん!」

こうして、ふわふわ星の未来の王女は、米国株投資への大きな一歩を踏み出した。彼女の資産が、そして知識が、これからどのように成長していくのか。それはまた、別のお話。


用語解説コーナー

  • 円貨決済:
    日本円のまま、外国株の売買を行うこと。証券会社が為替両替を自動で行ってくれるため手間がかからないが、為替手数料(スプレッド)が割高になる傾向がある。投資初心者にとっての入り口として適している。
  • 外貨決済:
    自分で事前に日本円を米ドルなどの外貨に両替し、その外貨を使って外国株の売買を行うこと。為替手数料を安く抑えられ、両替のタイミングも選べるが、手間がかかり為替変動リスクを直接負うことになる。中級者以上向けの、よりコストを意識した決済方法。
  • 為替レート:
    日本円と米ドルなど、異なる通貨を交換する際の取引価格(比率)のこと。経済情勢や金利差など、様々な要因で常に変動している。
  • 為替スプレッド:
    金融機関が提示する、外貨を「売る時のレート」と「買う時のレート」の差額のこと。この差額が金融機関の収益となり、投資家にとっては実質的な手数料(コスト)となる。スプレッドは狭い(小さい)ほど、投資家にとって有利。
  • 為替変動リスク:
    為替レートが変動することにより、外貨建て資産の価値が円換算で増えたり減ったりする可能性のこと。例えば、1ドル=100円の時に買った100ドルの資産は1万円の価値だが、1ドル=90円(円高)になると9千円の価値に目減りしてしまう。
  • ドル転(どるてん):
    日本円(JPY)を米ドル(USD)に両替すること。投資家が外貨決済を行うために、円高のタイミングなどを狙って行うことが多い。